外国人と英語でわかり合うには?/タコスとお寿司の夫婦の会話
はじめに
『タコスとお寿司の夫婦の会話』とは、高校で社会科を教えるメキシコ人の夫とイラストやデザインを生業とする日本人の私の、なんでもない日常の夫婦の会話をご紹介する連載です。
日本やメキシコ、その他の国で起こる様々な出来事に、育った環境や文化、受けた教育、職業も違う私たちが、それぞれどう感じ、何を話し合ったかをここに記録します。
外国人と英語でわかり合うには?
なんで?
中間選挙の後の会見で、トランプ大統領に日本人の記者が質問したんだけど、トランプ大統領は「言ってることがわからない」って答えたの。
同じ会見で、レバノンの記者の質問にも「何言ってるかわからない」って言ってたね。
そうなの。本当に聞き取れなかったのかもしれないけど、差別だって話題にしたアメリカ人が何人もいて、日本でも記事になってたの。記事に対するコメントを見てたんだけど…
みんなトランプに怒ってる?
それが、反対で。差別だってゆう怒りのコメントよりも、日本人の記者がアメリカ人と同じように英語を発音できないことを責めるコメントが目立ってて、びっくりしたの。
そうなの?!アメリカ人と同じ発音で英語を話すって、子供の頃にアメリカに住んでいない外国人には難しいよね。
英語ってアメリカの公用語というだけじゃなくて、国際言語として使われてるじゃない?英語が母国語じゃない人にとって英語は、アメリカ人や英語を母国語とする人と話すためだけの言葉じゃないと思うの。
もちろん。僕たちも出会ったときはお互い母国語じゃない英語で話してたよね(タコスの母国語はスペイン語)。日本語学校で出会ったインドや中国、スイスやスウェーデン、フランスの友達とも、英語で話してるよ。
インド人が話す英語、とかフランス人が話す英語、とか、その人の母国語によって独特のアクセントってあるけど、英語が公用語の国でもイギリス、アメリカ、オーストラリアやシンガポールの英語もそれぞれ違うから、どれが正しい、どれが間違いって決められない気がする。
色んな英語が存在するってことだよね。スペイン語で考えてみてよ。スペイン以外にもスペイン語を話す国ってすごくたくさんあるじゃない?
メキシコ、グアテマラ、エルサルバドル、エクアドル、コロンビア、チリ、アルゼンチン、ペルー、ボリビア、キューバとか…
スペイン語を公用語にしてる国が20カ国くらいある上に、アメリカ(合衆国)でもスペイン語を話してる人が5千万人以上いるんだよ。
言葉って、使われるうちに変化するから、国はもちろん、地方によってもアクセントや言い回し、使う単語が結構違うんだよね。
だけど、違う土地のスペイン語を話す人同士でも、特にラテンアメリカの人達の場合、隣の国や、隣の州に行けば、自分とは違うスペイン語を話してる、ってことに慣れてるから、あまり問題なくコミュニケーションできるんだよ。
それ、日本人にはわからない感覚!自分の母国語を外国でも話してるとか、日本人の日本語と違う、別の日本語が存在してるって、想像すると不思議。どんな感じ?
たとえば、僕はメキシコ人だけど、ペルーの人とスペイン語で会話する場合、メキシコ人の友達と話すのと同じように話したら絶対わかってもらえないから、スラングを使わずに、なるべく一般的な言葉を選んで話すんだ。で、話しながら「しまった、これはメキシコでしか言わない表現だったかな?」とか、「メキシコでは聞かない単語が出てきたけど、たぶんこういう意味かな?聞いてみよう」とか、そんな感じで、わかり合える言い方を探ったり、誤解がないかを確認してく。
相手も同じようにそうやって話してくれてると思う。
それいいね!どちらかだけが相手に合わせる努力をするんじゃなくて、お互いに、違いに配慮しながらコミュニケーションするんだ。
そうそう。こういう場合ってお互いスペイン語が母国語な訳で、どちらもその人の国では正しいスペイン語を話しているんだから、相手が悪いとか間違ってるって思わないじゃない。お互いに配慮しやすい状況なんだ思う。
英語が母国語の人と、外国語として英語を話す人が会話する時も、そうやって会話できたらいいんだね。母国語を話してる側が、「自分は母国語を正しく話せるんだから、相手が全部自分に合わせてくれるべき」っていう考えをやめるのが、外国人同士のコミュニケーションを円滑にする第一歩かも。
私の英語って聞き取りにくい?