日本在住外国人のうち、およそ3割が差別を受けた経験がある

2016年、法務省は外国人をめぐる人権状況を把握するため、日本で暮らす18歳以上の外国人を対象とした調査を行いました。
そのなかで「過去5年間に、日本で外国人であることを理由に侮辱されるなど差別的なことを言われた経験」が「よくある」または「たまにある」と答えた在留外国人は、あわせて1269人、全体の29.1%にも上りました。
日本で暮らす外国人の人たちはどのような差別を受けているのでしょうか。
前述の調査では、39.3%の人が「外国人であることを理由に入居を断ら」れ、25%の人が「外国人であることを理由に就職を断られた」経験があると答えています。
入居を断られた経験のある人の9割は日常会話以上の日本語を話せることから、日本語でコミュニケーションがとれるにも関わらず、外国人が日常的に不当な扱いを受けている現状が明らかとなっています。
外国人への差別は近年ヘイトスピーチとしてもメディアで取り上げられています。
ヘイトスピーチとは、特定の国の出身者であることやその子孫であることのみを理由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの一方的な内容の言動のことを言い、日本では在日朝鮮人の人たちに対する憎悪表現や迫害行為を表す際に用いられる言葉としてよく知られています。
法務省の調査では、ヘイトスピーチと見られるデモなどが2012年4月から15年9月までの3年半の間に1,152件あったと報告されています。
1965年に国連で採択され、日本も95年に加入した人種差別撤廃条約では、「締約国は、人種差別を非難し、また、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する」と明記されています。
にもかかわらずヘイトスピーチに対する対策が不十分である日本政府に対して、人種差別撤廃委員会は懸念を示し、「移住者に対する社会的差別の根本的原因を解決する措置」をとるよう勧告しています。(2018年8月)
外国人の数は年々増加している日本。2012年におよそ203万人だった在留外国人の数は、2019年6月末時点で282万9,416人にまでなりました。
日本政府は2025年までにさらに50万人の外国人労働者を受け入れる方針を打ち出しています。
外国人の人たちが不当な差別を受けることなく、安心して暮らせるよう、彼らへの適切な保護や、あらゆる人種差別に対する包括的な法規制が求められています。
この問題に取り組んでいる団体
「世界からあらゆる差別と人種主義の撤廃」を目指している国際人権NGO。日本の部落解放同盟の呼びかけにより1988年に設立、1993年には日本に基盤を持つ人権NGOとしては初めて、国連との協議資格を取得し、国連への働きかけにも力を入れている。移住労働者や外国人だけでなく、被差別部落の人びとや、在日コリアンなどに対する差別の問題などに取り組んでいる。
基本的人権の擁護を目的とする公益財団法人で設立は1947年。表現の自由、知る権利や外国人の人権を中心に研究・提言をしているほか、人権訴訟の原告支援などの活動にも取り組んでいる。