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2018.04.20.Fri / update:2023.12.12

日本の難民認定率は、2%

さまざまな人種の人が助けを求めて空中に伸ばす手をの中から、一人だけすくい上げられている絵

一般的に、紛争や迫害などにより住み慣れたふるさとを追われ、他国に逃れた人たちを「難民」といいます。

第二次世界大戦後の1945年に国際連合(国連)が設立され、発足後まもない国連で採択された「世界人権宣言」(1948年)は、基本的人権尊重の原則のもと、初めて人権保障の目標や基準を国際的にうたった画期的なものでした。その中では“庇護を求める権利とすべての人間は差別されずに基本的人権を享受できる”ことが確認されました。
その後、1951年の「難民の地位に関する条約」で難民の権利を保障することが約束され、さらに1967年の「難民の地位に関する議定書」によって、51年の条約の中にあった地理的・時間的制約を取り除かれました。51年の条約と、67年の議定書を合わせて「難民条約」と呼びます。

1981年に難民条約に加入した日本にも、外国から命からがら逃げてくる難民の人たちが後を絶ちません。しかし、日本の難民認定数は、他の先進国と比べ、極端に少ない状況です。
2022年に日本で難民申請したのは3,772人、そのうち認定されたのはわずか202人。難民認定率はわずか2.0%でした。
ちなみに、同年の諸外国での難民受け入れ数は、ドイツ 4万6,787人(認定率20.9%)、アメリカ 4万6,629人(45.7%)、フランス 4万1,681人(20.9%)、カナダ 3万0,598人(59.2%)、イギリス 1万8,551人(68.6%)となっています。

日本の難民認定率が低い理由の一つは、プロセスが非常に難解だということ。日本の難民認定では、難民であることの客観的証拠の提出が求められる上、証拠書類は日本語で作成しなければならず、縁もゆかりもない日本に命からがら逃げてきた難民にとっては、申請のハードルが高いのです。

そしてもう一つの理由が、日本の難民条約の解釈です。
条約では「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人」を難民と非常に大まかに定義していて、具体的な基準を細かく定めてはいません。そのため各国でその解釈が異なるのですが、特に日本の解釈は厳しいもので、「難民」の定義をを非常に狭く捉えているのです。

例えば、日本ではこれまで戦争や内戦から逃れてきた人々を難民として、認定してきませんでした。
確かに難民条約では、難民の定義に「戦争や紛争から逃れてきた人」は含まれていません。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も1979年に、「武力紛争によって国を離れないといけなくなった人は、通常、難民条約上の難民にはあたらない」という難民認定の基準を公表しました。しかし、そもそも難民条約は第二次世界大戦で深刻化した難民問題を受けて定められたという経緯もあり、「戦争から逃れた人々を助けられないのでは、条約の趣旨や目的に反するのではないか」という批判が出ました。
その後、各国の難民認定機関や裁判所が「戦争や紛争から逃れた人々も条約上の難民にあたる」と判断するようになり、2016年にはUNHCRも「戦争、武力紛争であっても条約上の難民に該当する」と明記したガイドラインを出しました。
つまり、戦争や紛争から逃れた人々を難民と認めない日本の難民の解釈は、国際的に見たら半世紀も前の時代遅れの解釈なのです。

そうした状況を受け、2023年の入管法の改正で、紛争から逃れた人も「補完的保護(準難民)」の対象として受け入れられることになりました。
しかし、この改正入管法では、これまで上限のなかった難民申請の回数を2回までとする改悪も同時に行われています。これまで難民認定申請中は送還が認められてこなかったのですが、今回の法改正により、3回目以降の申請者は「相当な理由」を示さなければ本国に強制送還されることになりました。この変更

は、難民条約の33条で定められたノンフルールマン原則に反する疑いがあるとして、日本国内でも激しく非難されています。ノンフルールマン原則とは、難民(難民申請者も含む)を「迫害されるおそれのある国に送還してはいけない」というルールです。
難民条約では、(1)難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけないことや、(2)庇護申請国へ不法入国したり、不法に滞在していることを理由に難民を罰してはいけないことなどが規定されています。
難民申請の回数を制限する今回の改正法は、母国に帰ると紛争や迫害などで殺されてしまうかもしれない人を、無理やり母国に送り返してしまう危険性があるのです。

2022年にTBSで放送されたドラマ「日本沈没ー希望のひとー」では、日本列島が沈没する事態に陥ったとき、世界各国が日本人を難民として受け入れてくれたおかげで全国民の命が救われるというラストでした。
もし、日本沈没が現実になったとき、これまで難民をまともに受け入れずに送り返してきた国の国民が、他国に受け入れてくれるのでしょうか?

過去の数字は?

日本の難民認定数はわずか42人
2018年に日本で難民申請したのは10,493人。そのうち認定されたのはわずか42人しかいませんでした。難民認定率はわずか0.3%でした。(認定数42人÷処理件数13,502人で計算) ちなみに、同年の諸外国での難民受け入れ数は、ドイツ 5万6,583人(認定率23.0%)、アメリカ 3万5,198人(35.4%)、フランス 2万9,035人(19.2%)、カナダ 1万6,875人(56.4%)、イギリス 1万2,027人(32.5%)となっています。
2017年に日本で難民申請したのは19,623人です。しかし、そのうち認定されたのは20人しかいませんでした。認定率にすると約0.1%です。

この問題に取り組んでいる団体

ユニクロなどのファッションブランドを展開するファーストリテイリングでは、国内店舗での難民の雇用や、不要になった服を回収し難民キャンプへ寄付をしたり、難民支援プログラムへの拠出などの取り組みをしている。

日本に来る難民が新たな土地で安心して暮らせるよう、法的支援、生活支援、就労支援、コミュニティ支援等と行う。

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の活動を支える公式支援窓口。

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"多様性"や人々を分ける"境界"が関心事のキーワード。
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Bolly
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船川 諒
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