スナック菓子が、森林破壊の原因に?パーム油生産の裏で、住む森を奪われるオランウータンたち。
昨年12月、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンが、パーム油生産による熱帯雨林破壊について問題提起する動画『ランタンの物語』を公開しました。動画のナレーションに協力したのは、タレントのベッキーさん。動画は、少女とオランウータンの「ランタン」の物語をアニメーションで描き、パーム油に隠された事実を伝えています。
ベッキーさんは、動画について
「最初、ビジュアルの可愛さに興味を持ったのですが、見たら驚きの情報が詰まっていました。パーム油のことは全然知らなくて、むしろ、自然っぽくていいのかな?と思っていました。でもこの動画を見て、その背景にある問題を知れてよかったです」
と話し、視聴者には
「気軽な気持ちで見てもらっていいと思います。そして動画に詰まっているメッセージを感じてもらえれば」
と伝えました。
■動画のストーリー
少女の部屋に突然やってきたオランウータンの女の子「ランタン」。部屋を荒らしたり少女のものを勝手に使ったりとやりたい放題で、少女は困り呆れた様子。ランタンに出て行って欲しいと伝える少女ですが、ランタンが少女の家に来なければいけなくなった本当の理由とは・・。
パーム油って?
パーム油は、「アブラヤシ」というヤシの実から採取される油のことです。そのほとんどは食用に使われています。私たちがよく口にする、ポテトチップスやカップラーメン、チョコレートなどの多くに、原材料としてパーム油が使われています。
パーム油は年間を通じて大量に収穫でき単価が安いことなどから、世界的に生産量が増えており、アブラヤシの大規模なプランテーションが急速に拡大しています。
そして、そのプランテーションを作るために行われる森林破壊が、深刻な問題となっているのです。
例えば、インドネシアでは1990年〜2015年の間に、約2,400万ヘクタールの熱帯雨林が破壊されました。(インドネシア政府発表)
日本全土の広さはおよそ3800万ヘクタールですから、インドネシアだけでも日本の国土の3分の2近くの広さの熱帯雨林が失われてしまったのです。
森林破壊の最大の要因は、プランテーション部門(パーム油とパルプ)といわれています。
なくなるのは熱帯雨林だけじゃない
熱帯雨林の減少は、洪水の被害の増加や水質悪化につながります。
被害を被るのは、人間だけではありません。川沿いの森が失われることで、多くの野生動物も生活の拠点を失う危機にさらされているのです。
世界中でパーム油の生産によって脅かされている絶滅危惧種は193種にも上ります。
マレーシア・ボルネオ島※のオランウータンのおよそ半数は、わずか16年で消滅してしまいました。その主な原因は、パーム油産業による生息地の破壊です。
地球温暖化の原因にも
熱帯雨林は、空気中の二酸化炭素を炭素化合物として留めておく機能を持っています。
そのため、熱帯雨林が失われると炭素が二酸化炭素となって空中に排出され、地球温暖化をさらに進めることにもなるのです。
実際、熱帯雨林の伐採が原因で排出される温室効果ガス(二酸化炭素など)の量は、EU(ヨーロッパ連合)全体の排出量を上回るほどになっています。
昨年10月、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球の気温上昇を産業革命前にくらべて+1.5度未満に制限するために、森林破壊を即時終わらせるよう求めました。
大きな企業に動きが
昨年12月、世界のパーム油40%を供給する最大手企業のウィルマー・インターナショナルが、130万以上の市民が声をあげた結果として、パーム油の供給元を特定し監視する具体的な行動計画を発表しました。
実は2010年の時点で、世界的な日用品メーカーとパーム油取引企業は、「2020年までに商品の仕入れ〜出荷までの過程で、森林破壊をしないようにする」という約束していました※。
しかし、目標期限の2020年が迫るなか、これらの企業はその約束をほとんど果たせていません。その原因の一つが、取引企業とメーカーが、自分たちの製品につかわれる原料が、どのプランテーションから調達されているのかをきちんと把握できていないことにあります。
この問題を解決するために策定されたウィルマー・インターナショナルの新たな行動計画では、2019年末までに同社が取引をしているサプライヤーの全土地を特定することを約束しました。
また森林破壊を確認するために、高解像度の衛星モニタリングを使用。熱帯雨林を伐採した企業とは、直ちに取引を停止するとしています。
この約束が果たされれせば、衛星での監視により、森林破壊業者が逃れることはほとんど不可能になります。パーム油産業に大きな影響を及ぼすとともに、森林破壊の撲滅に一歩近づくことができるでしょう。
同業他社が同じような方向に進むかどうかも注目です。