This is a Man’s World.ジェンダーギャップ指数121位の世界
This is a Man’s World.
ジェンダーギャップ指数121位の世界
「ファンキー・プレジデント」と呼ばれたジェームス・ブラウンは、かつて『It’s a Man’s Man’s Man’s World』の中でこう歌った。
This is a man’s world
This is a man’s worldこの世は男の世界
男が創った世界But it wouldn’t be nothing
Nothing without a woman or a girlだが、何もできないだろう
※James Brown「It’s a Man’s Man’s Man’s World」より引用
何も生まれないだろう、女がいなければ
1966年にリリースされ、男性主導の社会を皮肉を込めて歌ったこの曲は、54年経った今でも、日本では色褪せていない。日本は未だに「Man’s World」だ。
2003年の小泉政権時代に、男女共同参画推進本部が定めた「2020年までに様々な分野で女性の指導的地位を少なくとも30%にする」という数値目標は、達成期限とされた本年においても未だ達成されていない。また、2019年12月に世界経済フォーラム(WEF)が発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」では、121位(153ヶ国中)と過去最低を記録した。
しかしその一方で、ジェンダー・ギャップ指数が121位だと言われても、あまりに漠然としすぎて、その数字の異常さに実感がわかない。そこで本記事では、過去のデータや筆者が独自に調べてきた情報を元に、『国政』・『地方政治』・『専門職』の3つの分野別に、よりミクロで様々な視点から日本のジェンダー・ギャップを可視化していく。
- written by
- ひもっち
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歴代の内閣総理大臣の女性比率
初代内閣総理大臣の伊藤博文から現在までの135年間に、延べ99代の総理大臣が誕生した。
総理大臣経験者は63人。そのうち女性は一人もいない。
日本国憲法施行後(1947年〜)の総理大臣経験者は32人。その3分の2にあたる20人が世襲議員だ。
学歴別にみると、東京大学が10人と最多で、続いて早稲田大学が7人。この2校で約5割を占めている。
また32人全員が衆議院議員で、22人が自由民主党所属。
総理大臣初就任時の平均年齢は63歳だ。
もしあなたが総理大臣になりたければ、議員の家に男として生まれ、東京大学または早稲田大学へ進学し、自由民主党から公認を貰い、衆議院選挙に立候補するとよい。
そして、63歳になったら内閣総理大臣指名総選挙に立候補することをオススメする。
これが1番確率の高い方法だ。
女性に生まれてしまったら、諦めるのが得策だ。
一般家庭に生まれた男性も同様だ。
日本国内閣総理大臣は、世襲の男性議員のための役職なのだから。
閣僚経験者の女性比率
1946年5月22日に第45代吉田茂内閣が誕生してから現在までの閣僚経験者数は858人。男性が818人に対し女性は40人(述べ人数では98人)。女性比率は4.7%と驚くべき低さだ。
戦前の日本では女性に参政権(選挙権・被選挙権)は存在しなかった。1945年12月15日に可決された衆議院議員選挙法改正法案により女性の参政権が認められ、翌1946年4月10日に行われた戦後初の衆議院選挙では約1,380万人の女性が投票し、39人の女性国会議員が誕生した。
日本初の女性閣僚は1960年第58代池田勇人内閣の中山マサ厚生労働大臣。中山大臣の任期はわずか4ヶ月だったが、母子家庭へ向けた児童扶養手当を作った。
歴代総理大臣の経歴を見てみると、ほぼ全ての人が複数回閣僚を経験し、総理大臣になっている(政権交代の場合を除く)。つまり、女性初の総理大臣が誕生するには、まず女性閣僚経験者の数を増やさなければならないということだ。
しかし、安倍政権下で若手のホープとして期待されていた女性閣僚たちは、次々と不祥事の責任を取って辞職しており、有望な人材が育っていないのが現状だ。
(小渕優子経済産業相→政治とカネ問題、松島みどり法相→うちわ問題、稲田朋美防衛相→PKO日報問題)
現在の菅内閣では全21人の閣僚のうち女性閣僚は上川陽子法務大臣(7回目)橋本 聖子五輪・女性活躍担当相(2回目)の2名。
