産婦人科医の推定在院時間は288時間

出産を希望する地域に子どもを産める病院がなかったり、予約がいっぱいで受け付けてもらえない「出産難民」の妊婦さんが増えています。
病院で受け入れてもらえなかった場合、自宅や車の中で出産せざるを得なかったり、最悪の場合赤ちゃんが亡くなってしまう深刻な問題です。
おもな原因は、産婦人科医の不足です。
産婦人科は他の科にくらべて訴訟リスクが高かったり、宿直回数が多く、過酷な労働環境のため“なり手”が少ないと言われています。
産科医の労働環境に関して、日本産婦人科医会が2018年に行った調査によると、産婦人科の勤務医のひと月の推定在院時間(当直中の睡眠時間を含む)は過労死の基準を越える約288時間でした。
一般的に、過労死の基準となる労働時間は、月約240時間といわれています。(勤務日数20日とした場合)
労働基準法で定める週の労働時間は原則40時間で、それに加えて月80時間の時間外労働が常態化していると「過労死」とみなされるのです。
最近では医師不足から「産婦人科」や「産科」の名前が付く病院や診療所でも、分娩(出産のこと)を扱わない施設が増えています。2014年時点で「産婦人科」や「産科」の看板を掲げる施設のうち、およそ半数で分娩を取扱っていません。
分娩を取り扱う施設の数は、2006年には3,098件ありましたが、2017年には2,404件まで減りました。
こうした状況から、分娩を扱う数少ない病院では、産婦人科医不足のしわ寄せがきており、労働環境が更に劣悪になってしまう悪循環が生まれています。
質の高い周産期医療の提供による、安全な出産環境を守るためには、産婦人科医のQOLを向上するための抜本的な施策が求められています。