【性犯罪厳罰化】110年ぶり刑法改正のポイントと、残る課題。

海外の事例アメリカでの性犯罪への対応。メーガン法。
ここまでは、今回の刑法改正のポイントを教えていただきました。
最後にもう一つお聞きしたいのは海外の事例です。
平山先生はアメリカに留学して、米国の刑事司法制度について学んだと聞いています。
アメリカでは性犯罪に対してどのような法律で対応しているのでしょうか。
アメリカにはメーガン法という、性犯罪前歴者の出所後の生活に厳しい規制を課す法律があります。
メーガン法のもと、州によっては性犯罪前歴者は再犯防止のために薬物去勢やホルモン治療をされ、出所後もGPSの装着を義務付けられて常に位置情報を監視されます。
また、性犯罪前歴者の情報はインターネットに公開され、引っ越しの際には周辺住民に告知がされたりもします。
とくにアメリカでは性犯罪者に対する処罰や取り締まりは本当に過激で、人権の観点から非常に問題のある対策がとられていることが多いのです。
メーガン法の成立のきっかけには、1994年にニュージャージー州で起きた少女誘拐・殺人事件があります。
過去に2回性犯罪歴のある男が起こした事件で、その後遺族が署名活動をして法制定に至ったのがメーガン法なのです。
当事者が声を上げ、形になったという意味では意義深いですが、再犯防止という点でこの法律に合理性があるかというと疑問です。
私の留学先だったカリフォルニア州では、出所した一定の元性犯罪者には居住地制限をかけていました。公園や幼稚園、子供の集まる場所から半径○○マイル以内はだめというように、一定距離以内には居住してはいけないんです。
すると地域住民としては性犯罪者を自分たちの身の回りには置きたくないと、近所の空き地を次々公園にしたりして、近隣に性犯罪者を住めないようにした。
そうやって性犯罪者を排除していった結果、公園や幼稚園を中心とした円がまんべんなく重なり合い、性犯罪者が住める隙間がどこにもなくなってしまう自体すら発生しています。
そして住む場所を失った大くの元性犯罪者はホームレスになっています。
アメリカでは出所後のカウンセリングや再発防止プログラムなどの支援を提供する民間団体が数多くありますが、元受刑者がホームレスになってしまうと連絡が取れず、関与できなくなってしまいます。
出所後の性犯罪者が地域社会から排除され、支援の手も届かず、社会復帰からどんどん遠ざかるという悪循環が起きるわけです。
私はメーガン法のような法制度には否定的ですが、今後日本でももしかしたらこのような過激な方向に舵を切るべきだという議論が出るかもしれません。
性犯罪者は刑務所からいつか出てくる。そのときに監視したり排除したりすることが正しいのか、それとも継続的な再犯防止プログラムの実施やその他のサポートの充実で社会復帰を支援するのか。私たちはこの刑法改正を機に考えなければならないと思います。