政権交代を狙う立憲民主党、国民民主党、日本維新の会といった野党も、代表・代表代行・幹事長といったポストに女性が1人もおらず、女性総理大臣の誕生にはまだまだ時間が掛かりそうだ。
女性閣僚就任 省庁別ランキング BEST3
(延べ人数)
1位 | 内閣府特命担当大臣 42人 |
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2位 | 環境庁長官・環境大臣 17人 |
3位 | 法務大臣 14人 |
女性閣僚就任 省庁別ランキング WORST3
(延べ人数)
1位 | 財務大臣、農林水産大臣 0人 |
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2位 | 経済産業大臣 1人 |
3位 | 防衛大臣 2人 |
世界の閣僚女性比率ベストランキング(全190カ国)
1位 | スペイン 66.7%(女性10人/全閣僚15人) |
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2位 | フィンランド 61.1%(11/18) |
3位 | ニカラグア 58.8%(10/17) |
113位 | 日本 15.8%(3/19) |
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戦後の衆・参議院議長の女性比率
歴代の衆議院議長は全77代(戦後に限ると39代)のうち、女性は第68代の土井たか子1人だけだ。副議長に関しては全67代中、女性は一人もいない。
参議院議長に関しては、歴代全32代(参議院は戦後から設置)のうち、女性は第26代の扇千景と第32代の山東昭子の2人のみ。副議長については全32代のうち、第27代の山東昭子ただ一人だった。
権力が1つの組織に集中しないように日本国憲法では、立法(国会)・行政(内閣)・司法(裁判所)の3つの独立した機関が互いに監視抑制することで、権力の集中・濫用を防ぐ三権分立の原則を定めている。
行政の長は、内閣総理大臣。
司法の長は最高裁判所長官。
そして立法の長が衆議院議長と参議院議長だ。
両院の議長は第1会派から選出し、副議長は第2会派から選出するのが慣例だ。
国会法第19条で「各議院の議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する。」と議長の職務について規定され、両院の議長職は名誉職の色合いが強く、党の重鎮議員が選ばれるため歴代議長にはベテラン議員が名を連ねている。
ベテラン議員を衆議院の当選回数10回以上、参議院の当選回数5回以上と仮定し、衆参の自民党会派所属議員を調べたところ、20人の衆議院議員が条件に該当したが、全て男性だった。参議院議員で条件に該当したのは7人いたが、女性は1人だった。
このように、ベテランの領域に入っている女性議員がほとんど存在しないことが、歴代議長における女性比率の低さの原因である。
現在の国会議員の女性比率
衆議院は戦後最初の選挙から74年間に27回の選挙が行われ、1万3,078人が当選。そのうち女性は525人、女性比率は4%だった。(補欠選挙を除く)
参議院については、戦後最初の参院選から73年間で25回の選挙が行われ、3,256人が当選。うち343人が女性で、女性比率は11.7%だった。
衆参合わせた戦後の歴代国会議員は計1万6,331人。うち女性が868人。女性比率はわずか5.3%となっている。
それでは、現在の国会議員の状況はどうだろう。
衆議院は定数465人に対し、女性議員の数は46人、女性比率は9.9%。
参議院は定数245人に対し、女性議員の数は56人、女性比率は22.8%。
衆参合わせると国会議員710人のうち、女性議員は102人、女性比率は14.4%となっている。
衆議院 政党別女性議員比率ランキング(2020年3月時点)
1位 | 立憲民主党 12/57人 21% |
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2位 | 日本共産党 3/12人 25% |
3位 | 公明党 4/29人 13.7% |
4位 | 自民党 21/283人 7.4% |
5位 | 国民民主党 2/38人 2.6% |
6位 | 日本維新の会 1/10人 10% |
