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2017.12.19.Tue / update:2024.01.11

老朽化した水道管の長さ、地球3.8周分

老朽化した水道管の長さ、地球3.8周分

日本人は「水と安全はタダだと思っている」となんて言われるくらい、日本の水道インフラは充実しています。
2021年時点で日本の水道普及率はなんと98.2%。総延長約74万km(地球18周分以上)にもおよぶ水道網がはりめぐらされており、国内のほとんどすべての家で、水道の蛇口をひねればきれいな水が吹き出します。

しかしその光景もこれからは変化してくるのかもしれません。なぜなら、2020年時点で、水道管全体のおよそ21%、15.2万km以上(およそ地球3.8週分)の水道管が、法定耐用年数の40年を超えて老朽化していると言われているからです。
法定耐用年数とは「これくらいの期間は問題なく使えます」と定められた期間で、寿命の目安とされています。
都道府県ごと法定耐用年数を超えた管の割合(経年化率)を見てみると、大阪府34%、神奈川県と香川県が28.1%などは3分の1近くが古い管。経年化率が低い岐阜県でも13%ありますから、1955年~1973年の高度成長期に敷設された水道管が全国的に更新時期を迎えていることがわかります。(2020年度)

老朽化した水道管は、取り替えなければいけません。古い管は中が赤錆でビッシリだったり、破裂や漏水の恐れがあるのです。
でも地球3.8周分の水道管を取り替える工事は、とても大変。莫大なお金がかかります。1kmの水道管を交換するのにかかる費用は1億円とも言われているのです。(現在の1.5万kmをすべて更新するのにかかる金額は…15兆円以上!)
現在も水道管の取り替え工事を全国で行っていますが、水道管更新率は2019年の0.7%。2001年の更新率は、1.5%だったのですが、そこから年々減少しています。時間が経てば経つほど、新たに老朽化した水道管が増えていくにもかかわらず、更新が追いついていないのです。

これまで水道事業を担ってきた全国の各自治体の多くが、財政難から取替え工事を進められずにいます。
そんな中、水道事業の運営権を民間企業に売却する「水道民営化」が可能になる改正水道法が国会で成立しました。運営の厳しい水道事業を、民間企業にまかせることで経営を効率化して財政赤字を減らしたいという目的があります。
しかし、生活のために大切な水道インフラを水メジャーと言われる海外の企業に売り渡してしまうことは安全保障上の問題があったり、民営化によって水道料金が大幅に値上げされる可能性があるとして、水道民営化に反対する声もあります。

インフラ更新の問題は水道だけではありません。水道と同じく地面の下に埋まる下水管は、更新時期を迎えた管が約48万km(地球12周分!)もあるのです。他にも橋は全国に約73万橋、トンネルは約1万1千本が耐用年数をオーバーしていて、日本は古いインフラが至るところにあるのです。
先人たちもよくぞこんなにインフラを整えてくれたなと感謝しつつも、この更新をどうするのかという課題は次世代の私たちの重い課題です。

過去の数字は?

地球の周りを2周するボロボロの水道管
水道管全体のおよそ13.6%、8.2万km以上(およそ地球2週分)もの水道管が、法定耐用年数の40年を超えて老朽化していると言われています。(2015年時点) 法定耐用年数とは「これくらいの期間は問題なく使えます」と定められた期間で、寿命の目安とされています。 都道府県ごとに見ると、大阪府28.3%、神奈川県21.7%なのに対して、秋田県5.6%、沖縄県6.0%と、水道敷設のタイミングや更新状況と関連して地域ごとに大きな差があるのがわかります。
『平成29年度 現在給水人口と水道普及率』/厚生労働省 『新水道ビジョンの推進について』/厚生労働省

この問題に取り組んでいる団体

過疎化や高齢化が進む中でも、地域の住民や自治体が身近な水資源を生かし、より安心で豊かな生活を実現していくため設立された。技術者や市民が、技術紹介や協力を通して、地域社会が直面する水供給に関わる問題の解決に貢献している。

水ジャーナリスト・橋本淳司氏が代表を務める「水」に関する総合メディア。水道だけでなく、水に関する幅広い情報を紹介している。

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"多様性"や人々を分ける"境界"が関心事のキーワード。
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