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2021.04.20.Tue / update:2021.05.07

都道府県ごとの医師数の格差

医師の地域間格差

日本では、地域ごとの医師数に偏りが大きいのが実情です。(医師の地域偏在といわれる)
この状態が続けば、住む地域によっては、十分な医療サービスを受けられなくなってしまう恐れがあります。

医師の偏在を見る指標として、これまでは「人口10万人あたりの医師数」が用いられてきました。
それでは、人口10万人あたり医師数を都道府県別に見てみましょう。
厚生労働省によると、2018年の医師数が最も多いのは徳島県の329.5人、最も少ないのは埼玉県の169.8人となっており、約1.9倍の開きがあります。
地域ごとに大きな差があるのがわかります。

しかし、「人口10万人あたり医師数」だけでは、医師偏在の現状を正確に示していないとして、あらたに厚生労働省が「医師偏在指標」というものを定めました。
「医師偏在指標」は、従来の「人口10万人あたりの医師数」のほかに、以下のような要素を加味し、医師の偏在の状況を精緻に測るための指標です。
(1)医療ニーズや将来の人口・人口構成の変化
(2)患者の流出入
(3)へき地の地理的条件
(4)医師の性別・年齢分布
(5)医師偏在の単位(区域、診療科、入院/外来)
こうして算出された「医師偏在指標」に従って都道府県ごとのランキングを見ていきましょう。

医師偏在指標の上位と下位5都道府県

順位都道府県医師偏在指標
全国平均238.3
1位 東京都 324.0
2位 京都府 313.8
3位 福岡県 299.7
4位 岡山県280.2
5位 沖縄県275.3
43位 福島県178.4
44位 埼玉県 177.7
45位 青森県 172.9
46位 岩手県172.4
47位 新潟県171.9

では、最も高いのは東京都の332.8、最も低いのは新潟県の171.9となっており、約1.93倍の開きがあります。
「医師偏在指標」は医師の絶対的な充足状況ではなく、あくまでも相対的な偏在の状況を表すものですから、地域間で医師の数に大きな隔たりがあるということを示唆しています。

厚生労働省はこうした事態に対して、トータルとして現状(2019年)程度の医学部定員を超えない範囲で、より多くの地域枠を継続的に設定することで、医師の地域偏在の解消を試みています。

地域枠とは、「地域医療に従事する医師を養成すること」を目的に用意されている入学枠のことです。地域枠で入学した学生は基本的に、卒業してから一定期間、特定地域での医療活動に従事することが義務付けられています。
実際に2008年からの地域枠の増員によって、2014年から2018年の5年間で、若手(35歳未満)の医師数の増加率は、医師多数都道府県では1.7%である一方で、医師少数都道府県では11.9%となっています。
「トータルとして現状(2019年)程度の医学部定員を超えない範囲で」としている理由は、現在のペースのまま医師を養成し続けると、2029年以降には医師供給過剰となると推計されているからです。つまり、トータルの医師数の供給を抑制しながら、偏在対策を行う必要があるのです。

これに対して、反対の声も上がっています。地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会は、適切な医療を提供するためには、医師の絶対数を増やすことが必要だと提言しています。
また、病院には予算も人手も常に足りていないと訴える医療従事者もけっして少なくありません。病院やスタッフがすでに手一杯の状況に、今回のコロナウイルスが拍車をかけた結果、2020年12月、北海道の旭川市では医療崩壊が起きてしまったようです。

こうした新型コロナウイルスの影響による医療崩壊の危機が叫ばれる状況の中で、私たちは「医療とは何か?」について、もっと真剣に考えるべきではないでしょうか。

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けいしん
哲学と読書が好きな大学生。 大学では医学を専門に学んでます。 他にも心理学や食に興味あり。