7位 | 社会民主党 0/2人 0% |
8位 | 希望の党 0/2人 0% |
9位 | NHKから国民を守る党 0/1人 0% |
10位 | 政党そうぞう 0/1人 0% |
参議院 政党別女性議員比率ランキング(2020年3月時点)
1位 | 社会民主党 1/2人 50% れいわ新撰組 1/2人 50% |
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2位 | 日本共産党 5/13人 38.4% |
3位 | 国民民主党 7/22人 31.8% |
4位 | 立憲民主党 9/33人 27.2% |
5位 | 日本維新の会 3/16人 23% |
6位 | 公明党 5/28人 17.8% |
7位 | 自由民主党 19/112人 16.9% |
8位 | NHKから国民を守る党 0/1人 0% |
注目するべきは全体の女性比率の低さばかりではない。ただでさえ少ない女性議員の中に、将来大臣や幹事長といった要職につく条件を満たすキャリアを持つ議員が少ないということだ。
現在、衆議院の女性議員の約2割(46人中9人)と、参議院の女性議員の約5割(56人中28人)が、当選回数1回の新人議員である。年功序列制が色濃く残る政治の世界では、どんなに実力があっても新人議員が閣僚や党の要職に就くことはできず、要職の女性比率が低くなっている。
また、自民党には『大臣適齢期』と呼ばれる「衆議院で当選5回以上か、参議院で当選3回以上の人が大臣に選ばれる」という暗黙のルールがあり、現在自民党所属の女性議員でこの条件に当てはまっているのは、わずか13人(40人中)。男性議員は143人(355人中)だ。
閣僚の女性比率を高めるためには、女性議員を増やすだけでなく、政治の世界に蔓延する年功序列制や当選回数至上主義といった考え方を改めなければならない。
歴代衆院選候補者の女性比率
戦後最初の衆院選から74年間に27回の衆議院選挙が行われ、歴代合計で3万1240人が立候補した。内訳は男性29071人。女性2179人。立候補者の女性比率は6.9%だった。(補欠選挙を除く)
しかし、歴代の当選者数(1万3078人)に対する女性当選者(525人)の割合は4%。
立候補時点でさえ少ない女性は、男性に比べて当選確率も低いことがわかる。
ところが、近年は女性議員を増やそうとする流れもあり、立候補者・当選者の双方において女性比率が高まっている。
2017年10月に行われた第48回衆院選では、立候補者の女性比率は17.7%、当選者の女性比率は10.1%まで上がった。
また2018年に制定された日本版パリテ法とも呼ばれる「政治分野における男女共同参画推進法」では政党に男女均等の候補者擁立を求めている。
歴代衆院選における候補者女性比率と
当選者女性比率(%)
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歴代参院選候補者の女性比率
日本国憲法制定によって新しく設置された参議院。その最初の選挙は1947年に行われた第1回参議院議員通常選挙だった。その後73年間に計25回の参議院選挙が行われ、候補者は延べ10621人。内訳としては男性9161人、女性1571人。通算の女性候補比率は14.7%だった。また当選者に占める女性比率は通算で10.5%だった。(補欠選挙を除く)
衆議院選挙(候補者女性比率6.9%)に比べ参議院選挙のほうが、当選者の女性比率が多い理由として考えられるのは、衆議院より11年前早い1983年から比例代表制を導入していたことや、小選挙区制ではなく都道府県ごとの選挙区選挙のため、都道府県内に複数の候補者が擁立される小選挙区制に比べ、党本部や県連から候補者へ対し十分なサポートを与えることができるからだと考えられる。
衆議院、参議院及び地方議会の選挙において、男女の候補者数をできる限り均等にするよう各政党へ努力義務を課す「政治分野における男女共同参画推進法(通称:日本版パリテ法)」が2018年5月23日に施行された。
日本版パリテ法施行後、初の選挙となった2019年7月の参議院選挙で、女性候補者比率が5割を超えた政党は、社民党71.4%(5/7)と共産党55%(22/40)だけだった。
政権与党の自民党は14.6%(12/82)、公明党は8.3%(2/24)と5割に程遠い数字であった。
