私が“性的同意”を訴える理由/大学生に聞いてみた。“性的同意”のこと。【第1回/全3回】
昨今よく聞く「性的同意」というキーワード。
わかっている気になっているけれど、じっくり考えてみたことはあんまりない。そもそもこれが今注目される理由がイマイチわかっていない…なんて人も多いんじゃないでしょうか?
そんな性的同意というキーワードを一度ちゃんと考えてみたいな、と思っていたところ、性的同意に関する知識を広める活動をしている若者に出会いました。
今回は、座談会形式で彼女たちにお話を聞きます。(全3回)
プロフィール
-
市川 杏 創価大学3年生。「ジェンダーにとらわれず私が「私」を決める創価大学」というビジョンを掲げ活動する学生サークル「BeLive Soka(ビリーブ創価)」のメンバー。
大学側に働きかけ、新入生オリエンテーションの中で性的同意ワークショップを導入させたり、イベントを通じてジェンダーについて話したり考えたりする機会を作る活動している。
-
横井 桃子 上智大学4年生。ジェンダーについて考え、アクションする学生サークル「Speak Up Sophia(スピークアップソフィア)」代表。性的同意ハンドブックの配布や、SNSでの発信を通じてジェンダーや性的同意についての知識を広める活動をしている。また、性的同意に関するワークショップの義務化や、学内の実態調査の実施を大学側に求めたりしている。
-
蔵内 靖恵 上智大学3年生。横井さんと同じSpeak Up Sophiaのメンバー。
- 聞き手はふなかわです!
ほんぶんは
ここから!
私が“性的同意”を訴える理由
本日は足元の悪い中、こんな荒川区の端っこまで足を運んでいただき、ありがとうございます。
今日は創価大学と上智大学でジェンダーについての活動をされている3人に、昨今話題の「性的同意」について、ざっくばらんに語ってもらえたらと思っています。
それでは早速ですが、みなさんがこうした活動…フェミニズムと言ってよいのでしょうか?に関わろうと思ったきっかけについて教えていただけますか?
私はもともと大学に入った当初から性暴力、特に貧困国の性暴力に関心がありました。国際的な視点で「性」の問題を勉強していたんです。
もともとは市川さんにとって「性」の問題は途上国の問題だったんですね。今はBeLive Sokaで身近な問題としてジェンダーに関する発信をしていますが、「性」の問題を身近に感じるきっかけは何だったのでしょう?
ある時友達から「自分たちの居場所、この“日本”で起きている問題について活動しているサークルがあるから、一緒にワークショップに行ってみない?」と誘われて、BeLive Sokaに顔を出しました。そこで、サークルを立ち上げた先輩の話を聞き、性暴力が途上国だけの問題でなく、私たちの身近なところにあって、家族や友人なども被害に遭う可能性があることを知りました。
また、自分も実は被害の経験として思い当たるフシがあったことに初めて気づいて、「性暴力って、こんなに広い範囲のことを言うんだ」ってことと、性的同意の大事さを実感しました。
BeLive Sokaの「誰もが自分らしくいられる大学生活」っていうビジョンにも惹かれて参加しました。「自分らしい」っていうのがどういう姿なのかはまだ私も模索中ですが、一人ひとりが自分らしさを目指して行ける大学になってほしいなという想いで活動しています。
私は高校3年間アメリカに留学していて、日本に戻って上智大学に入学してから、なにか「モヤモヤ」していたところがありました。
どんなモヤモヤですか?
アメリカの高校時代には、自分が好きな服を着ていられたんですね。暑かったらタンクトップにショーパンみたいなラクな格好をしてたし、冬は女子力とか考えずに暖かい格好をしていました。
でも日本に帰ってきてからは、周りから「露出を気をつけなさい」ってすごく言われるようになって。友達からも「さすが帰国子女」みたいな感じで服装について色々言われたり…。なんで着たい服がきれないのかなって。
服装にまつわる窮屈さを訴える声は多いですよね。女性らしい服装を求められることもあれば、ちょっと露出が多いだけで性的に挑発しているように受け止められたりしますね。
そういう経験を通して、性に関する「モヤモヤ」は自分の中に溜まっていったんです。そのときにちょうど伊藤詩織さんが私が受けている授業のゲストスピーカーとして来てくれて、お話を聞かせて頂きました。彼女の話を聞いた時、「性的同意」っていう概念を知ったんですが、その瞬間にすごくエンパワーされたというか…今までのモヤモヤが晴れたんです。
性的な抑圧とか、性被害を受けても、自分のことを責めなくていいんだっていうこととか、自分のカラダは自分の物なんだという、当たり前のことに気付かされて勇気をもらいました。
その後、彼女が書いた本を読んで、この社会に対して“怒り”を感じました。伊藤さんは性暴力にあった結果、日本を出てロンドンに行かなければならなくなった。それって、日本が「難民」を出したっていうことだと思うんです。なんでそこまで性暴力の被害者が責められる社会なんだろうということにすごく怒りを感じて。
「エンパワメント」と「怒り」、この2つが私が今の活動を始めたきっかけだと思います。
伊藤詩織さんの事件や存在をとおして気づきやきっかけを得た人は多いんでしょうね。蔵内さんのきっかけはなんですか?
