kame cinema 04『秘密の森の、その向こう』
皆さんこんにちは。イラストレーターのkameです。
今回紹介する映画は、現在公開中のセリーヌ・シアマ監督作品「秘密の森の、その向こう」。
8歳の少女ネリーが、亡くなった祖母の家のある深い森の中で、8歳の母親に出会うという不思議なお話です。
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『秘密の森の、その向こう』
わたしの母は、どんな幼少期を過ごしたのだろう。
どんな遊びをして、何を考えていたのだろう。
この作品を見ながら、ふとそんなことを考えました。
母親が、かつて子どもだったなんてことは、なかなか想像できないものです。
自分が産まれた時から、母は母であり、母親ではない母のことなんて、なにも知らないのですから。
母がわたしを産んだ歳と同じ歳になって初めて、彼女の偉大さと、苦労と、そしてずっと「ひとりの女性」だったんだということに気づき、大きな感謝とともに申し訳ないきもちになりました。
この作品に出てくるマリオン(主人公ネリーの母親)は、娘のネリーを愛しているけれど、どこか「母」という肩書きを素直に受け入れられていないように感じました。
それは、夢半ばで若くして母親になったからなのか。
ただ単に、母を亡くしたショックで他のことを考えられずにいたのか。
はっきりと理由はわからないけれど、終始どこかぼんやりとした印象を受けました。
わたしは子供を産んだ事がないので、当然母親になったことはありません。
だから母親の気持ちはわからないけれど、「母親でいること」と「娘であること」を両立させるのは、とても難しいことなのかもしれません。
母は母親である前に、ひとりの女性であり、だれかの娘だということ。
当たり前だけれど、忘れがちなそんなことを気づかせてくれる映画でした。
この映画は、映像がとても優しく綺麗で終始素敵な作品なのですが、とにかくラストシーンが素晴らしい。
このラストシーンの、最後の一言のために観てほしいです。
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【全国順次公開中】
「秘密の森の、その向こう」(2021)
監督・脚本/セリーヌ・シアマ
音楽: Para One
撮影: クレア・マトン
プロデューサー: ベネディクト・クーヴルール
配給:ギャガ
作品の詳細はこちら
あらすじ
8歳の少女ネリーは両親と共に、亡くなった祖母の家を片付けに来る。
母を亡くしたネリーの母親マリオンは、悲しみに耐えきれず夫と娘を置いて家を出て行ってしまった。
その後ネリーは一人遊びに行った森の中で、自分にそっくりな女の子と出会う。
その少女は幼少期の母、8歳のマリオンだった。
この映画は、8歳のマリオンとネリーが過ごした3日間のお話。