女性議員・候補者の少なさについて、「女性が政治に関心を持たないのが悪い」と言う意見もあるが、戦後行われた通算27回の衆院選のうち13回の選挙で男性に比べ女性の方が投票率が高かったり、それ以外の選挙でも男女間で投票率に大きな差異はなかった。
そのため問題は、女性が政治に関心を持たないことではなく、女性が被選挙権を行使しづらい社会構造にある。
歴代の都道府県知事の女性比率
47都道府県の合計での知事経験者は、324人。そのうち女性は、現職を含め7人。女性比率は2.1%。
女性知事の誕生したことのある都道府県は、北海道・山形県・千葉県・東京都・滋賀県・大阪府・熊本県。
戦前は、内務省(戦後に解体)が任命した役人が各都道府県に官選知事として派遣されていたが、戦後の1947年に地方自治法が制定され都道府県ごとに選挙で知事が選ばれるようになった。
日本で初の女性知事は、2000年の2月に大阪府知事に就任した太田房江氏だが、地方自治法が施行されてから初の女性知事誕生までに53年もかかった。
現在、47都道府県のうち女性の知事は、山形県の吉村美栄子知事と東京都の小池百合子知事の2人。
これまで女性の知事と女性の市区町村長の両方が一度も誕生したことのない都道府県は、13県ある。
女性知事・女性市区町村長の両方が一度も誕生していない都道府県
岩手県、富山県、石川県、愛知県、奈良県、鳥取県、島根県、香川県、愛媛県、佐賀県、大分県、宮崎県、鹿児島県
都道府県議会
2020年3月時点で、47都道府県議会の議員の数は2,668人いるが、女性はそのうち299人のみ。女性比率は11.2%しかない。
都道府県議会 女性比率ベストランキング
(2020年3月時点)
1位 | 東京都 29% |
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2位 | 京都府 20% |
3位 | 神奈川県 18% |
4位 | 滋賀県 15.9% |
5位 | 兵庫県 15.1% |
都道府県議会 女性比率ワーストランキング
(2020年3月時点)
1位 | 山梨県 2.7%(女性1人/36人中) |
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2位 | 熊本県 4.1%(2/48) |
3位 | 大分県 4.6%(2/43) |
4位 | 広島県 4.6%(3/64) |
5位 | 香川県 4.8%(2/41) |
ちなみに、2020年3月現在、各都道府県議会の議長は全て男性だ。
歴代でも女性議長は、2010年に福岡県議会議長に就任した田中秀子氏と2015年に滋賀県議会議長に就任した西村久子氏の2人だけ。
国会(女性比率14.4%)とは比べ物にならないほど女性議員の比率が低い都道府県議会(同11.2%)では、男性議員によるセクハラが問題になっている。
2014年に都議会で、塩村文夏都議へ対し鈴木章浩都議が「早く結婚した方がいいんじゃないか」とセクハラヤジを飛ばしたことが問題になったのは記憶に新しい。
また、NHKが全国の都道府県・市区町村の議会に所属する約3万2000人の議員全てを対象にアンケートを実施したところ、約60%にあたる1万9000人余りから回答があり、議員によるセクハラ・パワハラについて約14%の人が、「ある」「ある程度ある」と答えた。
市区町村長
現在、全国にある市区町村(特別区を含む)の数は1747。このうち女性の首長がいる市区町村はわずか34しかない。女性比率は1.9%だ。
首長が女性の区市町
青森県:外ヶ浜町
宮城県:仙台市
茨城県:土浦市
栃木県:那須烏山市・栃木市・野木町
群馬県:安中市
埼玉県:長瀞町
千葉県:君津市
東京都:足立区・武蔵野市
神奈川県:横浜市・二宮町
新潟県:加茂市・津南町
福井県:大野市
山梨県:北杜市
長野県:諏訪市
静岡県:島田市・伊豆の国市
三重県:鈴鹿市
京都府:木津川市
兵庫県:尼崎市・芦屋市・宝塚市・播磨町
和歌山県:美浜町
岡山県:倉敷市・新見市
山口県:宇部市・周南市
徳島県:徳島市
高知県:いの町
福岡県:宗像市
沖縄県:那覇市
今までに一度も女性の市区町村長が誕生していない都道府県
岩手県、山形県、富山県、石川県、愛知県、奈良県、鳥取県、島根県、香川県、愛媛県、佐賀県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
