性に関するコンプレックス、語ってみました/あも会レポ
チャリツモでは、“性”をテーマにしたワークショップ「あも会」の内容を記事にしてお伝えしています。あも会は、チャリツモライターのそらが、都内にて月1回開催しているワークショップです。
あも会中にケタケタ笑っちゃった話、「あるある」ネタ、みんなで一緒に考え込んだことなどを紹介して、性というテーマの“おもしろさ”と“難しさ”をお伝えできればうれしいです。
さて、気になる今回のテーマは…「性に関するコンプレックス、語ってみました」です。
ライター紹介
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Shii(イラストレーター)
化粧品会社でデザイナーをしている。
白文鳥と同居し、生き物と植物をこよなく愛します。いろんなものに興味を持ち、フラットな目線を心がけています。食べることと寝ることが好き。
今回は、性に関するコンプレックスについて、みんなで話し合ってみる回です。
コンプレックスですか。1人でモヤモヤと考え込みがちなテーマですね。
わかります。私も、そんな時代がありました(遠い目)。でも、「自分」や「普通」を、いつもと違う視点で考える回として企画しました。そういったモヤモヤも、ちょっと見方が変わるかもしれない、と思っています。
たしかに。もっと快適に、「自分」や「普通」と付き合うヒントが見つかるかも!
コンプレックスその1
胸が大きい
今は、あまりコンプレックスは持ってないのですが、10代の頃は自分の体が大嫌いでした。私、胸が大きい方なんですよね。当時は、かわいくなることに必死でした。私にとって「かわいい=細身」だったんです。だから、胸が大きい自分がとても嫌でした。
僕は男性なので、ちょっと聞いてもいいですか。「細い体型になりたい」という気持ちは、胸が大きいことと関係があったんですか?
当時の言葉をそのまま使えば、「胸が大きいのはデブの証」だと思っていたんです。だから、痩せたり、お化粧や髪型を工夫して、周りに「かわいい」と言ってもらったりしても、10代の頃はずーっと自分が嫌いでした。でも、ある日、考えが真逆に変わったんです!笑
え、何があったんですか!?
たまたま、ニッキー・ミナージュの曲「Starships」のミュージック・ビデオを見たんですよ。彼女は私と同じく胸やお尻が大きかったのですが、すごくおしゃれで、かっこよくて、美しくて、「あぁ、胸が大きいって悪いことじゃないんだ」って思ったんです。「Yo, Yo」と歌っているニッキーを見て、涙ぐんでいました(笑)
意外なところに、きっかけがあったんですね。
涙ぐみながら、「周りの大人は、誰も、自分の体型を受け入れるということを教えてくれなかったなぁ…」と感じた覚えがあります。それ以降は、胸の大きさは、むしろ、私の「愛らしい特徴」の1つだと思っています!エステや、毎日のマッサージでケアしているくらい、愛着を持っています。10代の頃を振り返ると、すっかり逆の人間になったなぁ、と思います(笑)
コンプレックスその2
自分の体に、素直に向き合えない
私は、最近、自分の体に向き合い始めたような気がします。実は、小さい頃から、親に「ブス」「デブ」「バカ」と言われてきたんですよね。ずっと兄と比較されて、生きてきました。それで、だんだん、自分が「ブス」や「デブ」じゃないと親に認められないと思うようになりました。
女性誌とか、電車の中の広告とか、色々なところで「女性の体ってこうだと素敵だよね!」っていうメッセージが発信されていますよね。それで、そのイメージがみんなに刷り込まれちゃう。でも、たしかに、親も、その刷り込みに大きく影響していそう。
自分で下着や化粧品を買うと、親に笑われてきたんです。だから、今も、自分の体をケアする・愛することにすごく抵抗があります。脱毛や筋トレ、お化粧など、自分の見た目をよくする行為は、自分なりに理由付けしないと、罪悪感が生まれます。
理由付けって、どんな内容なんですか?
