絶滅危機のアフリカゾウ、37年間で31%の減少
現在、陸上で最大の生物であるアフリカゾウは、近年の密猟により100分の1以下の数にまで減少してしまいました。1979年は134万頭だった推定個体数は2016年には42万頭まで減ってしまいまいた。37年間でおよそ31%の減少です。
アフリカゾウはシンリンゾウ(マルミミゾウ)とサバンナゾウという2種に分けられますが、国際自然保護連合 (IUCN)が絶滅のおそれのある野生生物をまとめた「レッドリスト」には、どちらの種も絶滅危惧種として掲載されています。(シンリンゾウは「深刻な危機(CR)」、サバンナゾウは「危機(EN)」の評価)
そんなアフリカゾウが持つ「象牙」は希少で、見た目が美しく、豊かさをしめすシンボルとして高額で取引されてきました。1950年代以降の高度経済成長期には、多くの日本人が印鑑などの象牙製品を買い求めました。その結果、「ワシントン条約」で象牙の国際取引が禁止された1989年時点で、日本は世界一の象牙輸入国になっていました。1970年から89年までの間に日本に輸入された象牙の量はおよそ5000トン、アフリカゾウ約25万頭分にも相当します。
ワシントン条約制定後も、日本から海外への象牙の違法流出は続きました。2011年から16年の間に、中国で日本由来の違法象牙が2.42トンも押収されています。
これをうけ、2016年のワシントン条約第17回締約国会議において、米国及びケニアを始めとするアフリカ10か国が、既に禁止されている国際取引に加え、各国の国内取引市場の閉鎖を求めました。そして協議の結果、密猟や象牙の違法取引に深くつながっている市場に限定して閉鎖されることが決まりました。
その後、多くの国が違法取引が疑われる市場のみならず、合法的な市場も含めて閉鎖し、象牙の取引を全面的に禁止するようになりました。
日本とともに象牙の大量消費国だった中国も、2017年12月31日をもって国内での象牙取引を禁止しています。
世界が象牙の取引を全面禁止するなか、象牙取引を続けているのが日本です。
2019年8月にスイスのジュネーブで行われたワシントン条約締約国会議の議場で、国際社会は日本など象牙市場を維持する国に対し、国内市場の閉鎖を求める決議を提案しまたしたが、日本は「日本の国内市場は違法取引に関与していない」として決議に反対。決議は見送られてしまいました。
会議の席上、ケニアの政府代表は「日本の象牙市場が違法取引に関わっていることは明白。市場が開かれている限りゾウは殺され続け、アフリカの宝は失われてしまう」と名指しで批判。同様の批判はその他のアフリカ諸国からも噴出しました。
象牙取引全面禁止に向け、世界が足並みを揃える中、国内市場の維持に固執し続ける日本は孤立を深めています。