“働きすぎ”な日本の教員。小学校教員の一週間の労働時間は…

日本の教員は“働き過ぎ”だと言われています。
2018年にOECD(経済協力開発機構)が行った教員の勤務時間調査によれば、日本の教員の労働時間は小学校で54.4時間、中学校で週56時間。
これは調査に参加した国・地域の中で最長でした。(小学校は15の国と地域、中学校は48の国と地域が参加しました)
日本の教員の長時間労働の背景には大きく2つの問題があります。
(1)教員の量的不足
(2)教員の業務範囲の拡大
です。
1つ目の「教員の量的不足」について見てみましょう。
文部科学省の統計によれば、公立学校の教員採用数は1999年度(平成11年度)を境に、増加に転じ、99年に11,021人だった採用数は2020年には3倍以上の35,058人にまで増えました。採用数が増えている理由は、1970年代の第2次ベビーブーム時代に大量採用された教員が、定年退職を迎えるにあたり、新たな教員採用を増やす必要があるためです。
採用数が増える一方で受験者数は減る傾向にあり、競争率は下がり続けています。2020年度の公立小学校教員の競争率は、過去最低の2.8倍にまで下がりました。
ベテラン教員が次々に退職したあとの現場を、若手教員たちがなんとか回している…それが今の教育現場です。

また、年度途中に病気や妊娠等の理由で休暇に入る教員は年々増加しています。
しかし、その後任として勤務することのできる人材(教員免許を持っていて、かつ年度途中で勤務していない人材)は希少であり、一度人が抜けると、その穴を埋めることができずに、周囲の教員や管理職が代わりに授業や学級を受け持つケースが増えています。
年度途中で欠けた教員を補えない、あるいは4月当初の時点での人員が不足している状況を教員の「未配置」といいますが、2019年には全国の小中学校で1241件の未配置が確認されています。
続いて、2つ目の問題「教員の業務範囲の拡大」について見てみましょう。 2020年に施行された新学習指導要領により小学校の教育現場でも「英語教育」や「プログラミング教育」などの新たな取組みが取り入れられました。
文部科学省が提げる「生きる力」を育む教育の中では、今後さらに重視していく内容として“情報教育”や“道徳教育”、“消費者教育”や主権者教育”など「〇〇教育」というキーワードが12個も挙げられていて、教員の業務範囲の拡大が見て取れます。
また、子どもたちの登下校から部活動の指導まで、教員は朝から晩までやるべきことが詰まっています。
2017年に文部科学省が提示した、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」の中では、「基本的には学校以外が担うべき業務」や「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」などが例示されていますが、現実にはそのほとんどを教員たちが担っています。
こうした問題から、日本の学校教員は働き過ぎと言われながら、その業務量を軽減できずにいる現実があります。
この先も大量退職は進み、教員不足は一層深刻になっていくものと思われます。
日本の教育はこのままでいいのでしょうか。