Loading...
2019.06.12.Wed

グローバルで戦える若者が今、あえて日本を選ぶ理由/若手アーティストのアタマん中_02

若手アーティストのアタマん中とは

こんにちは。チャリツモライターのばんです。
ビジネス界や教育現場で、クリエイティブシンキングやアート思考が話題になって久しいこの頃。
社会的企業やNPOなどいわゆる“ソーシャル”な領域では「ソーシャルエンゲージドアート」というのがHOTなキーワードになっているんだそうです。
チャリツモでも“アートと社会の関係性”について、一度きちんと考えたいなと思っていました。

そんな時にお会いしたのが、今回対談をセッティングさせていただいた2人の若手アーティスト、團上祐志(だんがみ・ゆうし)さんと久保田徹(くぼた・とおる)さん。
次世代のクリエイター育成を目的とした「クマ財団」の奨学生であり、“実践的な創作活動を通して、現代社会に向き合い&訴えかけている”という共通点がある2人。

いまをトキメく2人のアーティストは、現代社会をどんなふうに見ているのでしょう?彼らの対談を通して、見えてくるものを一緒に観察しませんか?

対談者プロフィール
  • アーティストの團上(だんがみ)祐志さん

    團上祐志Yushi Dangami

    1995年生まれ。株式会社STILLLFE代表取締役、クマ財団二期生。
    愛媛県大洲市でベンチャー企業を経営する傍ら、美大生やアーティストとして、3足のわらじを履いて活動。
    Web : YUSHI DANGAMI

  • ドキュメンタリー作家の久保田徹さん

    久保田徹Toru Kubota

    1996年生まれ。ドキュメンタリー監督。クマ財団一期生。慶應義塾大学在学中よりYahoo!やVICEなどのメディアにて映像を制作。ロンドン芸術大学修士課程進学予定。
    Web : Toru Kubota
    Twitter / Instagram

/// 記事の一覧はこちら→ ///

オモシロイ若者たちは、社会にどう働きかけ、どこへ向かっているのでしょうか?

アート・テクノロジー界隈にはオモシロイ10代がたくさんいるらしい。
若い世代ほど、分野横断的に柔軟に考えることができるのだそう。
そうしたオモシロイ若者は何を考えているのでしょう。

2人の若手アーティスト

権力への諦めから、ローカルへ

團上

若い人たちの中には、上の世代の無理解に対して諦めている人もいます。
昨日会った高校生は、彼らが社会に出る時代には今経済を支配しているオープンソースでありながらインフラを独占しているようなモデルは壊れるだろう、と読んでいて、それが壊れた先の世界を見るのが楽しみ、と言っていました。
つまりは今の支配モデルが崩れてから社会に出て働くというようなことを言っていて、 そんな風に見据えるのかと思いましたが、ここには若者共通の諦めがある。

僕自身も、ある種の諦めがあって、だからこそローカルで戦っているんです。
資本と影響力のある上の世代が多く、 若者の発言権のない都市部を去って、自分がフルパワーで働けるローカルに行く若者が増えています

YUSHIDANGAMIの作品04
あなたがここにいるために/團上 祐志
YUSHIDANGAMIの作品06
真空《重力と恩寵より》/團上 祐志
YUSHIDANGAMIの作品02
團上

僕が今活動している四国はもう最高です。徐々に、同じ思いをもった人が集まってきている。
これまで海外に出ていて、 グローバリゼーションの中で戦うことが出来る若い人たちが、グローバルの波にいるからこそアイデンティティを強化するために、ローカルを確保しています。
グローバルとローカルは、対局になるようで相互依存の関係にあって、ローカルが形成されないと、グローバリゼーションは本質的にはその体を成しませんよね。
若い人の中には、グローバリゼーションの文脈の中からローカルに目を付け始めて、 敢えて日本を選択している人が出てきています。そうした人を受け入れる場所として、ローカルがどんどんオモシロくなってきています。

團上祐志さんが愛媛県大洲市で立ち上げた古民家を利用したアートインレジデンス02
今年、團上さんは愛媛県大洲(おおず)市にある空き家を利用して民泊施設を開業しました。明治時代に建てられ、築147年の歴史を持つこの古民家をベースに、今後アートブロジェクトを立ち上げて行くのだそう。
團上

僕もそうした考えで、いいローカルが作れる場所を探していたんですけど、愛媛県大洲市が激アツで!

旧城下町ですから、城を中心に徒歩圏内のコンパクトシティ感があって、そしてその城を地域の人が再建したという気概。
元々産業的に外貨を取る場の文脈もあり、街全体には文武両道的な世界観があります。
美しい川に囲まれていて、その中にある歴史的な建物が軒並み空き家になっている。

大洲市では昨年地域DMO(官民協働で市場調査などの手法を用い、経営的な視点から「観光地域づくり」を進める法人のこと)が設立されており、精神的な連体感を強く感じます。
愛媛県では「グローカルフロンティアを作る」という目的で産業創出支援を行っており、私もそれにのっかって起業※1しました。
雑誌『ナショナルジオグラフィック』も、瀬戸内を推していた※2し、大津市や愛媛県に限らず、瀬戸内はこれから来る

アーティストでありながら愛媛県大洲市で起業もしている團上祐志さん
久保田

“グローバリゼーションで活躍できる人ほどローカルに行く”っていうのは、「自分の原点」に還る人が多いってこと?

團上

原点というか、ローカルの方が利益がある、あるいは自分にアドバンテージがあるということなんだと思う。
“還る”とは違って、僕はもっとクールな選択なんだと思う。
アイデンティティとかカルチャーといったものに重きを置く人は地方を取り、もっと画一的・均質的なサービスを求める人は都市的な生き方をするのだと思う。そういう風に人が巡る。
あとフィジカルがとてつもなく大事だから。ポスト・インターネットとしては。

久保田

なるほどね。僕は関東に生まれ育って、あまり「地元」っていう意識がないから、ローカルってどんなかんじなんだろうな、と思って。
どっちがいい悪いって話ではなく、自分はどちら向きが気持ちいいのか、どちらがストレスオフなのか、ということなのかもしれないね。
僕自身、まだ世界でバリバリ働いている訳ではないからわからないけど、一度そういうところで働くと、「地元でやりてえ」って思うのかもしれない。

でも面白い視点だね。自然とこれを認識して、起業したり、モノを作ったりすることが出来るのはすごいと思う。

ドキュメンタリー作家の久保田徹さん
團上

褒められた(笑)
私はアーティストと起業家はすごく親和性があると思います。
先の流れを読んで、自分なりのロジックというか、コンストラクションをもって、モノを創るという点で。

今回感じたこと

時代の変化を読んで、自分なりの選択をしていくことに境界はない。
グローバルも都市もローカルも、フラットな選択肢としてみることができることが「上の世代」にはない視点なのかもしれません。

ライター: