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2021.05.07.Fri / update:2023.11.29

日本の若者の死因、第一位は自殺

若者の死因第一位は自殺

2022年、日本国内の自殺死亡者数は2万1,881人でした。2003年の3万4,427人をピークに、近年は減少傾向が続いていましたが、新型のコロナウイルスの流行が始まった2020年を契機に再び増加傾向にあります。人口10万人当たりの自殺者数を示す「自殺死亡率」は17.6人で、こちらも2020年以降増加しています。

かつての日本では「自殺するのは弱い人間だから」とか「自ら勝手に死んだんだ」などという考え方が強く、自殺は「個人の問題」と捉えられていました。しかし、国内の自殺者数が毎年3万人を超える異常な状況が続いていた2006年に「自殺対策基本法」ができてからは、自殺は「個人の問題」ではなく、「社会の問題」だという認識が社会に広がってきました。自殺が過労、生活困窮、育児や介護疲れ、いじめや孤立など、自分ひとりではどうしようもない「社会的要因」により自殺に追い込まれた末の死であること、そして自殺に追い込まれる状況は誰にでも起こりうるのだということに人々が気づき、自殺に対する考え方が変わったのです。基本法制定後、日本社会全体で自殺対策に取り組んだ結果、年間3万人超の自殺者数は2万人弱まで減少を続けてきました。ところが、コロナ禍を契機に再び微増に転じた現在、以前のような状況に逆戻りするのではないかと危ぶまれています。

そして、さらに問題なのは、子どもや若者の自殺が多いことです。
2022年時点で、日本に住む15~39歳の若者の死因の第1位は自殺ですが、先進国の集まりであるG7(日本/フランス/米国/ドイツ/カナダ/英国/イタリア)の中で、若者(15~29歳)の死因第1位が「自殺」なのは、唯一日本だけです。
15歳未満の子どもたちの状況も深刻で、2022年の小中学生の自殺者数は過去最多の514人となりました。

年代ごとの死亡率TOP3

カッコ内は死亡率(10万人あたりの死亡者数)

年代 1位 2位 3位
10-14歳自殺
(2.3)
悪性新生物〈腫瘍〉
(1.6)
不慮の事故
(0.6)
15-19歳自殺
(12.2)
不慮の事故
(3.6)
悪性新生物〈腫瘍〉
(2.3)
20-24歳自殺
(21.3)
不慮の事故
(4.5)
悪性新生物〈腫瘍〉
(2.5)
25-29歳自殺
(19.4)
悪性新生物〈腫瘍〉
(4.1)
不慮の事故
(3.5)
30-34歳自殺
(18.3)
悪性新生物〈腫瘍〉
(7.9)
心疾患
(3.5)
35-39歳自殺
(19.5)
悪性新生物〈腫瘍〉
(14.1)
心疾患
(5.5)

過去10数年にわたって自殺者総数が減り続けたことはお伝えしましたが、その期間中も子どもや若者の自殺だけは増え続けるという異常事態が続いています。

自殺のリスクが高まるのは、自己肯定感や信頼できる人間関係、危機回避能力といった「生きることの促進要因」よりも過労、生活困窮、育児や介護疲れ、いじめや孤立等の「生きることの阻害要因」が上回ったときだと言われています。

内閣府の調査で、日本の若者の自己肯定感(「自分が好きだ」という気持ち)は、諸外国に比べて極端に低いことがわかっています。また、国内の虐待件数やいじめの認知件数は、増加する一方です。
文部科学省が定める学習指導要領は「生きる力」を掲げていますが、皮肉なことに日本社会は(学校も含めて)子どもたちの生きる力を奪い続けているのではないでしょうか。

昨今、少子化高齢化で子どもが増えないと日本社会が崩壊するという話を大人たちは一生懸命しています。でも、生まれてきた子どもたちの多くが悲しい選択をせざるを得ない状況に向き合い、子どもや若者を追い込む原因はなんなのか、社会のどこをどう変えれば彼らが自分らしく力強く生きていくことができるのかについて、十分に考え、議論し、実行していると言えるでしょうか?
SDGSやサステナビリティーという言葉がもてはやされていますが、身近な子どもたちの命の持続可能性を考えることこそ、真っ先にやるべきことなのではないでしょうか。

* * *

「死にたい」と思ったら

「死にたい」と思うことは、ヘンなことではありません。日本財団が2022年に行った調査では、15歳~19歳の「約2人に1人」が死にたいと願い自殺を考えたことがあるという結果がでています。死にたくなるのは普通のことなのです。
しかし、前述のとおり自殺とは、個人の問題でなく、社会の問題です。あなたが弱いわけでも、悪いわけでもない。そしてあなた一人で解決できる問題でもないのです。だから、どうか死にたくなったときには、周囲の信頼できる人に自分の気持ちを話してみてください。
身近な人に話してみたけど解決しないときや、周囲に信頼できる相談相手がいないときは、相談窓口に相談することをおすすめします。世の中には、無料で相談できる相談窓口がたくさんあります。自分の名前を言わなくても相談できます。あなたの気持ちを相談員が受け止めて、どうしたらいいかを一緒に考えてくれます。

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