1947年、日本で最初の女性村長が4名(茨城県上野村の赤城ヒサ村長、岐阜県穂積村の松野友村長、千葉県神戸村の早川みた村長、秋田県中川村の沢口フク村長)誕生した。
その後、1957年に茨城県小川町(山西きよ)で最初の女性町長が、さらに1991年に兵庫県芦屋市(北村春江)で最初の女性市長が誕生。
1年に1.1人のスピードで女性の市区町村長が誕生しており、全ての市区町村で一度は女性の首長が誕生したことになるのは、単純計算で1511年後だ。
市区町村議会の女性比率
現在、全国の市区町村議会の議席の総数は2万9,839議席。そのうち女性議員は3997席。女性比率はわずか13.4%にとどまっている。(2018年12月31日時点)
女性議員が1人もいない市区町村議会が、全国に340あり、全ての市区町村議会に女性議員が1人以上いる都道府県は福井県と大阪府だけとなっている。
女性議員0の議会比率が高い都道府県ランキング
1位 | 青森県 50%(20議会/40議会) |
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2位 | 奈良県 35.9%(14/39) |
3位 | 熊本県 35.6%(16/45) |
4位 | 沖縄県 34.1%(14/41) |
5位 | 福島県 33.9%(20/59) |
女性議員の少なさについて、「立候補しない女性が悪い」という意見もあるが、立候補しない女性が問題なのではなく、議員本人の出産を欠席事由に認めない規定を設け、被選挙権の行使を躊躇させている障壁こそが問題だ。
また、本人の出産だけでなく、配偶者の出産や育児、家族の介護といった事柄についても欠席事由として認めていない自治体が多くあり、男女問わず生活を犠牲にしなければ議員の仕事を行えないという状況がある。
本人の出産を欠席事由に認めていない市区町村議会の数(全51議会)
北海道 | 沼田町、雨竜町、浦臼町、南富良野町、洞爺湖町、江差町、木古内町、泊村 、威子府村 |
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岩手県 | 住田町、普代村 |
福島県 | 大熊町、石川町、矢祭町、磐梯町、柳津町、川内村、泉崎村、湯川村 |
埼玉県 | 皆野町 |
千葉県 | 長生村 |
東京都 | 荒川区、新島村、御蔵島村 |
岐阜県 | 白川町 |
三重県 | 木曽岬町 |
奈良県 | 川西町、曽爾村、御杖村、上北山村、東吉野村 |
和歌山県 | 高野町、北山村 |
高知県 | 東洋町、三原村 |
福岡県 | うきは市、大任町 |
熊本県 | 相良村 |
大分県 | 玖珠町 |
宮崎県 | 串間市、高鍋町、西米良村 |
沖縄県 | 石垣市、恩納村、座間味村、伊平屋村 |
歴代の最高裁判所長官の女性比率
司法の場でもジェンダー格差は著しい。
これまで最高裁判所長官の任に就いた19人のうち、女性の長官は一人もいなかった。
また、歴代の最高裁判所判事は計182人に上るが、そのうち女性はわずか7人。最高裁判事の女性比率は3.8%だ。
現在の最高裁は15人の判事のうち、女性は2人。彼らが性犯罪を含め、あらゆる事件の最終的な判断を下している。
2019年時点で、日本の裁判官全体の女性比率は26.7%。検察官は25.0%。弁護士は18.8%となっている。
政府は、「社会のあらゆる分野において2020年までに指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%程度とする」という目標を、2010年に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画に盛り込んだ。
この目標の中の「指導的地位」とは「専門性が高い職業に従事する者」とされており、裁判官・検察官・弁護士もそれにあたるが、30%には程遠い数字だ。
法曹界における女性比率を上げるためには、司法試験出願者における女性比率を上げなければならないが、2020年の司法試験の出願者に占める女性割合は29.1%と、司法試験の段階で30%を下回っていた。
警察官の女性比率
警察官には大きく分けて都道府県警察に所属する地方公務員と、おもに警察庁に勤める国家公務員がいる。私たちが警察署や交番で見かける警察官は、前者の地方公務員だ。
警察白書によると、2019年時点の全国の地方警察官の人数は26万1,782人。そのうち女性警察官は2万5,540人。女性比率は9.7%となっている。