私、セクシャルマイノリティなんです。バイセクシャル。女性というよりも、バイセクシャルというアイデンティティのほうが強くて、まずはセクシャリティに関する勉強をしてました。クィア論※とか、セクシャルマイノリティの話から入って、ジェンダー論やフェミニズムという流れで勉強してきた感じです。
クイア(Queer)っていうと一部では何でもありみたいな部分もあって、もともと私もオープンなタイプだったんです。ただ、性に関するモヤモヤは、ずっとありました。
蔵内さんはいつ頃からSpeak Up Sophiaに参加しているんですか?
1年くらい前からです。
実はその頃、私飲みの席で同性の子に酔っ払った拍子にほっぺにチューしようとしちゃったんです。「やめてくださいよー(笑)」なんて感じでノリで終わったんですけど、後から「あれってセクハラやん」って気づいて三日三晩ぐらい悩み抜いたんです。
自分のセクハラに自分で気づけたんですね。
その頃はすでに、モモ(※横井さん)がやってるワークショップに参加してたんで、「自分がやったことが性的同意に反してる」って気づいて、「どうしよう?!」ってすごく焦りましたね。で、ジェンダーとか性的同意ってことを、もっとちゃんと学ばなきゃって思ってSpeak Up Sophiaに参加しました。
でも参加した当初は、「加害者である自分がそんな活動をしていていいのか?」って罪悪感もありました。ミーティングに出席してても、この中にも被害経験がある子がいるんだと思うと、いたたまれなくなって、「私は加害側なのに、ここにいてごめんなさい」なんて思ってました。
自分の加害に気づいてしまうと、罪悪感を感じずにはいられませんよね。でも、その後どうすればいいかわからなかったり。
そうなんですよね。例えば、「差別はいけないよ」っていうことは教えられてても、差別してしまった自分に気付いた時にどうすればいいかを誰も教えてくれてない。
自分でも悪いことをしてしまったと思ったときに、どうすればいいのかとか、罪は償えるのかとか考えちゃって…。
でもそんなときに、ハラスメントをなくそうって訴えている小島慶子さんが「私もハラスメントの加害者だった」という趣旨のことを言っているのをTwitterで知って、加害経験がある人こそ自分を見つめ直し、さらに被害者のために声を上げるべきだと思い直したんです。
「アナウンサー時代、私の同期は合計3人で、みんな仲の良い関係でした。私は当時、おっとりした性格の地方出身の同期の子に「◯◯出身だからおっとりしているよねぇ」と「いじって」いました。当時、私は「いじり」はおいしいもの、「いじられる=愛されている」って思っていたけれど、本人が「そう言われるのはすごく嫌だ」と打ち明けてくれたんです。あのとき、彼女が私の「いじり」に対して、直接嫌だと言ってくれたことにとても感謝しています。そのことによって、私は自分の「いじり」が嫌がらせやいじめ、今でいうハラスメントになっていたんだと知りました。」
自分を「赦す」ことから始めよう。小島慶子さんが語るハラスメントとさよならするために必要なこと。/朝渋
自分の加害性を認めて、正していくって、実は結構勇気のいることですもんね。特に、自分が「男らしさ/女らしさ」だと思ってやっていた行為に、実は加害性が潜んでいたときなんかは、自分が信じてきた「らしさ」のアイデンティティが危機に陥るわけで。それに向き合うにはある種の「強さ」が必要になるな、と思います。
そういう意味で、今振り返ってみると、もともと自分はすごく自己効力感※が低くて、自己尊重感も無いに等しいタイプの人間でした。
モモ(※横井さん)が言っていた「自分のカラダは自分のもの」という言葉を聞いても「私以外の人はそうだろうな」って思ってた。
でも、Speak Up Sophiaの活動をする中で少しずつ変わってきた。性被害に苦しんでいる方々に「あなたは悪くない」って声をかけ続けるうちに、その言葉が自分にも返ってきて、自分の尊厳を大切にできるようになってきたんです。
“性的同意”を広める活動をするなかで、自分の自己肯定感や自己尊重感が高まったというのは、興味深いですね。
あとがき
今回は座談会メンバーそれぞれの「活動の理由」をお聞きしました。続く2回目では、「性的同意」がそもそも何なのかを話します。
2回目はコチラ!この下も見てね!
\イベント情報/
3人が所属する「BeLive Soka(ビリーブ創価)」と「Speak Up Sophia(スピークアップソフィア)」が登壇するイベントのご紹介!デートDV防止にむけ毎年春に行われているフォーラムで、今年のテーマは「性的同意」。両団体の学生も登壇し、性的同意を広める活動についてお話します。
日時 | 2020年3月1日(日)10時~17時 |
---|---|
会場 | 港区立男女平等参画センター リーブラ(アクセスはこちら) |
参加費 | 4,000円(NPO法人デートDV防止全国ネットワークの正会員・賛助団体は2名まで3,000円)学生は無料 |
主催 | NPO法人デートDV防止全国ネットワーク |
内容 | ■午前の部(10:00~12:20)
■午後の部(13:20~17:00)
|
申込み | WEBサイトでご覧ください。 |