“わたしたちの月3万円ビジネス”を仕掛けるchoinaca(ちょいなか)/後編
埼玉県杉戸町で地域を盛り上げる仕掛けづくりにチャレンジしている、地元出身の女性2人のユニット“choinaca”。前回は2人がchoinacaを結成して活動を始めるまでのお話をお聞きしました。
前編を読む(ちょいなかインタビュー1/2)後編の今回は、choinacaって一体何なのか。どんなことをやっているのかをお聞きします。
choinaca結成までの話がおもしろくて、ついつい長くなっちゃいました。今回はchoinacaの活動について、詳しく聞かせてください。
わたしたちは、都会でもない田舎でもない、ちょっと田舎のこの地域を愛を込めて“ちょいなか”って呼んでるんですね。そこで小さくても楽しい、わたしたちの自立の仕方を目指そうって。企業社会で生きてきたわたしたちにとっては、今までの価値観と正反対の「小さくていいじゃん!それで自分の力で立てるようにしよう」って。そんなコンセプトで活動をはじめました。
そこでまず注目したのは“女子力”。
“女子力”ですか。
なぜ“女子力”かっていうと、わたしたちが女子だからってだけじゃなくて、杉戸町のような郊外のベッドタウンって、男性が都市で働いて寝に戻るみたいな場所じゃないですか。昼間に町にいる人って、子育て中の女性か、お年寄りなんですよ。
たしかに。うちの近所も昼間にプラプラしている若年男性は僕くらいですね。
だからそんな子育て世代の女性たちが、一人ひとり「自立」を目指して立ち上がったら、今まで“眠っている町”っていう意味で「ベッドタウン」って言われていたこの町が、なんかおもしろくなるんじゃないかって考えて“女子力”をキーワードにしたんです。
なるほど
で、その女子たちの自立を目指そうってところで、じゃあ“自立”ってなんだろうって考えたときに出てきたのが3つのポイント。
1つ目が「自給力」。エネルギーを自給しようって太陽光パネルを自分たちで設置したり、畑で作物を作るとか田んぼでお米を作るとか、今まで「お金を出して買う」っていう循環の中で得ていたものを、その循環から出て、自分で「暮らしを作っていく力」を持てれば自立につながるんじゃないかなって思ったんです。
それが、『ちょいなか根活(こんかつ)』ですね
そうです。わたし実家に帰る度に「婚活しろ」って言われるから、「こんかつやってますよ!」って言いたいがために『ちょいなか根活』と命名したんです(笑)。
(笑)
根活では農家さんから空いた畑を借りて、大豆を育てて、収穫したらそれを味噌にするって1年間のプログラムをやったり、自作のかまどでご飯炊いたり、自作のピザ窯でピザ焼いたりって言うのを、都内から人を集めてやってたんですね。
DASH村みたいでおもしろそう。自給力の次のポイントはなんでしょう。
2つ目は「自活力」。お金がたまったら起業しようとか、資格取ったらなんかやるんじゃなくて、今のありのままの自分(等身大の自分)で小さくてもいいから仕事が作れたら、多分怖くないじゃないですか。リストラにあっても、仕事に就けなくても、「わたし仕事作れますんで」みたいな。『しあわせすぎマルシェ』とか『3ビズ(月3万円ビジネス)』ってプロジェクトなんかはコレをメインテーマにやってます。
うちの母親も、以前から木のおもちゃ屋さんとして、マルシェに出店させてもらってました。趣味でやっているような感じでしたけど。最近はさらに『3ビズ』にも参加させてもらってます。
このマルシェと『3ビズ』は明確につながっています。
『しあわせすぎマルシェ』は幸手市の幸と、杉戸町の杉で“しあわせすぎ”なんですけど、女性の趣味や特技でお店をだせる力をつけてもらうための場所、自分のやりたいことを実践できる場所にして欲しいと思ってはじめました。
以前から、そうした特技や趣味をもった人たちに、マルシェに出店してくれるように誘ってたんですが、みんな「自信がない」「これがお金になるとは思えない」って断る方が多いんですよ。
みんな“自信”がなくて、一歩が踏み出せないんだな、って思ったときに、「じゃあ、その自信をつけるための仕組みを作っちゃえばいいんだ」って思ってはじめたのが『3ビズ』なんですよ。
