就労継続支援A型の平均月額賃金の推移
日本には「就労継続支援」というものがあります。障害者を対象に、生産活動の機会を与えると共に、知識や能力の向上を図るための施設です。就労者には当然ながら給料も発生します。
障害の度合いにあわせ、雇用契約ができる「就労継続支援A型」と雇用契約を結ばずに雇用する「就労継続支援B型」の2種類が存在します。
B型の場合は雇用契約を結ばない一方、A型の場合は雇用契約を結び最低賃金を支払われ、社会保険にも加入義務があります。
こうした施策は障害者を自立に導くための援助つきの雇用制度ですが、この就職継続支援A型における平均賃金が年々減少しています。
A型の月額平均賃金は平成18年度は113,077円でしたが、年々減少し、平成27年度は67,795円まで減少したのです。
B型事業については、賃金が増加しているのにも関らず、なぜでしょう。
実は、賃金減少と同時に、就職継続支援A型の事業所の数が年々右肩上がりになっています。
2011年から2016年の5年間の間に、事業所数は3.5倍となりました。
A型周到支援事業所を立ち上げることで、国から補助金をもらえることができる、ということで、業界参入する業者が増えたのです。
しかし、こうした業者の中には悪質なものもあるようで、雇用した障害者に対し、職業訓練をするわけでもなく、ただ本を読ませたり、短時間勤務で雇い入れることで、障害者雇用一人当たり一日7,000~8,000円もらえる給付金との差額で儲けているといいます。
行政処分となる事業所もでてくる事態となりました。
本体の制度の目的とは大きくかけ離れた「補助金ビジネス」が横行することで、事業所の平均賃金は下がり続けているのです。
こうした状況を改善しようと、2017年4月に政府は給付金要件を厳しくしました。
ところが皮肉なことに、給付金をもらえなくなったことがきっかけで経営がうまくいかなくなり、経営破たんする事業所が続出したのです。
同年7月には、岡山県倉敷市と高松市の全7事業所が倒産し、約280人の障害者が解雇されました。
障害者のための制度を利用して儲けようとすることは言語道断です。
それと同時に、事業性を確保しながら、社会的な活動をすることの難しさが見て取れます。