大学生が見る日本の“性”/大学生に聞いてみた。“性的同意”のこと。【第3回/全3回】
「性的同意」をテーマに、座談会形式で大学生が語る連載もいよいよ最終回。メンバーそれぞれが性的同意を広める理由をたずねた初回、そもそも「性的同意ってなんなのか」を話し合った前回に引き続き、3回目となる今回は大学生が見る日本の“性”について語ります。
プロフィール
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市川 杏 創価大学3年生。「ジェンダーにとらわれず私が「私」を決める創価大学」というビジョンを掲げ活動する学生サークル「BeLive Soka(ビリーブ創価)」のメンバー。
大学側に働きかけ、新入生オリエンテーションの中で性的同意ワークショップを導入させたり、イベントを通じてジェンダーについて話したり考えたりする機会を作る活動している。
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横井 桃子 上智大学4年生。ジェンダーについて考え、アクションする学生サークル「Speak Up Sophia(スピークアップソフィア)」代表。性的同意ハンドブックの配布や、SNSでの発信を通じてジェンダーや性的同意についての知識を広める活動をしている。また、性的同意に関するワークショップの義務化や、学内の実態調査の実施を大学側に求めたりしている。
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蔵内 靖恵 上智大学3年生。横井さんと同じSpeak Up Sophiaのメンバー。
- 聞き手はふなかわです!
ほんぶんは
ここから!
大学生が見る日本の“性”
これまでの話の中で性的同意の大切さがとてもよくわかりました。同時に、そんな当たり前のことを、僕たちはなんで今頃話しているのかなとか、どうして今までないがしろにされて来たのかなというギモンも浮かびます。
日本は先進国でありながら、性的同意の尊重を始めとした“性”の問題に関してはかなり遅れていると思いますが、その背景に関して考えてみたいなと思います。
ぶっちゃけ、大学生のみなさんから見て、日本社会の中での“性”の扱い方についてどう感じていますか?
日本って、性に関しては変にオープンな面と、かたくなにクローズな面がごっちゃになってますよね。
たとえばアダルトコンテンツや性産業などはすごく盛ん。海外では日本のセックスショップ(アダルトグッズを扱うお店)ってすごい有名らしくて、私の友達でも日本に来たときは秋葉原のアダルトグッズのお店に行くっていう外国人も多いです。ついこの間まではコンビニにエロ本が置いてあったりとか、簡単に目につくところにアダルトコンテンツがあります。
その一方で、子どもや若い世代に対しては全くと言っていいほど性教育がされていない。私もセックスっていう言葉を聞いたのは12歳のときで、それまで赤ちゃんは鳥が運んでくるものだと思ってました(笑)
最近はファッション誌なんかでも性に関しての特集をするようになりましたけど、「男子に聞いてみた。 これやられると嬉しい」みたいな男性優位な価値観にまみれてるなと思います。異性愛主義だし。
なんか「女性は男性の性欲を満たさなきゃいけない」っていうふうに学ばされている気はします。
大人は「お金」の話と「性」の話は隠す。公式の場ではそんな話しないっていう空気がありますよね。でも、若者文化は「性こそすべて」だったりするわけじゃん。
今の若者はAVを教科書にしちゃうなんて話もありますね。昔からそうだったんだろうけど、ネットが普及した今はアダルトコンテンツにいくらでも触れられるしSNSで知らない人と簡単に繋がれるから、昔と比べたら危険性は桁違いですよね。
性別二元論的に言うと、女の場合性にオープンで無いことが評価されることがありますよね。“処女崇拝”みたいなものもあるし。
それに対して男性のホモソーシャル的な文化では逆の形でやっぱり性は崇拝されていると感じます。男性のホモソーシャルの中では童貞がイジられますよね。「こいつまだ童貞なんだよ」とかって平気で言って傷つけちゃう。根底には、性経験がある男のほうが偉い、女を手に入れた男が偉いっていう意識がありますよね。
この男女の非対称性はとても興味深い。「童貞捨てました」とは言えるけど、「処女捨てました」とはなかなか言いにくいですもん。でも、どちらも性の崇拝はあるんだけれど、しかしフォーマルな大人はそんな話はしない、みたいな矛盾がすごい。
アメリカ留学に行って感じたのは、やっぱり性に関してオープンだなって。一番最初に驚いたのは、女の子の友達が男友達に「私、今日生理なの」って話しをしていたこと。「生理って恥ずかしいことじゃないのか!」って驚きました。
アメリカでは、「セックス」という言葉をよく聞きましたが、日本では「やる」など遠回しの表現をよく聞く気がします。
そうやってもともと性に関してオープンに話すことが難しい文化の中で、どうやったら性的同意を広められるのかっていうのは私たちの課題ですね。
中学・高校でちゃんとした性教育は受けていなかったんですか?
