ボリさんぽ in 山谷|ホームレス支援をする義平真心さん
こんにちは、イラストレーターのBollyです。
チャリツモのある南千住の近くに、「山谷(さんや)」と呼ばれる地域があります。日本三大寄せ場のひとつとして、知る人ぞ知るドヤ街なんですが、みなさんは「寄せ場」とか「ドヤ街」って、ご存知ですか?
寄せ場というのは日雇い労働の求人業者と求職者が多数集まる場所のこと。そこに集う日雇い労働者の人たちがとまる安価な宿のことをドヤと呼び、そのドヤが立ち並ぶ街がドヤ街と呼ばれていました。
高度経済成長の頃には、こうしたドヤ街に住んでいた労働者の人たちが、高速道路や地下鉄などのインフラ建設のために汗を流し、ときには原子力発電所の建設などにも駆り出されたんだそうです。
ところがバブル崩壊で日本の経済成長が終わりを告げてからというもの、日雇い労働者の仕事は激減。山谷の街の住人も仕事にありつけず、ドヤに泊まるお金もなく、多くのひとが路上生活を余儀なくされてしまいました。なかには生活保護につながって生活できている人もいますし、頑なに生活保護を受けずに路上で生活し続ける人もいます。
この山谷地区、個人的には居心地が良くて大好きです。 私のおすすめは「さんやカフェ」というカフェ。ホテル寿陽の1階にあるカフェで、おいしい料理と、個性豊かなお客さんたちとの交流が楽しめるお店。今日はそんな「さんやカフェ」のオーナーで、山谷の路上生活者の支援活動もしている義平真心(よしひらまごころ)さんに、近況をうかがってきたので、皆さんにもおすそ分けしたいと思います。
プロフィール
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義平真心(よしひらまごころ)さん
山谷の魅力にとりつかれて早20年、現在一般社団法人 結YUIの代表理事として、「ホテル明月」「ホテルありあけ」「ホテル寿陽」と「さんやカフェ」を運営・経営する傍ら、山谷で多様性を活かしたまちづくりの事業活動を行っている自称“アウトロー”な人。
支援活動としては路上生活者(おっちゃんたち)へ住まいの支援、お仕事の支援の他、週一回の地域清掃やコロナ禍で野宿をしている方に“ごはん配り”のボランティア活動を行っているのです。
ライター紹介
普段はイラストレーターをしています。
チャリツモではチャーリーくんをはじめとしたイラストを担当。
猫と遊んでいる時が至福の時間。
http://nishiborimihoco.net/
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インタビュー
Bolly
真心さん、こんにちは。
ここ1年くらい世の中はコロナで大変な状況でしたが、路上生活者への支援活動はどんなかんじでしょう??
真心
それが…わたしたちの団体がやっている収益事業であるホテル経営がコロナの影響をうけてしまってだいぶひまになってしまいました。ホテルのお客様は8割が外国人観光客だったので、コロナの影響をもろに受けていますね。
時間ができた分こういう時にこそ支援活動に力を入れることにしました。
ただ、今まではホテル事業で得た収益から、山谷の路上生活者を支援するための資金を捻出していたので、支援活動の継続も厳しくなっています。
Bolly
なるほど。しんどい状況ですね。
コロナの流行が始まってから山谷はなにか変わりましたか?
真心
コロナで生活保護になったひとが多くなりました。コロナの不況はすごいです。
若い人がすごく増えたし、20代〜40代の方も仕事を失っていて、生活保護を受けるひとも多いです。
もともと山谷の路上生活者の中には、東京都からの仕事でなんとか日々食いつないでいる人たちも多かったんですが、その仕事がコロナの影響で減っています。今までは野宿をしながら、最低限の収入を得てなんとか食いつないでいた人も、都からの仕事がなくなったことで、生活保護を申請したりしています。
Bolly
それはとても大変ですね。
ちなみに、そういった路上生活者の苦しい状況はだれから聞いてるんですか?
真心
路上生活者のおっちゃんたちから直接聞きますよ。
昨年5月から「ごはん配り」、2018年4月から「清掃活動」を継続して行っているのでそこで信頼関係ができてきました。
地域清掃を始めた当初は威嚇されたり、「これ拾え」とかゴミバラまかれて嫌がらせされたり、大変だったんですが(笑)
ごはん配りもあり、今では和気あいあいとしたいい関係になってます(笑)
最初は全く話をしてくれもしなかった人たちが心を開いてくれるようになってきましたね!
Bolly
なるほど〜!地道な活動があっての信頼関係ですね!
Bolly
ちなみに今はどのような活動に重点を置いているんですか?
真心
「巡回看護」ですね。
Bolly
看護ですか。路上生活者の方は具合が悪くても自分で病院は行かないのですか?
真心
みんな色んなところで差別的な扱いを受けているので、すぐには病院にいきたがらないのですよ。
それに、医療扶助※を受けたいけれど、それには生保受給が前提なので、生活保護を受けていないという路上生活者はお金がかかるから病院に行けないという理由もあります。
Bolly
全員が生活保護は受けられないんですか?
真心
生活保護を申請したからと言って、安心した生活ができるわけではないんですよね。
あまり人道的に管理されてない施設※に入所させられることが多いのです。
施設の中でのわずらわしい人間関係や共同生活が苦手で避けたい等の理由で、多くの路上生活者は生活保護を受給するより野宿を選んでいます。家族への扶養照会の問題もあります。
Bolly
そうなんですか〜。生活保護を受ければそれでオッケーというわけではないんですね!
