Loading...
2021.07.30.Fri / update:2023.12.12

報道の自由度ランキング、日本は68位

円形の壁で囲まれた空間のなかにいる報道関係者たち。かれらはあやつり人形のような糸が繋がれていて、政治家などの権力者たちが彼らを操っている

国際NGO「国境なき記者団」が、2002年から毎年発表している「報道の自由度ランキング」。これは、世界180カ国の国と地域を対象に、世界各国の報道機関の活動と政府による規制の状況をランキング形式でレポートするものです。“メディアの独立性、多様性、透明性、自主規制、インフラ、法規制”といった側面から客観的な指標で評価し、その国や地域で報道の自由がどれほど保証されているかを示しています。

これまでの日本の最高位は2010年・鳩山内閣(民主党)時の11位でした。民主党政権下では、政府による記者会見を一部オープンにするなどの試みを行うなど、報道の自由に寄与する動きがありました。
しかし、2013年に政権交代が起こり、自民党・安倍内閣になってからは、大幅にランクを下げ、2016年・17年には過去最低の72位を記録しました。その後も60位代後半で低迷しています。

最新版である2023年のランキングでは、史上2番目に低い71位を記録した前年から3ポイント回復したものの、68位。いつもどおり、G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの主要7カ国)のなかでは最下位でした。

ランキング発表に際して、国境なき記者団は、日本の報道について以下のような声明を出して問題点を指摘しています。

<メディアの状況>
日本では、伝統的なメディアの影響力がニュースサイトよりも依然として強い。主要な新聞社や放送局は、日本の5大メディア・コングロマリットによって所有されている。読売と朝日はそれぞれ1日680万部、400万部と世界でも有数の新聞発行部数を誇る。同時に、日本放送協会(NHK)は世界第2位の公共放送局である。

<政治的背景>
2012年以降、民族主義右派が台頭したことで、多くのジャーナリストが、政権からジャーナリズムに対する不信感、さらには敵意さえ抱く風潮に不満を抱いている。既成の報道機関しか政府行事へのアクセスや政府高官へのインタビューを許さない「記者クラブ」制度は、ジャーナリストの自己検閲を後押しし、フリーランスや外国人記者に対する露骨な差別となっている。

<法的枠組み>
2021年に制定され、2023年に初めて適用される曖昧な表現の規制(※)は、福島原発のような「国家安全保障上の利益」とみなされる防衛施設やインフラに近い58の地域への一般市民(ジャーナリストを含む)の立ち入りを制限している。政府はまた、「違法に」入手した情報の公表を最高10年の懲役に処する特別秘密保護法の改正も拒否している。
(※2023年に初めて適用された土地利用規制法のこと)

<社会文化的背景>
日本政府と企業は主要メディアの経営に日常的に圧力をかけており、その結果、汚職、セクハラ、健康問題(新型コロナウイルス、放射能)、公害など、センシティブとみなされる可能性のあるテーマについて、激しい自己検閲が行われている。2020年、政府は新型コロナウイルスによる健康対策を口実に、記者会見に招待するジャーナリストの数を大幅に減らし、公共放送のNHKを、重大な国家的危機が発生した場合に政府の「指示」に従うことになっている組織のリストに加えた。

<安全性>
日本のジャーナリストは比較的安全な労働環境を享受しているが、「中傷的」とみなされる内容をリツイートしただけで政治家から訴えられた者もいる。SNS上では、ナショナリストグループが、政府を批判したり、福島原発事故による健康問題など「非国民的」なテーマを取材したりするジャーナリストに対して日常的に嫌がらせを行っている。2022年12月には、日本外国特派員協会に「日本外国特派員協会を爆破し、2人の記者を殺す」という脅迫電話が数回かかってきた。

国境なき記者団WEBサイトより

このように、日本の報道は海外の記者たちから、厳しい評価を受けています。最近では、日本のメディアが無視してきた問題が、海外メディアからの指摘によって明らかになるケースも増えています(特に性加害事件に関連して)。

自分たちの社会の問題に我々自身が気づき、解決する。民主主義社会であれば当然のあり方ですが、それを支えるのはジャーナリズムです。報道の危機は、民主主義の危機と言えるでしょう。

同じカテゴリーの記事
アバター画像
WEBデザインと、記事の執筆&編集を担当しています。
猫が好き。 お仕事のご相談