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チャリツモには、「これイイ本だなぁ!」と思った本を、みんなで持ち寄って作る本棚“これイイ本棚”があります。 ここではこの本棚に集まった本を、一冊ずつご紹介します♪

描くのは、欠けた身体の女の子。イラストレーター 須川まきこさん

こんにちは!チャリツモライターのUniversalMovementです。
チャリツモの本棚で、素敵な画集を発見しました。

ピンク地の装丁には、妖艶なポーズで寝転ぶ女の子。

ピンク地の装丁には、妖艶なポーズで寝転ぶ女の子。
よく見ると、左足は義足です。

この本に描かれているのは、腕や脚などが欠けた女の子たち。身体の一部が欠けている女の子たちを優美に、エロティックに描いた画集なんです。
そのタイトルはずばり「Lady Amputee in Powder Room」(化粧室の欠損女子)

いつもはUniversalMovementという障害をテーマにした連載をしている私。 私自身、肢体不自由も含めて障害のある人や生活を、どのように魅力的に描いて伝えて行くかということを日々考えています。
そんな私、もちろんこの画集に一目惚れ。

なんとかこの本の作者に話を聞きたい!と思い、この画集を作ったイラストレーターでアーティストの須川まきこさんをお招きし、インタビューしちゃいました。

プロフィール

  • 須川まきこ
    アーティスト。イラストレーター。
    和歌山県生まれ。
    京都造形芸術短期大学専攻科卒業。
    2012年ローマと東京で個展を開催。
    ほかにも国内外の企画展示会に多数参加。
    著書には、画集「Melting」「Lace Queen」、絵本「ニーとメメ」がある。
    モデルや衣装デザインなど、イラストレーターの他にも活動は多岐にわたる。
イラストレーターの須川まきこさん

ここから インタビュー だよ♪

義足の女の子を描く理由

アーティストになるまでの道のりを教えてください。

子供の頃からコミック、特に高橋留美子さんのマンガ「うる星やつら」が大好きだったんです。私もこんなのを描きたいなと思ってずっとノートの端っことかに描いてたのだけれど。

大人になってからはね、大学でグラフィックデザインを学びました。
大学卒業後、ラッキーな事にデザイン事務所に入れて。でもやってみると、グラフィックデザインの仕事って発想だけじゃなくて論理的に考えることもとても必要な仕事だったの。左脳がごそっと抜けてる私には難しいなって(笑)。

でも、デザイン事務所に依頼されるイラストの仕事をしてたらやっぱり楽しいなって思ってたのね。そのあたりから、自分のオリジナルの絵を描けるようになりたくて、今の絵を描き始めました。

須川さんの描く義足の女の子

エロティックで、キュートで、優美な女の子達。この世界観はどこからきているんですか?

今のテイストになったのは、やっぱり高橋留美子さん のコミックの影響が大きいです。うる星やつらのラムちゃんがすっごく好きで。彼女、とても素敵でしょ。
女性がイキイキと描かれているうる星やつらの世界観に憧れて、私も女性をモチーフに絵を描いていました。お洋服だったり、ファッションアクセサリーだったり。色んな女性像、女性の私生活、女性の人格を表現するのが楽しいの。

須川さんが描く義足の女の子2

義足の女の子を描き始めた理由を教えてください。

自分が病気で義足になったことがきっかけです。

13年前、悪性腫瘍ができて、その悪性度がすごく高かったんです。
初めは太ももで切断したんやけど、また再発。
次に、骨盤から大腿骨を外す股関節の手術をして。

今は、股義足を履いてるんです。

義足の種類

そのときの須川さんは、どんな気持ちだったんですか?

