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2017.12.19.Tue / update:2023.12.08

戸籍を持たない「無戸籍者」。把握できているのは3,235人

制服を来た子どもたちが楽しそうに下校しているのをよそ目に、普段着の男の子が片隅でうずくまっている絵。隅に「3,235人」と書かれている

日本では赤ちゃんが生まれたら役所へ出生届を提出し「戸籍」が作られます。
しかし、なんらかの事情でこの出生届が提出されず、戸籍がないまま生きる「無戸籍」の人たちもいます。
戸籍がないと、学校に通えない、健康保険証がなく病院にかかれない、身分証明書を作れず就職できない、住民票がないので入居審査に通らず住居を借りられない、選挙権がない、結婚できない…などたくさんの不利益を被ります。
法務省は2014年7月から無戸籍者に関する調査を開始。2020年9月時点で3,235人の無戸籍者を把握することができました。

是枝裕和監督の2004年の映画「誰も知らない」は無戸籍の子どもたちを描いた作品です。
母子家庭の母親が、ある日突然帰らなくなり、残された4人の兄弟たちは子どもだけでの生活を余儀なくされます。無戸籍ゆえに行政にも存在を把握されておらず、学校や児童相談所などの支援の手も差し伸べられることはなく、子どもたちの暮らしが崩壊していくストーリーです。
この映画は「巣鴨子供置き去り事件」という1988年に実際に起きた事件を題材にしたものです。

無戸籍になる理由はさまざまですが、その一つが民法772条の存在です。
「嫡出(ちゃくしゅつ)推定」について定められたこの条文では、「離婚後300日以内に生まれた子どもは、前の夫との子と推定する」と書かれています。明治時代に作られた民法をそのまま引き継いだものですが、その目的は、離婚後に生まれた子どもの親子関係(扶養義務を負う父親)を早く確定させ、養育環境を整えるなどして「子の利益」を守ることにあります。
しかし、DNA鑑定なども可能となった現代において、この民法772条は、本来の目的とは逆の働きをしてしまっているといわれています。
DV(家庭内暴力)などの理由で離婚した場合、前の夫に現在の場所を知られたくない、といった事情がある場合、出生届を出さないケースがあったり、新しいパートナーとの間の子どもにも関わらず、元夫の子どもだと推定されてしまうことを恐れて出生を届けられないケースが後をたたないのです。
こうした問題が指摘されていた民法772条は、2022年に見直され、再婚後に生まれた子どもは現夫の子とする改正民法が成立しました。2024年夏までに施行される予定です。

かつては正当の目的をもって整備された法律や制度も、時代とともにその弊害が大きくなることがあります。今の時代に見合ったものになっているか、本来の目的を果たせているのかを、常にチェックしながら、必要があれば改善していきたいですね。

過去の数字は?

制服を来た子どもたちが楽しそうに下校しているのをよそ目に、普段着の男の子が片隅でうずくまっている
法務省は2014年7月から無戸籍者に関する調査を開始。2018年10月の段階で1994人の無戸籍者を把握することができました。うち半数以上が新たに戸籍を取得することができました。 2019年6月時点で法務省が把握している無戸籍者は830人となっています。 しかし、現在行政が把握できている無戸籍者は全体のほんの一握り。 実際は、“すくなくとも” 国内に1万人以上の無戸籍者がいるとも言われています。

この問題に取り組んでいる団体

自治体への相談窓口を紹介しています。

弁護士会の相談窓口一覧を紹介しています。

元衆議院議員、ジャーナリストの井戸まさえ氏が代表を務める非営利団体。井戸氏自らの経験として、離婚後300日未満に生まれた息子が無戸籍となったことから、問題の解決に尽力している。

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船川 諒
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