5年間の電話相談で見えてきたデートDVの実態 [後編]
デートDVに苦しむ人たちの相談窓口『デートDV110番』を運営する認定NPO法人エンパワメントかながわへのインタビュー特集。前編はデートDVの背景にある事情や、現在の啓発活動に関しての問題提起などを伺った。(前編はこちら)
後編はデートDV被害者の実態に迫る。5年間の相談内容を振り返って明らかになったのは、相談者の大部分が20〜50代のいわゆる“中堅世代”の女性に集中していることだった…。
20〜50代の中堅世代からの相談がほとんど
デートDV110に電話をかけてくるのはどのような人が多いのでしょう
デートDV110番を開設した6年前、私たちは10代の相談を想定して準備していました。
でも実際に電話をかけてきたのはほとんどが20代以上。特に20〜50代の中堅世代といわれる年代の女性が多かったのです。
なぜ10代よりも中堅世代のほうが相談件数が多かったのでしょうか
デートDV白書vol.4をまとめるにあたり、10代女性と30代女性のデートDVの被害状況の違いを分析したところ、世代によって周囲の支援体制に違いがあるということがわかりました。
10代の女性の多くは実家で暮らし学校に通っている。親や教師など気にかけてくれる大人が身近にいて、支援が受けやすい。
それに比べて30代の未婚女性の場合は「もう自立した大人だから」という理由で周囲も干渉しないようになります。心配してくれたり、気軽に相談できる人がいない。
そうした中堅世代の女性たちの孤立・孤独というのが、デートDVの背景にあることがわかりました。
デートDV白書に掲載されている相談事例を見ると、30代後半の方の例がかなり重い内容ですね。
そうですね。
相談内容から「別れられない理由」を分析したところ、中堅世代では「一度は結婚したい」や「一度は子どもを産みたい」という理由が多いことがわかりました。
別れたらもう次はない。そういう理由で我慢し続けてしまう人がいるんです。
親から言われる「結婚しろ」というセリフに追い詰められる女性もいます。
結婚・出産へのプレッシャーは大きいんですね。
年齢とともに卵子が老化するというような早期の妊娠を促すキャンペーンも、そうした女性たちにプレッシャーを与え、より一層デートDVの深みにはめてしまう危険性もあります。
最後に、今後の活動についてお聞かせください。
まずは「デートDV」という言葉を広めていくことが大切だと考えています。
恋人間の暴力というと、どうしても軽視される傾向にあります。「すぐに別れればよい」という声が強いのです。
現実には暴力を振るう恋人と、別れられない人たちがたくさんいることをまずは知ってほしい。
また、デートDVに対する支援制度も不十分で、デートDV110番のような相談窓口もまだまだ少ない。法整備も遅れていて、夫婦間のDVに適用される「DV防止法」は、恋人間のデートDVには適用されません。
「デートDV」という言葉を広く知ってもらい、その被害にあっている人々の存在に気づいてもらうことで現状を少しずつ変えていきたいと考えています。