4通目 イランのえなちゃんへ/イランからの便り
チャリツモライターで南アフリカ在住のばんと、同じくチャリツモライターでイランに留学中のえな。
仲良しだけど、今は遠く離れているふたり。
そんな二人の文通を、ゆるゆるとご紹介するこのコーナー。
今回は、南アフリカのばんから、宗教や食事についての手紙が届きました。
えなちゃん
お手紙ありがとう!
洋服の話、とっても興味深かったです。
私が行ったことのある国でも、日常的にヒジャブをしている人も、していない人もいて、本当に国、地域、人それぞれなんだなあ、と思いました。同じ中東地域でも、いろんな形があっておもしろい!
イランの服装は、イスラム教の影響が大きいんだよね。日本で宗教と聞くと、なんだかいろいろ決まりがあって、窮屈そうという印象を持つ人も多いと思うけど、それぞれが納得して選択しているとしたら、それもその人の自己表現の一つなのかな、と思います。
イランではイスラム教徒が多いと思うけど、私の住むヨハネスブルグでは、さまざまな宗教を信仰している人がいます。
南アフリカでは、多数派の人がキリスト教を信仰しているけど、街にはヒンドゥー教の寺院も、イスラム教のモスクも、ユダヤ教のシナゴーグもあります。キリスト教徒といっても、アフリカ土着の祖先信仰と混じったものも多いです。もちろん、人によっては、まったく宗教的じゃないことも。
えなちゃんと初めて会った、インドにもいろんな宗教の人がいたね。リクシャー(三輪タクシー)の運転手が、運転席にヒンドゥー教の神様のシールを張っていたり、イスラム教を表す緑地に月と星のマークがついていたり、十字架をぶら下げていたり…。
いろいろな宗教を信仰している人が一緒に暮らしていると、信仰そのものがそれぞれのアイデンティティにもなっているのかなあ、と感じました。
宗教といえば、服装だけでなく、他にも生活について、独特の決まり事や教えがあることがあるよね。例えば食事とか。
私が初めてパレスチナ自治区に行ったときは、イスラム教の断食月である「ラマダン」の初日でした。
日中太陽が出ている間は、食べ物も飲み物も摂取しないと聞いて「ものすごくストイック!」と思ったのだけど、ラマダン用の飾りつけをしたり、特別な料理やお菓子を食べて、お祭りモード。子どもたちも、いつもと違って夜更かしできるからか、うきうきした雰囲気が伝わってきて、ラマダンを楽しんでいる様子が印象的でした。
UAE(アラブ首長国連邦)人の友人の一人は、ラマダン月が終わった後も、自主的に断食を延長していて、なんでか聞いたら「健康にいいし、自分自身のためにやっているんだ」と答えてくれました。断食をすることで、貧者の気持ちを知り、自分自身を清めることになるんだとか。
そういえば、東京に住んでいた時、職場の近くにあったイラン料理屋さんに何度か行ったことがあるのだけど、独特の香辛料が効いたあの料理、結構好きでした。
えなちゃんは毎日、どんな食べ物をたべているの?それに、イランのラマダンの様子も知りたいな。
今回はこのくらいで。
それでは。
イランに想いを馳せる(4)
ラマダン(断食月)について
イスラム教には、イスラム教徒が果たすべき義務「五行」があります。サウジアラビアにあるメッカに巡礼することや、困窮している人に対して寄付をすることなど、5つの行いが定められており、その一つが「サウム」と呼ばれる断食です。
サウムを行う月のことを、日本語ではラマダン、ラマダーン、ラマザンなどと呼び、ラマダン月の間、断食を行います。
断食といっても1か月何も食べないわけではありません。日の出から日没までの間、飲食を断つのです。敬虔な人は、自分の唾さえ飲まないといいます。
ただし、日の入りの後、太陽が昇るまでの間は断食をしなくて良いので、その間に1日分の飲食をします。
日没のお祈りの後に食べる、断食明けの食事のことを「イフタール」といいます。家族や友人などが集まり、大勢で食べる特別な食事です。また、日の出のお祈りの前に食べる食事のことを「スフール」(※)と言います。
イスラム教の暦は、太陽暦ではなく、月の満ち欠けによって決まる太陰暦。そのため、毎年少しづつラマダンの時期はずれていきます。
ラマダンの時期は、イスラム教徒にとって最も神聖な月といわれており、日中の飲食だけでなく、喫煙や性行為も禁止されるとか。
この時期、日中は営業していない店も多いのですが、どのくらい厳しいかは、国や都市によっても、そしてもちろん個人によっても差があるようです。