保育士の女性比率、95.8%
これまで、女性の社会進出が遅れている事例を上げてきましたが、中には女性が非常に多い職場もあります。例えば、保育士は女性比率が95.8%と、ほとんどが女性によって支えられています。
保育園に入れたくても、入れられない待機児童の数は、全国で2,680人(2023年時点)。待機児童問題が大きく取り上げられるようになってから数年で大幅に減少しているものの、特に都市部などでは数百人の待機児童を抱える自治体が幾つもあるなど、引き続き社会問題となっています。
また、実際には希望する認可保育所に入れなかったにも関わらず、特定の園のみを希望しているなどの理由で「待機児童」としてカウントされていない「隠れ待機児童」は6万6,168人いることもわかっています。
待機児童問題を解決するために、各自治体では新たに保育園を建設するなどの対応に追われています。それに伴い保育士への求人も増えており、全職種の有効求人倍率が1.03倍なのに対し、保育士の有効求人倍率は2.50倍(2021年)で引く手数多の状況です。にも関わらず、保育士の平均年収は364万円であり、全職種の平均501万円に比べ137万円も低い状況(2021年)です。保育業界は、人材不足が続いているのに、まともに賃金アップがされない特殊な業界です。
女性比率が高く、人材不足が続いている、けれど賃金が低いという点は、介護士とよく似ています。
かつては育児や介護といった「ケア労働」は、家庭の中で女性が無償で行うものだと考えられていました。保育や介護の負担を家庭で担えなくなり、専門職として外部化されてから相当な時間が経ったにも関わらず、そこに従事する人々の待遇改善がなされない背景には、「ケア労働は新たな経済的価値を産まない労働だ」などの間違った社会通念や女性蔑視的な価値観が未だに根強く存在しているのかもしれません。