例えば、筋トレをするときには、「痩せたいわけじゃなくて、生活の中でストレスが多いから、発散のためにやっているだけ」と思っています。自分の体や気持ちに、素直に向き合えないことが多いです。でも最近、周りの言うことを判断材料にするんじゃなくて、自分自身に目を向けることの大事さに気付いてきました。だから、最近は、自分をかわいく見せたいという気持ちや、自分の体を「素敵だね」って思える工夫に向き合えるようになりました。
すごく素敵な変化ですね。自分で「あ、かわいいな」って思ったものを身に着けたり、「やってみたいな」と思うことをやってみたり…という行為は、ふと、純粋に楽しい・嬉しい気持ちが芽生えたりしますもんね。
自分の気持ちをすくい取ってあげるようにして、自分の体と、もう少し楽しく付き合ってけるようになりたいなと思っています。
コンプレックスその3
性器が小さい、体臭が気になる
体関係で、僕も話していいですか。僕は、性器が小さいのと、体臭が強いことが、ずっとコンプレックスでした
あ、男性器の大きさって、「大きいとナントカ、小さいとナントカ」って噂みたいなものがあったりするんですか?私は女性なので、ちょっと気になりました。
いろいろな場で「性器が小さい男はダメだ、大きくしよう」という言葉が目に入ってくるので、「性器が小さいとダメなんだ」と思っていました。僕は男性とセックスするんですけど、いちいち、相手と自分の性器の大きさを比べていたんですよね。相手のほうが小さいと「よし!」と思ったりなんかして。
体臭も、セックスのときや、恋人と一緒に過ごすときに、自分で気になる、という感じですか?
そうです。コンプレックスなので、人一倍、香りのケアをしています。そういった努力も、絶対、人前で見せないようにしてきました。でも、今の彼氏は、違ったんです。「体臭が強い人はすごくセクシーだ」と言ってくれるんです。それと、彼は外国人なのですが、僕の香りを「母国のスパイスの香りに似ていて大好き」と言ってくれます(笑)
母国を思い出す香りなのですね!素敵だなぁ。
自分が嫌いだった一面を、すごく好きだと言ってくれて、正直びっくりしました。嬉しかったです。あとは、仕事などで自信を持てるようになったら「性って、自分の要素の1つにしか過ぎないな」と気づきました。だから、最近は、性器の小ささも気にならなくなってきました。
コンプレックスその4
セックスをしたことがない
僕は、交際やセックスをしたことがないことがコンプレックスです。30歳までセックスをしたことがないと、魔法使いになるという噂がありますが…魔法使いになるタイミングが近づいているんです。
初体験の年齢を気にするのって、あるあるですよねぇ。「セックスをしたいなぁ」と思った相手・タイミングにすればいい。だから、基準なんてないはずなのに、って思いますけどね。
セックス未経験がコンプレックスなのだけど、かと言って、風俗に行ってセックスをしたいとは思わないんですよねぇ。だから、自分にとっても落としどころを探している最中です。
落としどころ、大事ですね。Fさんが語ってくれた気持ちには色々な意味が混じっていて、「セックスしたい・したくない」と簡単に語れる話ではないように思えました。そういう微妙な色合いは、自分自身で大切にしてあげたほうがいいような気がします。それを無視してセックスしても、後でモヤモヤが残るんじゃないかなぁ…。
私も、セックスしたいという気持ちがスッと芽生えたときにした方が、本当の意味で楽しいんじゃないかな、と思います。でも、周りが立てた基準って、どうしても目に入ってきますよねぇ。
自分じゃなくて外に目を向けて、周りが提示する「普通」を正解だと見なすのって、ある意味、楽ですもんね。だって、考えなくていいから。
「自分に目を向けてあげる」という意識を持って、自分が心地いいと思うポイントを探していきたいですよね。
コンプレックスその5
セックスをしたいとあまり思えない
セックスに関連して、私もコンプレックスがあります。私は、性欲があまりないんですよね。「性欲がない」ということも、「少しだけ性欲がある」ということも、どちらもうまく処理できていないです。
僕と同じく、落としどころを探している状況なんですね。
「他人に性的な魅力をほぼ抱かない」とアセクシュアルいう性のあり方を知って、アセクシュアルの当事者グループに参加したこともあります。でも、正直、自分にしっくり合う感じが、あまりなかったんです。
どういうところが、しっくりこなかったんですか?
アセクシュアルのみなさんと話していて、セックスをしたい気持ちの度合いが、自分とは微妙に違う感じがしました。でも、異性愛の友人と話していても、違和感があったり、「わかってもらえないなぁ」と思うことがあったりして、悩んでいました。
今は、近い感覚の人は、身近にいるんですか?