性教育はほとんど受けていません。保健の授業で男女分かれて女性にだけ生理の話や避妊の話がされたんですが、ボヤっとしたキーワードで終わってしまっていました。「そうなんだー」くらいにしか思えない。
でも一方で読んでいた少女マンガでは、男性が無理やり迫ってくるのがカッコよく描かれていたり、女性がそれに従うのが自然であるかのような描写がされていたりしました。
そういう偏った知識をどんどん取り込んじゃう一方で自分を守るための知識はない。そのジレンマを感じるから本当に性教育は重要だと思いますね。
ちょっと前に「壁ドン」ってあったじゃないですか。あれってかなり危険なムーブメントなんじゃないかと個人的には感じていました。
性的同意、守れてないよね(笑)
私たちが高校生の時だよね、「壁ドン」が流行ったの。でもそのときは現実でそういう経験をするって考えずに、ドラマとか漫画の世界で、かっこいい俳優さんやキャラクターがやるから「キャー!(嬉)」とか言ってた。実際されたら怖いだろうなって思う。
間違ってたり危険なことって他にもたくさん広まってますよね。例えばAVでよく見る「中出し」、なんなんですかあれ?中出しが気持ちいいとか嘘だからやめとけ!みたいな感じじゃないですか。
生でやるのがいいっていうのもどうなんですか?世の中にはいいコンドームあるから!って思いますが、男性目線から見ていかがです?
妊娠を目的としたセックスじゃない限り…超危険だし、同意がない場合は暴力だと思います。でも現状はその暴力性に気付くための知識や情報は圧倒的に足りないですよね。チャリツモでも性の間違った認識を正すための記事を出して行かなきゃいけませんし、いいコンドームも紹介したいと思います。
【おしらせ】デートDV防止スプリング・フォーラム2020で登壇します!
というわけで、今日は長い時間“性的同意”というキーワードでお話をしていただき、私自身とても勉強になりました。本当にありがとうございました。
最後は間違った情報が溢れ、反面正しい情報や知識は欠如しているという僕たちの社会の実像が見えてきました。特に大学生の方々は知識や経験のないままに、性の問題に直面する世代だと思うので、当事者である皆さんが同世代の人たちや、ちょっと後輩の方々に対して性について語る機会を作ったり、正しい知識を広める活動をしていることは、とても有意義だと思います。
最後に本日お話をしていただいた3人が所属するBeLive Soka(ビリーブ創価)とSpeak Up Sophia(スピークアップソフィア)の両団体が参加するイベントのご紹介をしたいなと思います。
3月1日、港区立男女平等参画センター「リーブラ」で行われる「デートDV防止スプリング・フォーラム2020」。
このイベントはデートDV(恋人間のDV)防止を目的に活動するNPO法人デートDV防止全国ネットワークが毎年春に開催しているフォーラムで、今年のテーマは「性的同意」です。
BeLive SokaとSpeak Up Sophiaは午前の部「性的同意を大学の文化に〜学生からの提言〜」というシンポジウムに登壇されます。皆さんがこれまでにされてきた活動をもとにまとめた提言を発表されるとのことで、とても楽しみです。
団体を代表して、市川さんと横井さんから、イベントに向けた意気込みをお聞かせください。
私たちBeLive Sokaは、「ジェンダーにとらわれず、私が『私』を決める創価大学」をビジョンに掲げて活動してきました。シンポジウムでは、性に関する話題がタブー視されている世の中で、どのようにこの活動を広めてきたかということをお話したいと思っております。ぜひ、お越しください。
Speak Up Sophia共同代表の横井桃子です。私は性的同意の概念を知ってすごくエンパワーされました。私たちの活動の大切さだったり難しさなどをフォーラムでシェアできたらいいなと思ってます。是非来てください。
本日は素敵なお話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました。イベント頑張ってください!
この下も見てね!
\イベント情報/
日時 | 2020年3月1日(日)10時~17時 |
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会場 | 港区立男女平等参画センター リーブラ(アクセスはこちら) |
参加費 | 4,000円(NPO法人デートDV防止全国ネットワークの正会員・賛助団体は2名まで3,000円)学生は無料 |
主催 | NPO法人デートDV防止全国ネットワーク |
内容 | ■午前の部(10:00~12:20)
■午後の部(13:20~17:00)
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申込み | WEBサイトでご覧ください。 |