2通目 イランのえなちゃんへ/イランからの便り

チャリツモライターで南アフリカ在住のばんと、同じくチャリツモライターでイランに留学中のえな。
仲良しだけど、今は遠く離れているふたり。
このコーナーでは、そんなふたりがときどき交わす、手紙のやり取りを記録していきます。

ばん
突然「イランに留学にいく」といって、あっという間に旅立ったえなちゃん。
彼女が日本を離れて1ヶ月ほどたったある日、イランのえなちゃんから1通の手紙が届いた。
遠い異国で、なれない生活を送る彼女の等身大の日々が綴られた便りは、イランとそこに暮らすえなちゃんをすぐ近くに感じさせてくれた。そして私は、えなちゃんへのお返事を書こうとペンを取った。
えなちゃん。
お手紙ありがとう。
イランからお手紙をもらうのは初めてだから、ちょっぴり緊張しながら読みました。
こちらは元気にやっているよ!えなちゃんも、元気そうで何よりです。
イランの街は、首都のテヘランくらいしか知らなかったから、コムというところ、とても気になります。
日本だって、東京だけ見るのと、最寄り駅まで車で1時間かかるような片田舎を見るのとだと、きっと全然印象が違うだろうから、コムでの経験はきっととても貴重だと思います。
イランでは、えなちゃんもチャドルを着ているの?
私もイスラム教を信仰する国に何度も行ったことがあるけれど、自分ではスカーフなどの布をつけて街を歩いたことはないです。いったいどんな気分がするんだろう?
アラブ首長国連邦(UAE)に行ったときに友達になったUAE人の女の子は、真っ黒のアバヤという服の中に、ジーンズとスニーカーを履いていたりして、ギャップが面白いな、と思ったのを覚えています。

宗教の話は、とても気になります。
神様の存在や、宗教の存在が、当たり前のようにある中で育つことは、私たちにはちょっと簡単には想像できないことだよね。
でもきっと、宗教があるのが当たり前で育った人たちにとって、特定の宗教なしで生きている人のほうが不思議に見えるのかもしれないね。
私が中東地域の国をいくつか旅した時、宗教が土台にある社会をみて、人間は何かしら心のよりどころをもって生きるものなのかなあ、とぼんやり考えたりしました。地域や人によって、そのよりどころが宗教、というものであるかもしれないし、また別のものかもしれない。思想とか権力とか。
えなちゃんが、普段どういうことを現地の人と話して、どんな驚きや戸惑い、発見があったのか、気が向いたときにぜひ教えてください。
またお手紙待ってます。
ばんゆかこ
イランに想いを馳せる(2)
イランとアラブ諸国について
イランという国について、詳しい人はどれくらいいるでしょうか?名前が似ていることから、イラクと混同してしまっている人も多いかもしれません。
中東にあるイスラム教の国、ということくらいしか知られていないかもしれません。
イランは中東にあるイスラム教国で、主にペルシャ語が使われています。たくさんの民族の人がいますが、多数派はペルシャ人です。イスラム教の中でも、シーア派といわれる宗派が信仰されています。イランは、“中東”という言葉を聞いてイメージされる“アラブ”の国ではありません。
アラビア語を話すアラブ人が多い国といえば、お手紙の中にもでてきたアラブ首長国連邦やサウジアラビア、イランに名前が似ているイラク、ピラミッドで有名なエジプト、シリア、ヨルダンなどがあります。どの国にも、少数派の人を含めると、様々な民族や宗教の人がいますが、多数派はアラビア語を話すアラブ人です。そしてアラブ諸国の多くはイスラム教・スンニ派と呼ばれる宗派を信じている人が多数派です。

言語を見ても、ペルシャ語もアラビア語も、ほとんど同じアルファベットを使っているのでぱっと見たところ同じに見えますが、実は別の言語なのです。
似ているようで違う。複雑ですね。