警察組織として、女性警察官の採用・登用の拡大に力を入れており、2018年度には新卒者全体の19%にあたる1,833人を新卒採用している。
諸外国の警察官の女性比率
(2015年)
カナダ | 20.8% |
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アメリカ | 11.6% |
ロシア | 16.5% |
スウェーデン | 31.4% |
スペイン | 10.8% |
フランス | 18.5% |
ドイツ | 20.4% |
オランダ | 31.8% |
ラトビア | 35.5% |
エストニア | 34.7% |
47都道府県警察官女性割合ベストランキング
(一部を除いて2019年4月時点)
1位 | 高知県 21%(2018年度) |
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2位 | 青森県 16.2% |
3位 | 茨城県 11% |
4位 | 北海道・群馬県・埼玉県・三重県 10.9% |
5位 | 岡山県 10.7% |
47都道府県警察官女性割合ワーストランキング
(2019年4月時点)
1位 | 福岡県 7.9% |
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2位 | 宮崎県・沖縄県 8% |
3位 | 長崎県 8.3% |
4位 | 山梨県 8.4% |
5位 | 熊本県 8.5% |
警察官は、他の専門職に比べ女性比率が特に低く、「警察官=男性」という固定観念が私たちの頭の中に刷り込まれている。
その認識は間違っていない。実際に全国の警察官の女性比率はわずか1割未満しかないのだ。
テレビで放送される警察ドラマの数々も、この現実を忠実に再現している。
現在キー局で放送中・放送予定の警察ドラマ8つのキャストを見てみると、全てのドラマで主役の警察官は男性だ。
そして面白いことにドラマ中の警察組織内(相関図に登場している警察官に限る)の女性比率は、
・テレビ朝日「特捜9」:8人中1人=女性比率は12.5%
・TBS「MIU404」:7人中1人=女性比率は14.2%
のように、現実の警察内の女性比率とほぼ同じだった。
実際のジェンダー・ギャップが、創作物にもおおきな影響を与えている。
医師の女性割合
2018年時点で日本の医師の総数は32万7,210人。そのうち女性は7万1,758人で、女性比率は21.9%となっている。
診療科別 女性割合ベストランキング
1位 | 皮膚科 54.8% |
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2位 | 産婦人科 44.5% |
3位 | 乳腺外科 44.1% |
4位 | 眼科 42.4% |
5位 | 麻酔科 40.9% |
診療科別 女性割合ワーストランキング
1位 | 気管食道外科 2.5% |
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2位 | 心臓血管外科・整形外科 6.2% |
3位 | 脳神経外科 6.5% |
4位 | 外科・消化器外科 7.1% |
5位 | 泌尿器科 8.2% |
OECDによると日本の医師総数に占める女性医師の割合は、メキシコを除くOECD加盟国34ヶ国中最下位。OECD34ヶ国の平均である46.5%も大きく下回っていた。OECD加盟国の中で最も女性医師の割合が高い国はラトビアで74.4%だった。
また、複数の大学が医学部入試において女子や浪人生に対し、不当に一律減点や不適切な得点調整を行なっていたことが判明した。
大学教授の女性比率
日本における大学(国公立・私立)の学部生の女性比率は、45.3%(2019年度)と男女比はほぼ半々となっているが、トップ大学に限ると様相は異なる。
旧帝国大学における学部生の女性比率を見てみると、北海道大学28.8%、東北大学26.5%、東京大学19.3%、名古屋大学30.2%、京都大学22.3%、大阪大学34.3%、九州大学29.1%というように、いわゆる名門校と言われる大学はどこも女性比率は2〜3割だ。(いずれも2019年)
世界のトップ大学の女子学生比率
オックスフォード大学(イギリス) | 46% |
