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2020.05.02.Sat / update:2021.03.28

技能実習生の失踪者数、2019年は8,796人(全体の1.7%)

外国人実習生の失踪

「外国人技能実習制度」のもと、日本で働く外国人の多くが失踪しています。 2019年の一年間に失踪した外国人実習生は9,052人。同年の実習生51万7,232人のうちのおよそ1.7%にあたります。
技能実習生は年々増加していて、2015年からの5年間で倍増。毎年1.7%〜2.2%の間で発生する失踪者の数も、増加傾向にあります。

技能実習生の人数と失踪者

技能実習生数 失踪者数 失踪者数の割合
2015 26万4,630 5,803 2.2%
2016 29万8,786 5,058 1.7%
2017 35万6,276 7,089 2.0%
2018 42万4,394 9,052 2.1%
2019 51万7,232 8,796 1.7%

「外国人技能実習制度」は、主に「途上国」と言われる国々からやってくる実習生に、日本の職場で働く機会を与え、日本の技能・技術・知識を伝えて開発途上国の経済発展を担う人づくりに協力することを目的として、1993年に制度化された仕組みです。
ところが、近年さまざまなメディアでこの制度の問題点が取り沙汰され、「国際貢献」という美名とはかけ離れた運用実態が明るみになってきました。

厚生労働省による2019年の賃金構造基本統計調査では、賞与や残業代を除いた技能実習生の1ヶ月の賃金の平均は15万6,900円。(平均年齢平均26.7歳)
日本の同年代の労働者全員の賃金24万3,900円(正社員以外は19万8,900円)と比べて6割強にとどまっています。
短時間労働者の時給についても、全労働者と比べて低い賃金水準に抑えられていました。
法律では技能実習生には「日本人と同等以上」の賃金を支払わなければならないとされているが、実態はそうしたルールが守られていないことが明らかになっています。

技能実習生生の賃金水準

全労働者 外国人技能実習生
月給 24万3,900
(正社員以外は19万8,900円)
15万6,900円
時給 1,151円 977円

法務省が行った調査では、2017年1月~2018年9月の間に不法残留などにより摘発された5,218人の失踪実習生のうち、少なくとも721人の実習生に対して、「賃金未払い」や「不適切な長時間労働」といった不正行為の疑いがあったこともわかっています。

また、法務省の別の調査では、さらに多くの不正行為の疑いがあることがわかっています。失踪した実習生のうち、約67%が最低賃金未満で働かさていたばかりでなく、約10%の実習生が「過労死ライン」を超えた労働を強いられていたといいます。

過酷な労働の果てにある悲劇は、失踪ばかりではありません。
2012年からの6年間で、実習中の事故死81件、自殺17件を含む171件の死亡事案が確認されています。
こうした様々な調査結果は、実習生の人権保護が適切に行われていないことを示しています。

ところで、実習生はなぜ帰国ではなく失踪を選ぶのでしょうか。
彼らは、雇用主によって実習期間中の日々の生活まで厳しく制限されている実態が報告されています。パスポートや預金通帳、在留カードを取り上げられるケースもあり、帰国はおろか、日本社会に助けを求めることすらできないのです。
また、彼らの多くは来日するために「送り出し機関」と呼ばれる現地のブローカーに高額な手数料を支払う必要があり、そのために多額の借金を抱えています。だから、簡単に帰国するわけにはいかないのです。自分の将来のためにも、故郷に残した家族に迷惑をかけないためにも、日本での新たな雇用を求め失踪してしまうのです。

様々な問題を抱える技能実習制度に対して、日本国内だけでなく国外からも非難の声が上がっています。
2010年、日本における移住者の人権状況に関する訪問調査を行った“移住者の人権に関する国連専門家”は以下のような声明を発して、技能実習制度の廃止を勧告しています。

研修・技能実習制度は、往々にして研修生・技能実習生の心身の健康、身体的尊厳、表現・移動の自由などの権利侵害となるような条件の下、搾取的で安価な労働力を供給し、奴隷的状態にまで発展している場合さえある。このような制度を廃止し、雇用制度に変更すべきである。

引用元:移住者の人権に関する国連専門家、訪日調査を終了/国際連合広報センター

国際貢献をうたいながら、実際には少子高齢化による労働力不足を補うため、外国人を合法的に雇用する制度として利用される「外国人技能実習制度」。
実習生の労働力に依存し続けた結果、現在では「もはや実習生なしでは多くの産業が立ち行かなくなる」とも言われています。
外国人労働者の人権もきちんと守りながら、産業も守るため、外国人技能実習制度の改革が必要とされています。

過去の数字は?

外国人実習生の失踪
「外国人技能実習制度」のもと、日本で働く外国人の多くが失踪し、行方不明になっています。 2018年の一年間に失踪した外国人実習生は9,052人でした。同年の実習生42万4,394人のうちのおよそ2.1%にあたります。 失踪者は年々増加していて、2015年からの4年間で2万7,000人にも上っています。

この問題に取り組んでいる団体

「移民・移民ルーツをもつ人びとの権利と尊厳が保障され、誰もが安心して自分らしく生きられる社会」の実現を掲げるNPO法人。全国にあるネットワークを活かし、技能実習制度だけでなく、入管法や社会保障制度に係る様々な課題の解決に取り組んでいる。Facebookでの情報発信にも力を入れている。

「誰もが安心して生活し、働くことができる社会」を目指して労働や貧困問題に取り組むNPO法人POSSEの学生メンバーが立ち上げた団体。技能実習生や留学生向けに英語での労働相談など、外国人労働者の権利を守るための活動を展開している。

技能実習制度の問題に取り組むため2008年から活動している弁護士のネットワーク。35の都道府県から140人の弁護士が技能実習生への相談、法的サポートに取り組んでいる。政府に対して技能実習制度の廃止を求める意見書や声明も発信している。

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