解説!電車の中のカレはなんで独り言を言うの? 〜自閉症スペクトラム障害(ASD)編〜
解説!電車の中のカレはなんで独り言を言うの?〜自閉症スペクトラム障害(ASD)編〜
「電車の中でブツブツ話してるアノ子、ちょっとコワっ、隣に座るのヤメトコ。」
こんなこと経験ありませんか?
以前、こちらの記事でもご紹介しましたが、実は独り言が心の病気によって出てくることがあります。
今回はその中でも、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)をピックアップして解説しちゃいます。
なぜASDのある人は独り言を言うのか?
声を出すことで自分を落ち着かせてるんです。
好きな言葉を思わず声に出して繰り返してしまうんです。
反射のように言葉が出てくることがあるんです。
自閉症スペクトラム障害(ASD)って何?自閉症と何が違うの?
生まれた時から「人付き合いのやり方」「想像力の広げ方」「コミュニケーションのやり方」がかたよっている状態のことを自閉症スペクトラム障害、Autism spectrum disorder(ASD)と呼びます。
過去には重症度の順に自閉症、アスペルガー障害、広汎性発達障害などと分類されていましたが、現代では、明確な区別ができないことが分かったために、「状態が連続している」と捉えようゼ!という考えのもと「自閉症スペクトラム(連続体)」と呼ばれるようになりました。
ASDと近い関係にあるものに、書字や計算など特定の行為だけが苦手な「限局性学習障害」、一つのことに集中したり落ち着いていることが苦手な「注意欠如・多動性障害(ADHD)」などがあります。
日本の厚生労働省では、上記のASD、限局性学習障害、ADHDを全部合わせて「発達障害」と呼んでいます。
ASDの特徴は?3つあります。
-
(1)人間関係は苦手だよ
ひとりでいるのが好きだったり
好意が一方的だったり
気を遣うのが苦手だったり… -
(2)コミュニケーションのとり方が独特なのさ
言葉の使い方に強いこだわりがあったり
立ち話する距離が近かったり
視線が合わなかったり、合わせすぎたり… -
(3)興味のかたより、こだわり、パターン的行動があるよ
特定のモノやコトに強い興味をもったり
同じ手順を繰り返したり
予定通りじゃないとパニックになったり…
あとは、興味をもったコトに対しての知識はハンパない!
など
どの特徴を強く持っているか、それがどのような形で表れるかには、とても大きな個人差があります。
ポジティブな方向にいけば、「自分のペースで、ブレずに、コツコツがんばり続けるられる人」といった印象です。けれど、理解のない環境に置かれてしまうと、日常生活に様々な難しさがでてきます。
ASDの原因は?
遺伝子や胎内環境(両親の年齢や、妊娠中の感染症など)によって決まる部分が大きいと考えられています。
どのくらいいるの?
おおよそ50人に1人の割合で診断基準に合致する人がいます。男性に約3倍多いことが知られています。
なお、「コミュニケーションが取りにくい」ということで病院に行くかどうかは本人や周りの人たちの考え方次第のため、実際に医師の診断を受けた人数は地域や時代ごとに大きく変ります。
【最後に、ひとこと】
わたしの住む最寄り駅には、毎日駅のアナウンスを口ずさんでいる男の子がいます。
「発車オーライ!」とか、「次は〜」とか・・・。電車のアナウンスって妙に心地良いというか、癖になる音じゃないですか?
「好きな言葉を思わず声に出す」っていうASDの特徴からすると、駅で聞こえる音って、もしかしたら彼らにとってはクラシック音楽みたいに心地いい音だったりするのかも。
独り言を言う理由を知ると、
なんだか、見方が変わりませんかい?
医療監修
川崎市立多摩病院 神経精神科阿部大樹 先生