重大犯罪の賠償金 全額支払われたのは ゼロ件

犯罪をおかしたら、加害者には懲役や罰金などの「刑罰」が課せられます。
しかし、被害者に対する経済的な補償を求めるためには、民事裁判などで「損害賠償」を求める必要があります。国が法律によって刑罰科す「刑事事件」と、私人間の利害調整をする「民事事件」は明確に分けられているのです。
(通常の民事裁判だけでなく、刑事裁判を担当した裁判所が、引き続き損害賠償請求の審理を行う「損害賠償命令制度」という仕組みもあります)
しかし、たとえ民事裁判の判決で損害賠償請求が認められても、多くの場合被害者に対してお金が支払われていません。加害者が「お金がない」などの理由で、支払い義務を果たさず、逃げてしまっているのです。
2015年に行われたアンケートによると、殺人などの重大犯罪について、被害に遭った人がお金を満額受け取ったという回答はゼロ。支払いが1円もなかったという回答が6割にも上りました。
賠償金の回収を妨げている要因の一つが、損害賠償の債権者に「債務者の財産を見つけるのが困難」であることです。
損害賠償請求の際には、捜査権限を持つ警察のような組織が介入するわけではありません。また、裁判所に「強制執行」を申し立てたとしても、差し押さえるべき財産は債権者自ら探し出さなければなりません。
こうした状況を踏まえ、2019年5月に「民事執行法」の改正法が可決されました。これにより、債務者以外の第三者から財産の情報を取得する手続きが設けられたり、債務者が民事執行法に定めによる「財産開示」の手続に協力しない場合の罰則を強化するなどの改善がなされています。
しかし、そもそも債務者が本当に財産を持っていない場合は、債権者(犯罪被害者)が泣き寝入りせざるを得ない状況は変わっていません。
この問題に取り組んでいる団体
国が設立した法的トラブル解決の総合案内所。
犯罪被害者向けの情報に関しては、被害者やその家族が、そのとき最も必要な支援が受けられるよう「犯罪の被害にあわれた方へ」というページにまとめられている。