「かわいい」で売り買いされる命。外国人から見た日本の犬猫の生体販売について
今回は、アニマルシェルターへの寄付を募るため、保護犬とのお散歩イベントを定期的に開催している団体『アニマルウォーク東京』に取材をしました。この団体の特徴は、メンバーもサポーターもその大半が日本在住の外国人だということです。
2011年にこの活動を初めたのはアメリカ人女性のブランディーさん。
日本ではこれまで、日本語を話せない外国人は、ボランティア活動に参加することが難しかったのだそうです。
動物愛護に関心を持つブランディーさんは、同じく動物好きな外国人が言葉の壁を感じることなく参加できる場にしたいと『アニマルウォーク東京』を作りました。イベントを開催して寄付を募ったり、FACEBOOKを通じて英・日2言語で情報発信しているのだそうです。
その後、創設者のブランディーさんはアメリカに帰国してしまいましたが、仲間が活動を引き継ぎ、今もサポーターが増え続けているといいます。
今回はそんなアニマルウォーク東京を運営するカトリーナさんとマホさんのふたりに、日本でチャリティ活動をする中で感じていることをお話しいただきました。
外国人のチャリティを阻む「言葉の壁」
日本国内でチャリティ活動をする外国人の方にはあまり出会わないように思いますが、そうした活動をする外国人の方は多いのでしょうか。
私の周りにはチャリティ活動をしている外国人がたくさんいます。
ただ日本のNPOなどの組織に属する人は多くありません。
固定的な組織で活動をするというよりも、個人個人がSNSなどのツールを使ってつながり、その都度情報交換をしたりイベントをしたりというケースが多いです。
例えば『Meet up』というSNSツールでは「ペット」というカテゴリの中にたくさんのコミュニティがあり、そこに参加すると、動物保護活動に関心のある外国人の仲間とつながることができます。
なるほど。私たちが普段目にするNPOとかNGOとは違ったレイヤーでチャリティ活動が展開されているんですね。
日本の団体に外国人があまり参加していないのはなぜでしょう。
やはり言葉の壁が大きいですね。
日本の動物保護団体では、安全性や運営上の配慮から、日本語が出来るボランティアを募集しているところがほとんどです。
大阪にある認定NPO『ARK(アニマルレフュージ関西)』は創設者のオリバーさんがイギリス人ということもあり、スタッフも日本語と英語ができる方が多くいて、webサイトの情報もバイリンガルです。
そうした外国人が参加できる団体はまだ少ないですね。
「かわいい」カルチャーの危険性
カトリーナさんの母国オーストラリアと日本を比べて、動物に対する意識の違いを教えてください。
日本だとなんでも「かわいい」といいますね。
オーストラリアでは「かわいい(=cute)」という言葉はこれほど使いません。
この「かわいい」カルチャーには日本の特殊性が出ていると思います。
子どもがキャラクターなどの「かわいい」ものを好むのはわかるのですが、日本では大人でも「かわいい」ものが好きですよね。その感覚がちょっと理解しづらいところがあります。
この「かわいい」カルチャーは残念ながらペットなどの動物にも当てはまります。
日本人は犬も小さく、幼く、純血のものを「かわいい」と言って欲しがります。
ARK創設者のオリバーさんも「日本の犬猫は幸せか 動物保護施設アークの25年 (集英社新書)」という本で同じような問題提議をされてました。日本では幼い子犬や子猫を飼いたがりますが、ヨーロッパなどでは成犬を好むのだそうです。だからヨーロッパではシェルターに老犬が保護されてきても引き取り手がすぐに見つかりますが、日本では見向きもされないのだそうです。
もちろん幼い子犬・子猫を好む傾向は日本だけではありません。でも日本では、その幼さへの愛着というか、こだわりが非常に強いと思います。
日本ではペットショップを訪れる家族は、純血種で幼い犬を求めます。けれどその幼さ・若さは永遠ではありません。
飼い始めるとすぐに大きくなり、成犬になってからのほうがより長い時間人生をともにするんです。
犬や猫も年をとると様々なケアを必要とします。私の友達も18歳の柴犬を飼っていますが、しょっちゅうおしめを替えたり、体を拭いたり…人間と同じように認知症も現れます。
そうした年老いたときの面倒を見る責任をきちんと考えて飼い始めなければいけませんね。
なるほど。一瞬の「幼さ」を「かわいい」と思ってしまっているのかもしれませんね。
そうした幼犬・幼猫の流通がまねく悲劇の一つが、年老いた飼い主と幼い犬・猫のミスマッチです。
お年を召したご夫妻や、お一人暮らしのご老人がペットを飼いたいと思ってペットショップに行きます。
ペットショップには幼い犬や猫しかいませんので、老いた飼い主と幼いペットのミスマッチが生まれます。
飼い主がその後介護が必要になったりお亡くなりになってしまったときに、このペットがどうなるか想像してみてください。 飼い始めたときは幼かったペットが年を取ってから飼い主を失くす。当然なかなか引き取り手はありません。もっとも悲しい結果になる可能性が高いです。
本来はそうしたご老人に幼いペットを売ってはいけません。けれどペットショップもビジネスですから、ニーズがあれば売ってしまう。犬や猫は彼らにとってはただの商品ですから。
そうした状況を産んでいるのが「幼さ」を「かわいい」と感じて、本来は慎重に扱うべき生命を無自覚に選別する価値観なのではないでしょうか。
もちろん私は日本のことが好きです。
茶道や書道、わびさび、着物など、日本の文化は素晴らしいと思います。
だからこそこの「かわいい」カルチャーは日本の人々に考え直してほしいと思うのです。
冷静に考えると幼い動物を守ってあげたいと思う感情は持つことと、所有したいと思うことには大きなギャップがありますが、わたしたちは両者を混同しがちです。ペット業界でよく聞く「抱かせたもん勝ち」というフレーズが象徴的なように。
そうですね。
ただ、私は日本と西洋を比較して日本が悪いと言いたいんじゃないんです。
日本における動物の取り扱い方に対して、外国人が批判的なことを言うと「日本の文化を知らないからそんなことを言うのだ」と怒ってしまう日本人は多い。それが残念です。
たとえば和歌山県の太地町のイルカ猟は、外国の動物保護団体から批判されています。でも現地の人々は古くからその地域で伝統的に行われてきたという。
そうした意見の食い違いがあるのは当然です。だからこそ、お互い「文化の違い」で片付けずに対話の機会を作るべきだと思っています。
このWEBサイト「チャリツモ」も、そうした対話の場になりたいと思っています。
さまざまな社会問題に関して、善悪のレッテルを貼らずに当事者双方の話を聞いて行きたいです。
今日はおふたりのおかげでたくさんの気付きがありました。
ありがとうございました。
今回ご紹介したアニマルウォーク東京の詳しい情報はこちらです。
FACEBOOKページhttps://www.facebook.com/animalwalktokyo/