今は女性と付き合っていて、彼女とは「セックスしたさ」の感覚が似ているので、心地良いです。何度か、男性と付き合ったこともあります。セックスの感覚が合わなくてうまくいかなかったこともあれば、セックスなしで2年間くらい付き合ったこともあります。でも、やっぱり、セックスの価値観で言えば、今の恋人が1番居心地がいいかなぁ。
色々な性のあり方があるので、カテゴリ名で考えるよりも、自分がしっくりくる表現を見つけられるとモヤモヤも少ないですよね。 自分の性的指向※に違和感のない範囲で、価値観の合う相手を探していけるといいですね。
コンプレックスその6
ED(勃起不全)
僕は、ED(勃起不全)がずっとコンプレックスでした。セックス中、気分が上がると勃起するんですけど、いざ挿入しようとすると、しぼんでしまうんです。最初のセックスでこういう経験をしたら、もう、その印象が強くなってしまって。「また、あぁなるんじゃないか」と、セックスや交際に対して不安や恐怖の気持ちをずっと抱いてきました。
今も、そういう気持ちはあるんですか?
2〜30年もの長い間セックスや交際が怖かったんですが、最近ようやく、自分の体の特徴について「こういうものだ」と思えるようになりました。実は、ずっと認めたくなかったのかもしれません。「いつか、奇跡的に、挿入できるようになるだろう」って。
でも、近ごろは少し自分のことを受け入れられるようになったので、この前、泌尿器科に行ってみたんです。
専門家を頼るのも、よい案ですよね。
そこで、ED(勃起不全)という診断を受けて、薬を処方してもらいました。薬の力を借りることで、挿入ができるようになったんです。
体の機能は変わらないのですが、最近、少しずつ、コンプレックスへの向き合い方が変わりつつあるように感じます。
コンプレックスを振り返って
コンプレックスって、自分の中で考え込むことが多いので、こうやって人に話す機会は新鮮でした。
当たり前ですが、みなさん、生活の中で、それぞれ色彩豊かな経験や気持ち、ストーリーを持っていますよね。でも、「普通」とか「基準」って、そういう個々の色彩やデコボコを取り除いて、まっ平らにする側面があるんじゃないかと思います。
まっ平らなものと自分を改めて比べると、「なんかちょっと違うなぁ」って思うところが出てくるものですよね。
自分のことって、見ているようで、見えていないですもんね(笑)見ている・気にしているのは、案外、周りの「普通」だったりして。
自分にとってのコンプレックスも、他人にとっては全然気にならなかったり、逆に魅力的だったりしますもんね。そういう声を聞くと、自分にとってはすごく大きく見えていたコンプレックスが、すーっと小さくなることもある。
私も、みなさんのお話を聞いて、「自分はコンプレックスを乗り越えたいわけじゃないな」と気づきました!
だから、「セックスをあまりしたくない」という気持ちと付き合いながら生きていきたいな、と思いました。
あも会のまとめ
コンプレックスって、1人でモヤモヤと考え込みがちだと思うのですが、みなさん、すごくオープンに語ってくれましたね。
そのモヤモヤを、少し離れたところから見つめる機会になったような気がします。みなさんのお話を聞いていて、「自分はこう存在しているのだ、だからこの自分と共に生きていくのだ」という思いが見えたような気がします。自分が「こうある」ことを受け入れるというか。諦めとはちょっと違いますが、「自分を受け入れよう★」というキラキラした感じでもなく…うーん、うまく言えないですが。
僕も、自分の足で歩んでいく中で得た、「受け入れ感」という印象を抱きました。僕も、性に限らず色々なコンプレックスを持っていますが、みなさんのお話を聞いて、心が軽くなりました。
それでは、またのあも会レポートをお楽しみに!
あも会のご紹介
あも会とは、都内にて月一で開催されている、性について楽しく対話をするワークショップです。2018年4月に始まって以降、10代から60代まで、ストレート(異性愛者)からマイノリティまで、多様な方に参加いただいています。毎回、笑いが絶えない、明るい対話の場となっています。
お子さんがいる方々からは「あも会で話し合ったことを、毎回子どもに伝えています」とコメントをもらうほど。
性に関するトピックは、私たちが生きる上で土台となる概念がたくさん詰まっています。でも、多くの人が、教えてもらえないし、相談する場所もない、という状況だと思います。そこで、みんなで楽しく笑い合いながら、考え合いながら、対話できる場があるといいなと思い、あも会を始めました。
グラウンドルールが守れる方であれば、性に関する話題に興味がある人、性について悩んでいる人、下ネタが好きな人、異性愛者、セクシャルマイノリティ、どなたでもウェルカムです!気になった方は、ぜひ以下のURLにアクセスしてみてくださいね。
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