第1回「教育とは何か」

はじめまして、こんにちは。「東京に新しい学校をつくる会」という団体のメンバーで教育学者の宮野祥子と申します。今日から、この場を借りてコラムを書かせていただくことになりました。
「東京に学校をつくる会」は東京都内に、新しい一条校(学校教育法の第一条にさだめられた学校※)の設置を求めて活動している団体です。
このコラムを通して、この会に関わる私たちがなぜ新しい学校を求めているのか、どんな学校が必要だと考えているのかなどが、皆さんに伝わるとうれしいなと思っています。
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東京に新しい学校をつくる会、第1回のコラムです。
第1回では、「教育とは何か」を考えることから始めたいと思います。
「教育とは何か」という問いには様々な答え方ができます。今まで数多の人たちが探究してきましたが、今回は、学びと教育の関係から「教育とは何か」を考えてみます。まず、次のように問われたらどのように答えますか?
「学びと教育、どちらが先にありますか」
みなさんそれぞれ頭の中に答えが浮かんでいると思います。学びのとらえ方によってはどちらも間違いではないと思います。(ちなみに、大学の授業で同じ問いをすることがあります。教師を目指している学生さんは教育と答える人が多い一方で、芸術を学んでいる学生さんは、ほとんどの人が学びが先と答えました。)
学びのとらえ方によってはどちらも間違いではないと書きましたが、学びについて考えを深めるために、今度は次の質問をします。
「あなたは、どうやってことばを話すようになりましたか?」
特別な場合を除いて、ほとんどの人は自然にことばを話すようになったと思います。周りの大人たちの話を聞いて、突然話すようになりますよね。言語教育は学校教育のなかでも重要な位置づけにありますが、そもそも赤ちゃんは誰からも教えられることなく自律的にことばを学んでいます。
もしかすると、ほとんどの芸術系の学生さんが学びが先と答えたのは、芸術は教えられるものではなく、自律的に表現していくしかないものだから、そのように考えるのかもしれないですね。
人間はみな生まれながらに学ぶ力をもって生まれます。どんな子どももすでに自律的に学んでいるのです。
そう考えると、「教育とはなにか」という問いに対して「一人ひとりが生まれながらにもつ自律的に学ぶ力を信じ、さらに学びが活発に生じるように働きかけていくことが教育だ」と答えることができます。