重大犯罪の賠償金 全額支払われたのは7.3%

犯罪をおかしたら、加害者には懲役や罰金などの「刑罰」が課せられます。
しかし、被害者が経済的な補償を求めるためには、民事裁判などで「損害賠償」を求める必要があります。国が法律によって刑罰を科す「刑事事件」と、私人間の利害調整をする「民事事件」は明確に分けられているのです。
(通常の民事裁判だけでなく、刑事裁判を担当した裁判所が、引き続き損害賠償請求の審理を行う「損害賠償命令制度」という仕組みもあります)
しかし、民事裁判の判決で損害賠償請求が認められたにもかかわらず、被害者に対してお金が支払われないケースが少なくありません。加害者が「お金がない」などの理由で、支払い義務を果たさず、逃げてしまうのです。
2018年に行われたアンケート調査によると、殺人などの重大犯罪の賠償金回収率(裁判などで認められた賠償額のうち実際に被害者に支払われた金額)の平均は、殺人事件で13.3%、傷害致死で16%、強盗殺人にいたってはわずか1.2%でした。支払いが1円もなかったという回答も半数に上ります。全額支払われたという回答は、たった7.3%でした。
賠償金の回収を妨げている要因の一つが、損害賠償の債権者にとって「債務者の財産を見つけるのが困難」であること。
損害賠償請求の際には、捜査権限を持つ警察のような組織が介入するわけではありません。また、裁判所に「強制執行」を申し立てたとしても、差し押さえるべき財産は債権者自ら探し出さなければなりません。
こうした状況を踏まえ、2019年5月に「民事執行法」の改正法が可決されました。これにより、債務者以外の第三者から財産の情報を取得する手続きが設けられたり、債務者が財産開示の手続きに協力しない場合の罰則を強化するなどの改善がなされています。
それでも、そもそも債務者が本当に財産を持っていない場合、債権者(犯罪被害者)が泣き寝入りせざるを得ない状況は変わっていません。犯罪被害者に対して国が給付金を支給する犯罪被害者等給付金という制度もあるものの、見舞金的な性格のため給付額はごくわずかです。