“性的同意”って、なんなんだろう?/大学生に聞いてみた。“性的同意”のこと。【第2回/全3回】
「性的同意」をテーマに、座談会形式で大学生が語る連載の2回目。初回となる前回は、座談会メンバーそれぞれの活動の理由を伺いました。今回は、そもそも「性的同意」ってなんなのかについて話し合います。
プロフィール
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市川 杏 創価大学3年生。「ジェンダーにとらわれず私が「私」を決める創価大学」というビジョンを掲げ活動する学生サークル「BeLive Soka(ビリーブ創価)」のメンバー。
大学側に働きかけ、新入生オリエンテーションの中で性的同意ワークショップを導入させたり、イベントを通じてジェンダーについて話したり考えたりする機会を作る活動している。
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横井 桃子 上智大学4年生。ジェンダーについて考え、アクションする学生サークル「Speak Up Sophia(スピークアップソフィア)」代表。性的同意ハンドブックの配布や、SNSでの発信を通じてジェンダーや性的同意についての知識を広める活動をしている。また、性的同意に関するワークショップの義務化や、学内の実態調査の実施を大学側に求めたりしている。
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蔵内 靖恵 上智大学3年生。横井さんと同じSpeak Up Sophiaのメンバー。
- 聞き手はふなかわです!
ほんぶんは
ここから!
“性的同意”って、なんだろう?
ちょっとここで、“性的同意”ってなんなのか?っていうそもそも論を話したいと思います。みんな、なんとなくわかってるつもりでいるけど、ちゃんと考えたことのある人って少ないような気がします。
っていうか“性的同意”って言葉自体、難しくないですか?皆さんは普段、“性的同意”についてどんなふうに説明してるんですか?
私はこんなたとえを出して説明しています。
今ここにいる4人で「ご飯に行こう」ってなるとします。お店選びになった時、私が「中華の気分じゃない」って言ったら中華屋さんには行きませんよね?お互いを尊重して、4人みんなが食べたいものを食べられるお店を選ぼうとするじゃないですか。
そんなふうに、人とのコミュニケーションの中で私たちは当たり前に「同意」をとってるはず。でもそれが性的なものにだけ、尊重されていないよね?って。
性的なことに関しては「雰囲気」や「空気」を読めばそれでよくて、いちいち相手が何を考えているのか確かめたりしないかもしれません。
僕も若い頃は、「〇〇したらOK」的な都市伝説をよく聞かされたりしました。誘った女が家について来たらOKとか、終電後に2人きりでカラオケに誘ってついてきたらヤレる、みたいな。
性被害の事件のときに「意識を失うほどお酒を飲んだ人が性暴力の被害者ぶるのはおかしい」なんてことをいう人たちも、やはり性的同意を根本的に理解してないんでしょうね。
最近私が関係を持っている人はめっちゃ同意を取るんです。毎回毎回確認してくれる。そこで思うのは「今までこんなに同意取る人いなかったなー」ってこと。
この「同意をきちんと取り合える関係」を1回経験すると、価値観変わるんですよ。「別に同意を取ることでムード壊れるなんてないじゃん」って気付く。
逆に同意のロールモデルがないと、実感がわかない。「同意取るなんて難しいじゃん」で終わっちゃったりする。
つい先日、スウェーデンの性犯罪に関する法律の専門家を大学に招いて、性的同意に関するセミナーを開催しました。
スウェーデンは性的同意をとても大切にしていて、明確な性的同意のない性行為を違法としている国ですが、そこの専門家が言っていたのは「Yes means yes!」、たとえ「No」と口にしていなかったとしても、明確にYesと言わない限りは同意しているとはみなされないということです。
日本だと必死に抵抗していたかどうかが犯罪の要件になりますよね。それに対してスウェーデンでは明確な同意がない性行為はすべて犯罪に問われる可能性がある。性的同意に対する認識がだいぶ違いますね。
ただ、そこでちょっと心配なのは、1度同意を取れば、言質を取ったからそれで良いだろうっていう考えにならないかなってことです。あとは本当に心からYesと思っていったYesではない場合もありますよね。相手との関係性の中で断れずに言われたYesなど。
先程のセミナーの質疑応答の時間に「どうやって同意をとればいいのか」ということに焦点を当てた質問がありました。「契約書を書けばいいのか?」とか「Yesと言っているところを動画で撮ればいいのか?」とか。
そういう話をしていると、「結局、性的同意って概念自体、完全じゃないじゃん」ってよく言われるんです。でも、完全じゃないのは当たり前。性的同意という概念自体、別に完全を目指すためのものじゃなくて、少しでも被害を減らすための概念なんですから。
ただ、同意を取る上で大切だとされているポイントはあって、私たちが訴えているのは3点です。
1つ目は「非強制性」。脅迫など、拒んだことで危険がおよぶ状況で引き出したYesは同意にはなりませんよっていうこと。
2つ目は「対等性」。社会的地位や力関係に左右されず、対当な関係性の中での同意でないといけませんよということ。
3つ目は「非継続性」。1度Yesと言ったからといって、次もOKかといったらそうではないし、性行為の最初でYesと言ったとしても、途中で気が変わることもあるということです。
最初にYesと言っても、途中でやっぱり無理だなと思ったらNoって言っていい。それを言える関係がないとやっぱり同意は取れないですよね。
お互い相手の同意を取るときに、非強制性・対当性・非継続性の3点を意識することは大切です。でもこれは同意をする側(取られる側)が知っておくことも大切なことなんです。
被害者が後から振り返って「あのときYesって言っちゃった私が悪かったのかもしれない」って思って自分を責めちゃうときに、この知識があれば「でもあの時は言わされていたんだから、私は悪くなかったんだ」って思える。
そういう意味で加害者を減らすだけでなく、たとえ悲しいことが起こってしまっても、その後の被害者に影響をもたらしうるのが性的同意の理解だと思います。
私も知識を持っていることが双方にとって大切だなと思ってます。自分が尊重されてない性行為などに遭っても「大学生ってこんな感じなのかな?」っていうふわっとした思い込みで流されてしまう同年代の友達は多いですから。
性的同意の知識を持ってもらうことで、みんなが「断っていいんだ」と思えたり、傷ついた上に自分を責めたりせずにいられる環境を作ることができるし、自分の大切な人も守れるのかなって。
あとがき
コミュニケーションの中で当たり前に交わされる同意。性に関してもきちんと意識することで性暴力を未然に防ぐ。そして被害者が後から自分を責めずに自分を大切にすることができる。今回は、性的同意の意味について広くお話していただけました。次回は座談会記事の最終回、「大学生が見る日本の“性”」というタイトルで、日本社会の中で性がどう扱われているかを大学生目線で語ります。
最終回はコチラ!この下も見てね!
\イベント情報/
3人が所属する「BeLive Soka(ビリーブ創価)」と「Speak Up Sophia(スピークアップソフィア)」が登壇するイベントのご紹介!デートDV防止にむけ毎年春に行われているフォーラムで、今年のテーマは「性的同意」。両団体の学生も登壇し、性的同意を広める活動についてお話します。
日時 | 2020年3月1日(日)10時~17時 |
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会場 | 港区立男女平等参画センター リーブラ(アクセスはこちら) |
参加費 | 4,000円(NPO法人デートDV防止全国ネットワークの正会員・賛助団体は2名まで3,000円)学生は無料 |
主催 | NPO法人デートDV防止全国ネットワーク |
内容 | ■午前の部(10:00~12:20)
■午後の部(13:20~17:00)
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申込み | WEBサイトでご覧ください。 |