手術後に自分の脚を見た時は、とても不思議な感覚でした。手術前から脚を失うことは覚悟していたつもりでした。けれど、実際になくなってみると、「あぁ。本当に私の脚、なくなってしまったんやなぁ。もう脚、ないんやなぁ。」って。

脚を失ったんやけど、「脚を失った自分の体をどうやって受け入れたらいいかな」と思った時に、絵を描いてみたんです。
ファッション雑誌を見て頭の中でお洒落なメージを抱くと、自身を受け入れる事ができるから。
義足の女の子とか、脚の無い女の子を得意とするファッションイラストを素敵に描くことで、目から入れた情報で自分を納得させる。そしたら、自分の体も受け入れる事が出来るんではないかなと思って。
病院のベッドの上で、初めて脚の無い女の子を描きました。

義足のイラストレーター須川まきこさん

心残りは、ハイヒールを履けないことくらい

義足の生活で困ることはありますか?

わたしの周りで義足を使っている友達は、義足になった時点で「前はあれができたのに、今できないとかあんまり比べなくなったよね」って言う子が多いかな。 反対に義足になってから、意識してできる事を探している子達が多い気がする。 だから今までやったことのなかった陸上を始めたり、スキーを始めたりする人も多くて。

まあ、ハイヒールが履けない事は唯一残念だなと思いますね。 でも、それ以外は行きたいところに自分で行けるし、できない事を考えるっていうのが意識的になくなりましたね。 私は病気があったからこそ、機会があればできるだけ出かけることにしたり、海外に行ったりするようになりました。

力強く、そして美しく義足を着こなす女性たちのファッションショー「切断ヴィーナスショー」。須川さんが衣装デザインを担当した。自身もモデルとしてステージに立っている。「最初は義足を履いてモデルをやることに正直抵抗がありました。しかし、義足の仲間と一緒に歩くことで、心が強くなっていくのを感じました。」

趣味はなんですか?

道の駅が好きです!
よくみんなで車に乗って遠出するんです。その時道の駅に寄るんですよね! コンビニってどこ行っても同じ物が売ってるでしょ?でも、道の駅はその地域ならではの物が売ってるの。
例えば、みちの駅に売ってる花。一般の花屋さんには流通していない物があったりするんです。しかも、とても安いの!
最近良かった道の駅は、草津の渋川にある、“こもち”っていう道の駅。とても甘いイチゴが売ってて。しかも、スーパーよりもはるかに安いんですよ。

道の駅について語る須川まきこさん

日本にはまだ、外に出られない人がたくさんいると思うんですよ。

須川さんが描く理想の社会って、どんな社会ですか?

10年前くらいに、アメリカのポートランドに絵の展示で行った時のこと。車いすの男性が一人でトロリーの乗り降りをしてたのを見てね。その感じがとても日常的だし、本人も軽やかだし。周りの対応もとても自然だったんです。社会のインフラにストレスがないように見えたんです。その光景を見た時に、街が成熟してんねんなと思って。

日本はまだ、障害が理由で外に出られない人がたくさんいると思うんですよ。
そういう人がもっと外に出られればいいなと思うんやけれど。
そうなるために必要なことが、インフラなのか、システムなのか、人々の心なのか。何を変えればいいのか…?
まずは外に出る垣根がもっと低くなる何かがあれば、状況は変わっていくやろうなと思いました。

トロリーバスの乗り降りのシーン

おわりに

足を失った後も、いろいろなことに挑戦し続け、アーティストとしての魅力を発揮しながら生きる。そんな須川さんの前向きで自然体な姿が、わたしに勇気を与えてくれました。

今回ご紹介した須川さんの画集「Lady Amputee in Powder Room」はこちら↓からご購入いただけます。

ライター:
UniversalMovement
湘南在住のライター。キーワードは、障害、人権、共生社会。Instagramを中心に共生社会を目指し情報発信をしている。
「障害がある人に対するネガティブなイメージ、世の中にありすぎやしませんか。UMはそのイメージをとことん壊していきます。」が活動モットー。SF映画と、ワインと、ねこちゃんが好き。
Instagramはこちら→@universal.movement
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船川 諒
WEBデザインと、記事の執筆&編集を担当しています。
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