日本の子どもたち、身体的な幸福度は世界一。精神的幸福度は世界ワースト2
日本には15歳未満の子どもが1,512万人います。(2020年4月1日時点/総務省の統計による)
彼らは、幸せな日々を送ることができているでしょうか?
UNICEFが先進国38か国の子どもたちを対象した調査では、興味深い結果が出ています。
身体的な健康という観点から見ると、日本の子どもたちは他国と比べ肥満率が圧倒的に低く、「身体的な幸福度」は世界1位にランキングされています。
しかし一方で、精神的な健康を表す「精神の幸福度」は、世界ワースト2位(38カ国中37位)。
日本の子どもたちの総合的な「幸福度」は、38か国中20位で、真ん中より少し下となっています。
子どもの幸福度ランキング
精神的幸福度▶ポジティブな面の指標として「生活満足度」、ネガティブな指標として「自殺率」に注目
身体的健康▶子どもの「死亡率」と先進国における栄養不良を表す「肥満率」に注目
スキル▶子どもたちの学力と社会的スキルを同じ比重で分析
国名 | 総合順位 | 精神的幸福度 | 身体的健康 | スキル |
---|---|---|---|---|
オランダ | 1 | 1 | 9 | 3 |
デンマーク | 2 | 5 | 4 | 7 |
ノルウェイ | 3 | 11 | 8 | 1 |
スイス | 4 | 13 | 3 | 12 |
フィンランド | 5 | 12 | 6 | 9 |
スペイン | 6 | 3 | 23 | 4 |
フランス | 7 | 7 | 18 | 5 |
ベルギー | 8 | 17 | 7 | 8 |
スロベニア | 9 | 23 | 11 | 2 |
スウェーデン | 10 | 22 | 5 | 14 |
クロアチア | 11 | 10 | 25 | 10 |
アイルランド | 12 | 26 | 17 | 6 |
ルクセンブルグ | 13 | 19 | 2 | 28 |
ドイツ | 14 | 16 | 10 | 21 |
ハンガリー | 15 | 15 | 21 | 13 |
オーストリア | 16 | 21 | 12 | 17 |
ポルトガル | 17 | 6 | 26 | 20 |
キプロス | 18 | 2 | 29 | 24 |
イタリア | 19 | 9 | 31 | 15 |
日本 | 20 | 37 | 1 | 27 |
韓国 | 21 | 34 | 13 | 11 |
チェコ | 22 | 24 | 14 | 22 |
エストニア | 23 | 33 | 15 | 16 |
アイスランド | 24 | 20 | 16 | 34 |
ルーマニア | 25 | 4 | 34 | 30 |
スロバキア | 26 | 14 | 27 | 36 |
イギリス | 27 | 29 | 19 | 26 |
ラトビア | 28 | 25 | 24 | 29 |
ギリシャ | 29 | 8 | 35 | 31 |
カナダ | 30 | 31 | 30 | 18 |
ポーランド | 31 | 30 | 22 | 25 |
オーストラリア | 32 | 35 | 28 | 19 |
リトアニア | 33 | 36 | 20 | 33 |
マルタ | 34 | 28 | 32 | 35 |
ニュージーランド | 35 | 38 | 33 | 23 |
アメリカ | 36 | 32 | 38 | 32 |
ブルガリア | 37 | 18 | 37 | 37 |
チリ | 38 | 27 | 36 | 38 |
ワースト2位とされた「精神の幸福度」に関する調査結果のうち、「生活に満足している」と答えた日本の子どもたちは62%。4割近くの子どもたちは、生活を楽しめていないと回答しています。
特に、家族や周囲の人との関係性が子どもの幸福度に強く関係していることがわかりました。「支えてくれる人がいる」と答えた割合を見てみると、幸福度の自己評価が低い子どもは 64%、その他の子どもの93%と大きな開きがあります。
また、「自宅で安心感が得られない」と回答した割合は、幸福度の低い子どもで24%、その他の子どもはわずか1%でした。
生活満足度の低さは、単なる一時的な「幸せ」の問題ではありません。
イギリスの研究によると、生活満足度の低い子どもはそうでない子とくらべて
・家庭内不和を報告する割合が8倍
・意見を表明できないと感じる割合が6倍
・いじめられている割合が5倍
・学校に行きたくないと感じる割合が2倍以上
という特徴があることがわかっており、生活満足度は日常的な困難と密接に関わっていることがわかっています。
この調査では身体的健康・精神的幸福のほかに「スキル」というランキングも設けられています。「学力」の指標である数学・読解力の基礎的習熟度と、「社会的スキル」を身につけている度合いを測るものです。
そのうち「人間関係構築への自信」を評価した「社会スキル」という項目で、日本はチリについでワースト2。日本の子どもの3割以上が、学校で「友達を簡単につくれ」ないと感じていました。
もちろん、この調査が子どもの幸福度を正しく測れているとは言い切れません。しかし、これをきっかけに、自分たちや子どもたちにとっての「幸せ」とは何か、どのようにすれば「幸せ」に生きていけるのかを考え直してみることに、意義があるのではないでしょうか。
参考情報
人口推計(令和5年(2023年)5月確定値、令和5年(2023年)10月概算値) (2023年10月20日公表)(内閣府、2023年)
ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング日本の子どもに関する結果(ユニセフ、2020年)