【性犯罪厳罰化】110年ぶり刑法改正のポイントと、残る課題。

刑法改正のポイント2強姦罪の法定刑を引き上げ、厳罰化。
2つめは法定刑を変えたことです。
強姦罪の法定刑の下限は懲役3年でしたが、強制性交等罪の法定刑は下限が懲役5年に引き上げられ、厳罰化されました。(強姦致死傷罪の法定刑の下限は5年→6年に引き上げ)
強姦罪の法定刑については以前から議論がありました。
強盗の法定刑が「5年以上の懲役」なのに、なぜ強姦が3年以上なのかと。
どちらも暴行や脅迫を用いますが、強盗は人の財物を盗り、強姦は人の性的な自己決定権を奪う犯罪ですよね。どう考えても強姦の方が被害が深刻だと多くの人は感じるのではないでしょうか。
法律は社会のメッセージのひとつです。強盗と強姦を比べたとき、強姦のほうが刑が軽いというのは、やっぱり不均衡だったと思います。
ですから、今回強制性交等罪の法定刑を5年以上に引き上げたことは評価しています。
ただ、刑罰を長くすることのデメリットにも注意しなければいけません。
受刑者の人たちは、刑務所にいる時間が長ければ長いほど、社会に戻りにくくなります。
特に性犯罪者の場合、社会のサポートがない限り再犯につながりやすい。
刑を長くしたことを契機に、刑務所内での更生プログラムの充実だけでなく、出所後に、民間団体の再犯防止プログラムなどにつなげる「橋渡し」を作らないと、刑を長くすることによるデメリットの方が大きくなってしまいかねないのではと懸念しています。
現在、出所後に再犯防止プログラムを強制的に受けさせるシステムはあるのでしょうか。
仮釈放の場合の「保護観察」という期間がそれにあたります。
刑期の余りを残して仮出所すると、この「保護観察」という期間中、強制的にプログラムを受けることになります。
ただ、性犯罪は情状が悪いことも多く、満期で出る人が少なくありません。
満期の場合、出所後の元受刑者に対して国は何も出来ません。
自分でプログラムを探して行くことになりますが、お金もかかるし、性犯罪者ということを周りに知られたくないという理由から、受講のハードルは高いでしょう。
このように、一番問題の多い人ほど、満期で出所し、その後なんらサポートがないというのが、これまでの日本の刑事司法の大きな問題のひとつでした。
今回、刑期を長くしたことをきっかけに、刑務所と社会をどうつないで行くのかを考えなければなりません。
-
<改正点のまとめ>
- 強制性交等罪(旧・強姦罪)の法定刑の下限を3年→5年に引き上げ
-
<課題>
- 刑期が長くなるぶん、社会復帰は難しくなる。服役中だけでなく出所後にも再犯防止の講習を受講させるなど、刑務所と社会をつなぐ仕組みを作る必要がある。