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ハーバード大学(アメリカ) | 49% |
北京大学(中国) | 46% |
シンガポール国立大学(シンガポール) | 51% |
シドニー大学(オーストラリア) | 58% |
学生に限らず教員にも同じ傾向が見られ、日本のトップ大学では女性がマイノリティの男性社会が形成されている。
日本の大学(国公立・私立)の女性教授の合計は28,156人で、教授職全体に占める女性教授の割合は20.6%。(2016年度)
ところが、旧帝国大学に限ると北海道大学6%、東北大学6%、東京大学7.6%、名古屋大学8.8%、京都大学7.6%、大阪大学10%、九州大学6%といずれも1割以下しか女性教授がいない。(2019年度)
また、同じ教育の分野で絞って見ても、幼稚園では教員の93.4%が女性であるにもかかわらず、小学校(62.2%)、中学校(43.5%)、高校(32.3%)というように、教育内容が高度になるにつれ教員の女性比率が下がっていき、最終的に大学では25.3%にまで下がる。(2019年度)
ジェンダー・ギャップ指数といえば、「政治」と「経済」の分野に強い関心が集まるが、「教育」の分野においてもジェンダー・ギャップは明確に存在している。
経団連役員の女性比率
経団連の要職には日本の大企業のトップが集っており、日本経済界のアベンジャーズと言っても遜色がない。(スーサイド・スクワッドの方が適切かもしれないが)
そんな夢のようなメンバーの集まる経団連だが、実態は女性に閉鎖的な昭和の男社会だ。
歴代の経団連会長14人中、女性は0人。もちろん現在の会長も男性だし、18人の副会長も全員男性だ。
現在、経団連の役員(会長・副会長のほか、理事・審議員会会長・副会長など)は79人いるが、そのうち女性は1人しかおらず、女性比率はわずか1.2%だ。
(唯一の女性役員は審議員会副議長の株式会社箔一・会長 浅野 邦子)
それでも昨今の女性活躍推進の流れに乗るため、経団連では女性役員のさらなる活躍を支援する「リーダーシップ・メンター・プログラム」を開催している。現在までに17回開催されているが、このプログラムのメンターは17人中16人が男性だった。
こうした経団連の圧倒的男性支配の構図は、日本の企業文化を象徴しているといえるかもしれない。 事実、日本の全上場企業の女性役員の割合は5.2%と絶望的に低い。(2019年7月現在)
新聞社で指導・教育的立場にある従業員の女性比率
メディアはジェンダーギャップを報じる一方で、自らがジェンダーギャップを作り出しているという自己矛盾を常に抱えており、メディアと政治が日本で最もジェンダー意識の欠けた世界であると言われている。
テレビ・ラジオに関しては、民法労連が在京・在阪の12の放送局を対象に行った調査がある。
それによると12の放送局の従業員総数2万5,891人のうち、24.2%にあたる5,357 人が女性であった。にも関わらず、報道や制作部門の最高責任者が女性のキー局は一つもなかった。(2019年時点)
新聞に関しては、日本新聞協会が97の新聞社・通信社を対象に行なったアンケートがある。
調査対象の新聞社・通信社に所属する記者の数は1万7,931。うち女性の記者は3,859人。女性記者の割合は21.5%だった。
しかし一方で、デスクやキャップなど社内で指導・教育的立場にある従業員を含む「広義の管理職」に占める女性の割合は8.6%しかなかった。
編集権限のあるデスクの女性比率の低さや、新聞の“花形”である社説を担当する論説委員における女性の少なさ(産経新聞は25人中女性は3人、中日新聞は27人中1人、NHKは41人中6人など)は新聞社の論調に影響を与えるだけでなく、男性目線で切り取られたニュースを世に蔓延させ、世論形成しているという問題を引き起こしている。
キー局・全国・ブロック紙女性役員比率ベストランキング
1位 | 朝日新聞 13.3%(女性2人/15人中) |
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2位 | NHK 9%(1/11) |
3位 | テレビ東京 7.6%(1/13) |
4位 | 北海道新聞 7.1%(1/14) |
5位 | TBS 4.5%(1/22) |
5位 | 中日新聞 4.5%(1/22) |