真心
もちろん生活保護を受けることを考えたことは皆一度はあるんですよ。
でも、生活保護を受けようと思って自分で行政に申請に行くと、そこでも差別的な扱いを受けるんです。
Bolly
それは悲しいですね。同じ人間なのに。行政に世話になりたくない!って思っちゃいますね。
真心
そうなんです。つまり、生活保護を受けないのでみんな救急搬送になるまでギリギリがまんしてしまうのです。
Bolly
なるほど〜。でもそれだと路上生活者の方の健康が心配ですね。
真心
野宿は体力勝負、健康であってこそ!なんですが…正直なところ、もう限界ギリギリで、「死ぬのを待っている」なんて言う方も数名います…
Bolly
それはつらすぎますね…。
巡回看護は具体的にどういった活動をするんですか?
真心
はい、巡回介護をすることによって、信頼関係をつくって医療を受ける気になってもらうことが目的です。
そして病院に行く前にお風呂に入ってもらって、キレイな服をきてもらうお世話をすることも行っています。
もちろん私たちも病院にも同行して、払えない場合は治療費も薬代もこちらが負担します。
Bolly
それは路上生活者にとってとてもありがたいですね!
真心
病院側が特に入院と判断するような場合は、MSW(医療系ソーシャルワーカー)が動いて、自治体福祉事務所に働きかけて生活保護を受給することになります。それによって医療扶助がでるようになります。
Bolly
それで退院したらその後はどうするんですか?
真心
その後は、大体の人が生活保護を受け取るのをやめて、また野宿に戻ろうとします。
なので居心地のよい場所をつくって迎え入れてあげたいところです…。
Bolly
そうですね。寒い冬とかほんとしんどいですよね…。
真心
はい、そのため台東区に路上生活者の為の居心地が良い宿泊所をつくらねば!と思っているのです。今後そういった「場所作り」にも注力していきたいと思ってます。
Bolly
安心して生活できる場所があれば最高ですね!
真心
他にも、彼らが地域で活躍する形の就労継続支援B型作業所をつくって、みんなが「地域で働ける場所」をつくりたいな、とか思ってます。
一般就労が難しくて生活保護になったおっちゃんたちは、やることがなくなってアルコールやパチンコに走りがちなんです。そういう人たちと一緒に、やりがいのある仕事場を作りたいなと思ってます。これぞ、ホントの地域生活支援!
Bolly
真心さんは「地域」をとっても大事にされてますね。さんやカフェもそうですが、地域の人々が混じり合ったり、一緒に活動できる場作りを大事にしているように思います。
真心
そうなんです。もちろんおっちゃんたち一人ひとりの生活が成り立つように支援することを大切にしながらも、それだけじゃなくてその人たちがともに暮らす地域をよりよくしていきたいんです。
「生活保護の受給」に繋がったらそれがゴールと思う人が多いのですが、むしろその先、その地域での生活をどうやって維持するかが課題です。一人ひとりが地域で活躍できる、社会参画に繋がるような取り組みをしないと。
Bolly
そうですよね。生活保護をもらっても、一人で寂しくて辛いって言う人もたくさんいますものね。楽しく働ける場所と仲間があったら最高ですね!
真心
おっちゃんたちは与えられるのを嫌がるから、おっちゃんたちが能動的に参加して「これは面白い!」と思える取り組みをつくりたいんですよね〜。
Bolly
やらされ仕事はだれだってつまらないですもんね。
真心
私の中の山谷のまちづくりのゴールは、山谷に関わる人がみんな、「オレは(私は)ここ(山谷)に住んでいるんだ!」と誇りをもっていえるようになることです。
Bolly
安心して楽しい暮らしができるまち、山谷!
真心
一般的にイメージのよくない山谷というまちを、隠してしまうんではなくて、時間はかかっても「山谷」に誇りを持てるよいまちにしていけたらな、と思っています。
Bolly
わたしはもう山谷がだいすきです(笑)
ありがとうございました〜!
マンガを
描いたよ
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あとがき
取材を終えて
その後、私も真心さんと看護師さんたちと一緒に大雨の中巡回看護に参加してきました!
最初の目的地の玉姫公園に行きましたが、さすが大雨の中でだれもいませんでした(そりゃそうですね)
寒さと雨の中、山谷の路上生活者が行く場所といえば、山谷のど真ん中にある通称センターと呼ばれる「城北労働福祉センター」です。
なんとも独特なたたずまい。
大雨のセンターの中は、大きな地下室に路上生活中の人や生活保護の人が集まっており、受付のところでは検温と消毒を行っていました。
雨の中閉め切ったセンターの地下はむわ〜んとした独特な空気で女性はひとりもいないおっちゃんたちだけの空間でした。
その中で普段から顔見知りの狭心症のおっちゃんがいたので、看護師さんがおっちゃんに様子を確認していました。
こういった地道な活動が山谷を住みやすいまちに変えていくのだろうなと感じたのでした
山谷といえば、たしかにあまりいいイメージはないかもしれません。でも、おっちゃんたちと話していると、ほとんどの方が話しやすくて気さくなおっちゃんだということに気づきます。
それぞれがいろんな事情を抱えて路上生活を送っているのです。
山谷は地域住民の暮らしと、路上生活者の暮らしが混じり合ってる独特な空気感がある地域です。そのため、まちづくりには山谷ならではのいろんな課題や問題もたくさんあります。地道に活動を続けて路上生活者たちと信頼関係を築くことが大事なのだと、真心さんは話してくれました。
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