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2018.05.09.Wed / update:2022.07.26

障害者雇用ゼロ企業、全体の約3割

障害者雇用ゼロ企業の割合

日本には、障害者の安定的な雇用を守るために「障害者雇用促進法」という法律があります。1960年に制定された、60年もの歴史を持つ法律です。

「障害者雇用促進法」のなかには、企業の事業主や国・地方自治体といった行政機関を対象に、一定割合以上の障害者を雇用しなければならないとする「雇用義務制度」という仕組みがあります。
2020年現在、一般企業の場合、常時雇用の従業員が1人以上いれば雇用義務の対象となり、法定雇用率は2.2%。労働者45.5人につき1人の割合で雇用しなければいけないとされています。
この法定雇用率(=障害者雇用率)は少なくとも5年に1度は見直されることになっていて、2018年4月には、それまでの2.0%から0.2%引き上げられました。さらに2021年の4月までに、2.3%に引き上げられる予定です。
対象となる「障害者」の範囲も少しずつひろがっていて、2018年の法改正では、これまで対象だった「身体障害者」と「知的障害者」に加え、発達障害を含む精神障害者も対象となりました。

障害者の社会進出と経済的自立を支えるために、事業主にも参加と責任を求めてきた「障害者雇用促進法」。しかし、実際には多くの企業がこのルールを守れていません。
2018年6月時点、全国の対象企業10万586社のうち、法定雇用率を達成できた企業の割合は45.9%半分以上の企業が法定雇用率を達成できていません。さらに、全体の31.3%にあたる3万1,439社が障害者を1人も雇っていない、いわゆる「障害者雇用ゼロ企業」だったのです。
(参考:平成30年障害者雇用状況の集計結果/厚生労働省

「雇用義務制度」をきちんと守れていない企業に対しては、行政指導が行われたり、「障害者雇用納付金」という名目でお金を徴収されたりというペナルティがあります。
それでも、大半の企業が障害者雇用の義務をきちんと果たせていないのです。

その背景には、さまざまな制度的欠陥が指摘されています。
例えば、障害者雇用促進法は週30時間以上働く障害者を「1人」、週20〜30時間の人を「0.5人」とカウントします。そのため、20時間未満の短時間労働の場合は、何人雇ったとしても障害者雇用にカウントされずにゼロ企業とみなされてしまうのです。
あるいは、上述した「障害者雇用納付金」は、雇用義務未達の企業から徴収したお金を、達成した企業に助成金として配布する仕組みで、始めは障害者雇用を進めることへの動機づけとして機能させる予定でしたが、今では経営的に厳しく障害者雇用に踏み出せない中小企業から、経営的に余裕がある大企業にお金がわたる仕組みになってしまっていて、本来であれば障害者雇用促進をサポートするべき中小企業にとっては経営をますます苦しめる足かせでしかなくなってしまっているのです。

また、法定雇用率がただのノルマと化し、「障害者雇用促進法」の基盤となるべき障害者が社会で働くことの意義の共有が、形骸化してしまっているのではないでしょうか。
その象徴的な出来事が、2018年の行政機関での障害者雇用の“水増し”問題です。中央省庁や地方自治体で障害者雇用数を水増ししていた事実が発覚し、大きな問題となったのです。
厚生労働省の発表によると、2018年6月時点で中央省庁の実際の障害者雇用率は1.22%しかありませんでした。障害者雇用の不足人数は3902.5人にもおよびます。
もともと、国や地方公共団体などは、障害者雇用の促進を促す立場であることから、法定雇用率は一般企業よりも高い2.5%とされています。
企業のお手本となり、障害者雇用を推進していく立場の行政機関が、安易に「水増し」してノルマを達成しようとしていたということは残念なことです。

どうしてこのようなことが起きてしまったのでしょう?
行政機関に課された2.5%という法定雇用率は高すぎる目標だったのでしょうか?フランスの法定雇用率は、一般企業だとしても6%。ドイツは5%ですので、決して常識はずれな数字ではないはずです。

2019年7月には、日本で初めて、重度障害者の国会議員が2人誕生しました。
果たして、日本は今後、インクルーシブな社会に向けて、変わることができるのでしょうか?

過去の数字は?

障害者雇用ゼロ企業の割合
2017年6月時点で、全国の従業員50人以上の会社9万1024社のうち、29.3%の2万6,692社が、障害者を1人も雇っていませんでした。

この問題に取り組んでいる団体

株式会社リタリコのサービスのひとつで、障害がある人の就労支援から、企業や職場への働きかけまで行っている。

障害者雇用を通して、明るい未来を創ることをミッションとしており、重度障害者の在宅勤務をシステム面からサポートしている。沖ワークウェルの社員も、障害のある方や在宅勤務の方が多い。

障害者雇用に関するセミナーや相談事業、研修などを行っている。

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"多様性"や人々を分ける"境界"が関心事のキーワード。
学生時代、中東地域やインドを中心に旅をしていた。
旅人マインドをもって気ままに生きてる。
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Bolly
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チャリツモではチャーリーくんをはじめとしたイラストを担当。
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船川 諒
WEBデザインと、記事の執筆&編集を担当しています。
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