キー局・全国・ブロック紙女性役員比率ワーストランキング
1位 | フジテレビ 0%(0/28) |
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1位 | 日本テレビ 0%(0/22) |
1位 | 日本経済新聞 0%(0/20) |
1位 | テレビ朝日 0%(0/19) |
1位 | 毎日新聞 0%(0/15) |
1位 | 読売新聞 0%(0/13) |
1位 | 産経新聞 0%(0/10) |
1位 | 西日本新聞 0%(0/9) |
まとめ
ジェンダー・ギャップ121位という数字を深掘りした先にあったのは、男の男による男のための世界だった。ヒラリー・クリントン元国務長官は、女性のキャリアアップを阻む『ガラスの天井』が、アメリカ社会に存在していると言及していたが、日本の場合、ガラスはガラスでも『防弾ガラスの天井』が行く手を阻む。
そのため国の方向性を決める政治の場でも、法の番人である司法の場でも、世論を形成するメディアでも、あらゆる分野の指導的地位において女性はマイノリティだ。
日本では、性別によって社会的役割、そして人生が固定されてしまう。男性の社会的役割は、労働。女性の社会的役割は、出産・家事・育児だ。
性別で人生が固定化される社会では、男性は休むことなく働かせられ死んでいき(平成30年度の過労死認定の93%が男性)、女性は夢を諦め続け社会に絶望していく(第一子出産後に退職する女性の割合 46.9%)。
女性に女性らしさを押しつける社会は、その裏返しに男性にも男性らしさを求められる社会であることを認識しなければならない。
「男は強くなければならない」、「男が女を養わなければならない」といった社会から求められる“男らしさ”に苦しみ、思わず「男もつらいよ」と嘆きたくなる男性も少なくないだろう。
「It’s a Man’s Man’s Man’s World」がリリースされてから54年が経ち、海外ではジェンダー・ギャップを是正するために多くの施策が行われ、女性の社会進出が進み女性の大統領や首相が誕生し、日に日に「Man’s World」が薄れていっている。
一方日本では、ジェンダー・ギャップを是正するための議論ではなく、「ジェンダー・ギャップが日本社会に存在しているかどうか」という本来疑いようもない事実についての議論が行われている。多くの人が思考を停止している中で、勇気を持って現状を打破するために立ち上がった人へは、石が投げられる。
この54年間日本社会は停滞したままで、国際社会から取り残されガラパゴス化が加速している。一億総崩れの状態から日本を立て直すためには、「ジェンダー・ギャップの有無」について議論している場合ではなく、今すぐにでもジェンダー・ギャップを是正するために社会が動いていかなければ、数十年後に日本は存在していないだろう。
本記事を読み始めた時、絶望的な数字の羅列に多くの人は、「怒り」や「驚き」を感じたはずだ。しかし、記事を読み続けていくと、怒りを引き起こしていたはずの数字がただの数に見え、何も感じなくなる。そして記事を閉じ、数分前に覚えた違和感を忘れ、異常な日常へ戻っていく。我々日本人の異常な馴化能力の前では、どれほどの異常事態も、いつの間にか日常になり、違和感すら抱かなくなる。
だが、もう一度考えてもらいたい。あなたはこれから先も、本当にこんな社会に生きていきたいと思うだろうか。
ジェンダーギャップの是正は、単に女性への差別をなくすことではない。私たち一人ひとりが、個人として尊重され、自分の人生を選択できる社会を築いていくことだ。
「ゴッドファーザー・オブ・ソウル」と呼ばれたジェームス・ブラウンの『It’s a Man’s Man’s Man’s World』で始まった本記事だが、最後は「クイーン・オブ・ソウル」と呼ばれたアレサ・フランクリンが歌う、フェミニズムや公民権運動のアンセムソング「Respect」で締めたいと思う。
R-E-S-P-E-C-T
Find out what it means to me“RESPECT”という言葉が私にとってどんな意味を持っているか考えなさい
R-E-S-P-E-C-T
Take care, TCB“RESPECT”やるべきことをやりなさい
※Aretha Franklin「Respect」より引用
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