『3ビズ』の受講生は、6回の講座でスモールビジネスのノウハウについてしっかり勉強して、自分のビジネスプランを徹底的に磨き上げる。そうして“自信”をつけてもらって、卒業実践として最後に『マルシェ』に出店する。
それを繰り返して行けばどんどんマルシェの出店者は増えて、イベントは大きくなって行くんです。
おお!うちの母親はがっちりその型にハマったわけですね(笑)。
受講生は座学だけで終わらずに、マルシェで実践までできると。これは「自活力」を身につけるにはいい仕組みですね。
この「自給力」と「自活力」を軸にしながら、さらに、自分ひとりで孤軍奮闘(こぐんふんとう)するだけじゃなくて、みんなでつながって、みんなでやればもっとよくなるじゃん!って事で「仲間力」っていうのが加わって、「自給力・自活力・仲間力」の3本柱をchoinacaのテーマにして、このテーマにそったプロジェクトを作っているんです。
うちの母親も3ビズに参加してから、会うたびに他の受講生の話をしますよ。
母は今までほぼ専業主婦だったので、『3ビズ』に参加して世界が開けたんじゃないかな。参加者はみんなやりたい事業は違うんだけど、講座の中では、みんなに自分のやりたいことをプレゼンして、みんなから意見をもらうと聞いていますが、他の参加者はバックボーンがさまざまだから、自分にはなかった視点からのアドバイスがもらえるって、喜んでます。
「みんなで向上していく」っていう意識をきちんと共有できているから、馴れ合いにならずに個々人がモチベーションを失わずにステップアップ出来るんでしょうね。
ちなみに聞いたところによると、3ビズの卒業生が、杉戸以外の地域で独自のマルシェを開催したりして活躍してるんですよね。
そうなんですよ。『3ビズ』は現在受講中の5期生まで含めて卒業生と受講生が全部で70人います。卒業した人たちは各地で活躍してます。
例えば2期生の方たちは草加市で駅前にあるマルイさんと組んで、テナントを借りて自分たちのスモールビジネスのブースを常設出店していたり、リノベーションまちづくりのプロジェクトで中心を担う存在となっていたり、その期ごとに強い「仲間力」を持っていろんなチャレンジをしています。
もう70人もいるんですか!
卒業生が各地で活躍して3ビズを広めていって、またさらに広がって行って…って、なんだかマルチやネットワークビジネス並の伝搬力ですね(笑)。
ちなみに僕ははじめて『月3万円ビジネス』って聞いたときに、「月に3万しか稼げないって、趣味じゃん」って思っちゃったんですけど、そうじゃないんですよね。
ひとつの仕事に固執するんじゃなくって、小さい仕事をたくさん抱えて「複業」をするっていう考え方なんです。
月に2日だけ働いて、3万円を稼ぐスモールビジネスを、いくつも持てばいいじゃんっていう。でも、その背景にあるのは、「自分の支出を考え直す」っていう思想。
普通の会社員の思考だと、3万円のビジネスなら10個持たなきゃって思っちゃう。
でも3ビズの中で考えてほしいのは、「この地域で暮らして行くために、そんなに必要?」ってこと。
例えばわたしの家は賃貸の一戸建て。駐車場がなんと3台分ついて、駅からもそんなに遠くない。そこで家賃は4万5,000円です。ボロいですけどね。でも地域の中には埋もれた建物もたくさんあるし、借りようと思えばもっと安く借りられる。
食べるものも地域の中でみんなで譲り合ったりシェアしたりしていけば実はもっと安く生きていけるんじゃないかなって。3万円のビジネスが5つくらいあれば十分豊かに暮らせるんじゃないの?っていう思想。
だから稼ぎ方を学ぶと同時に、支出の仕方も考え直す内容になっています。
なるほど。確かに僕も以前は“支出するために働いている”って感じで常に余裕なかったですね、気持ち的に。
アメリカだとアーティストがアートで大成するために、タクシーの運転手で生活費を稼ぎながら、アート活動をする。だからタクシー運転手っていう仕事が“夢に連れて行ってくれる”っていう意味を込めて『タクシージョブ』って言われています。
『3ビズ』もそういう意味で使ってほしいなっていう思いがある。3万円を稼ぐためのものではなくって、やりたいことを実現するためのツールとして使ってほしいんです。