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2019.06.05.Wed

今、求められる“分野横断型”のアートとは/若手アーティストのアタマん中_01

若手アーティストのアタマん中とは

こんにちは。チャリツモライターのばんです。
ビジネス界や教育現場で、クリエイティブシンキングやアート思考が話題になって久しいこの頃。
社会的企業やNPOなどいわゆる“ソーシャル”な領域では「ソーシャルエンゲージドアート」というのがHOTなキーワードになっているんだそうです。
チャリツモでも“アートと社会の関係性”について、一度きちんと考えたいなと思っていました。

そんな時にお会いしたのが、今回対談をセッティングさせていただいた2人の若手アーティスト、團上祐志(だんがみ・ゆうし)さんと久保田徹(くぼた・とおる)さん。
次世代のクリエイター育成を目的とした「クマ財団」の奨学生であり、“実践的な創作活動を通して、現代社会に向き合い&訴えかけている”という共通点がある2人。

いまをトキメく2人のアーティストは、現代社会をどんなふうに見ているのでしょう?彼らの対談を通して、見えてくるものを一緒に観察しませんか?

対談者プロフィール
  • アーティストの團上(だんがみ)祐志さん

    團上祐志Yushi Dangami

    1995年生まれ。株式会社STILLLFE代表取締役、クマ財団二期生。
    愛媛県大洲市でベンチャー企業を経営する傍ら、美大生やアーティストとして、3足のわらじを履いて活動。
    Web : YUSHI DANGAMI

  • ドキュメンタリー作家の久保田徹さん

    久保田徹Toru Kubota

    1996年生まれ。ドキュメンタリー監督。クマ財団一期生。慶應義塾大学在学中よりYahoo!やVICEなどのメディアにて映像を制作。ロンドン芸術大学修士課程進学予定。
    Web : Toru Kubota
    Twitter / Instagram

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ぶっちゃけ、アートって社会から期待されていると思いますか?

最近アートやデザインをビジネスの世界に持ち込む動きが増えています。

なんだか高尚で、とっつきづらいものという印象の“アート”が、開かれたものに変わってきて、社会や暮らしの中に入り込んできたなーって感じます。

チャリツモで普段扱っている、「社会問題」についてもその解決の現場で「アート」というキーワードをよく耳にするようになりました。

お二人は「アート」と「社会」の関係性について、どう思われますか?ぶっちゃけ、アートは社会から期待されていると思いますか?

2人の若手アーティスト
團上

期待されてると思いますよ。ただ、期待だけがあるけれど、具体的に何をしよう、って言う人は少ない状況だと思います。そこのギャップがあまりにも大きいんです。まずは期待の正体を見抜く必要がある。
アートと社会という文脈では、「アートが社会に還る」という動きは、国際的に起こっています。
その中で今の日本を見てみると、アートが社会に行き着くまでには、解かなければならないバリアが多すぎると思います。

アーティストで起業家の團上祐志さん
久保田

まず、アートと言うものは、どんどん分野横断的になってきている。その中で、分野横断する人を嫌う人が多いと思います。一つの分野を突き詰める人が多い。
僕は慶応の法学部に所属しているんですが、大学では一つの研究に打ち込む人が多く、横断的な実践を嫌う空気はまだ根強く感じます。

ドキュメンタリー作家の久保田徹さん

分野を横断するアートと、分野横断を嫌うアカデミズム

久保田

いろいろな学問分野を横断して、「クリエイティブに落とし込む」ことが好きな部分でもあるんですが、キャンパスでは同じような人にほとんど会ったことない。

慶応の中ではSFC(慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス)なんかが、分野横断的、実践的なことをやっています。でも、僕の所属していた法学部は、分野を越えることが必ずしも良しとされないので、自分としてはあんまり居心地よくはなかったかな。ゼミにも全部落ちたし。
僕自身としては、アカデミックな世界で学んだことが、めちゃめちゃ活かせてるなって実感があるんですけどね。

團上

まだまだ分野横断的な人間は嫌われますよね。まあ、気にしていませんが。

久保田

アカデミズム界隈の方からは、実践がわからないとよく言われます。たとえば政治学でも理論研究をする人と、外交史を研究する人とでは、話が全く別なんです。おなじ政治学でも、他の界隈に突っ込もうとしない。
僕のやっているドキュメンタリー制作となると、尚更違う話としてとらえられます。

團上

西洋の体系づけられた学問と日本の職人的体制が合致した感じですね。
その二重に引き受けられた推進力が近代の日本の急激な練り上げを生み出したんだけど、現代ではアカデミズムの硬直性につながっている。

久保田

学問の世界には他の分野には口出さないみたいな傾向がありますよね。

アカデミックな世界の境界について話す久保田徹さん

若い世代に境界はない

團上

10代の子と仲良くすることが多いんですが、彼らはもっとわかっているし、何よりオモシロイですよ。
アート・テクノロジー界隈にいると、むちゃくちゃオモシロイ10代に会えます。
例えば、クラウドファンディングを普通のインフラとして使う事ができるし、創作活動と、テクノロジーと、ファイナンス、そしてアートをなんの境目なしに考えることができてる。

そう考えると、私たちの代(20代前半)もやばいよなあ。既に萎縮していると思います。
「上の代がうるさい」とか言ってウジウジしている場合じゃない。
旧式の体制は崩れています。インターネットも当たり前に成り、世界はよりボーダレスになっている。その業界を強固にするための線引きはあまり意味をなさなくなってきていて、世の中は多様化している。線引きの強固さよりも、柔軟性が必要です。

團上祐志さんと久保田徹さん

今回感じたこと

実践を嫌う傾向があるとしたら、学問は何のためにあるのでしょう。
職人的に専門を突き詰めることはもちろん大切ですが、それを社会に落とし込むことも確かに重要です。
チャリツモメンバーの中にも、学生時代、同じ専門の教授同士が対立している、なんてことを経験した人もいます。しかし、社会という複雑なものを直視した際には、自分の分野だけでなく、自分と異なるものにも目を向けなければなりません。

また、自分と自分と異なるものの線引きも、主観的に引かれたもの。そうした常識の線引きがない、若い世代の発想力やオモシロさにも、もっと注目してもよいのかもしれません。

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