今年の京都大学の卒業式、経済学部の代表はなんと63歳!楽しすぎる学び直しライフ!
人生100年時代と言われて久しいこの頃。
そんな時代であなたはどんな風に生きていきたいですか?
BOLD(形容詞):大胆な、勇敢な、物おじしない
年齢や常識にとらわれず、時に大胆に、物おじせず、自分の思うままに挑戦し続ける人々に光を充てるこのコーナー。
私たちの身近にいる人から話題の人まで、素敵に年を重ねるロールモデルと対談します。
今回インタビューしたのは、現在京都大学の大学院経済学研究科に在学中の村田さん(仮名・63)。村田さんは30年以上銀行員として働いたのち一念発起し京都大学にへ入学。そして昨年度の学部卒業時には代表にまで抜擢されました。
そんな村田さんに貪欲に学び続けるための秘訣を聞きました。
プロフィール
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インタビューするひとがい
チャリツモライター -
インタビューされるひと村田さん(仮名)
京都大学大学院に在学中
インタビューは
ここから!
本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
村田と申します。今年で63歳で、家族は妻と息子が2人います。
59歳のときに、京都大学経済学部に入学しました。今京都大学の大学院在学中ですが、京都大学に入る前までは30年以上銀行員をやっていました。
銀行員になる前にも大学には通っていたのでしょうか?
大学には通っていました。京都大学ではないけど(笑)。
あの頃は、なんとなく4年間を過ごしていました。
とても意外です。京都大学に入り直して学部代表に選ばれるくらいなので、当時から色々なことをしていた優秀な方なのだろうと勝手に思っていました。
とんでもない!授業もほどほどに出て成績もそこそこ、でも特に何かに打ち込むわけでもなかった。当時は本当に中途半端な大学生でした。今思えば本当に勿体無いことをしたなあ。
学び直しのきっかけは?
早速ですが、どうして大学に入り直そうと考えたのでしょうか?
そもそものきっかけは、銀行員時代にある2人の方に出会ったことです。
その2人は、両方とも他行の方だったんだけど、途中で銀行をやめて大学に入り直したんです。
1人は今の私くらいの歳の方で、ある中国文学の教授の本をよく読んでいて、 「その人のもとでもう一回勉強し直したい!」って言って、その教授がいる大学に入り直したんです。
もう一人は当時の私より少し年上の方でしたが「慶応ボーイになりたい!」って言って本当に慶應大学に入っちゃいました。
そういう人たちと話していて、「こういう生き方いいなあ〜」って思っていたのが頭の中にずっとチラチラ残っていたんです。
それでしばらくしてから次男が北海道大学に入学して、次男のもとへ遊びに行ったついでに実際にキャンパスも見にいったんです。そこがものすごく広くて綺麗で、学生たちも伸び伸びしていて「やっぱり大学っていいなあ、もう一度勉強したいなあ。」って思ったんですよ。
そのときに、さっき言った2人みたいな人もいるっていうのを知っていたから、「大学に入り直すのもアリなんじゃないか」と思ったんです。
幸いその頃には関連会社に出向になって、仕事もそこまで忙しくなかったので、試しに勉強して大学を受けてみようと思ったんです。それを妻にも言ってみたら、どうせ受験勉強なんて続かないと高をくくっていたから、いいんじゃない、やってみれば、と言って背中を押してくれたんです。それと息子たちも勉強を教えてくれて、応援してくれていたかな。
楽しくてやめられなかった!人生2度目の受験勉強
素敵なご家族をお持ちのようですね!
そうして2度目の受験勉強をすることになったと思うのですが、正直大変ではなかったですか?
もちろん大変だった部分もありました。でも2度目の受験勉強は18歳の頃の受験勉強とは違って、やめられなくなっちゃうくらい面白かったんですよ。
仕事をしながら勉強していたから、翌日仕事に備えてちゃんと寝なきゃいけないけど、寝ている時間がもったいないと感じるくらい勉強が面白くて。
何年も経つと物事への感じ方も変わるんだなあと思いました。
それと人間の脳ってすごいなあって思ったことがあって、自分が10代の頃一生懸命勉強したことっていうのは意外と残ってるんだよ。
というのも、例えば英語の勉強をしていて、高校生の頃一生懸命勉強していた英単語とかが頭の中でブワーッと沸いてきて、少しずつ少しずつ当時の記憶が蘇ってくる。そして一度思い出したら忘れないんだよ。会社でも国際部門にもいたことがないから、30年以上英語なんて触れていなかったのにだよ。
すごく昔のことでも、一生懸命やったことは脳や体に刻み込まれているものなんだね。
ただ、若い頃チャランポランにやったことっていうのはかけらも残っていないんですよ。例えば国語の古典とか嫌いで、昔は適当にやっていたんだけど、そういうのは全然沸いてこない。イチから勉強しなきゃいけなくて、新たなものを積み上げていくっていうのは、この年だと結構大変でしたね。
だから、若いうちにいろんなことを一生懸命にやっておくといいと思うよ(笑)。
40年ぶりの大学生活
実際に入学してみて学生生活はどうですか?
自分の学びたいことを自由に学べて最高に楽しいね。しかも周りにいるのは若い人ばかりだから、気持ちもものすごく若返る。鏡を見ないと自分が20歳前後の学生なんじゃないかって、本当に勘違いする。周りから見てもイキイキしているみたいで、友人からも羨ましがられることもあるよ。
それから、去年学生寮を出て今はアパートで独り暮らしをしているんだけど、自由にさせてくれている妻には感謝しながら生活してるよ(笑)。
確かに、とても活き活きしてますよね!私が大学生だった時よりも活き活きしているかも…。とても素敵な大学生活を送っているようで羨ましいです。
ちなみに、周りが若い人ばかりで居心地が悪いなあという風に思ったことはないのですか?
正直はじめはあったね。
入学する前だけど、予備校で受けた模試の時とかに周りに若い人ばっかりでちょっと気後れすることがありました。ただ働きながらの受験勉強を3年間もやっていたわけだから、大学に入る頃にはもうすっかり慣れちゃって(笑)。
授業で席の近い学生に話しかけたり、あと寮に住んでいたので、寮で一緒の学生たちと話したりして、若い人たちとも交流しています。
意外と向こうも受け入れてくれるんですよ。
若者たちへ「ぜひ恥をかいて欲しい」
大学で若い学生たちと一緒にいることも多いようですが、彼らに対して何か思うことはありますか?
当然色々な学生がいるけど、最近の若い人たちってあんまり目立ちたくない人が多いのかなあって思いますね。
例えば、授業中に議論する時とかに、ほとんど自分から発言したりしない。でも話を振ってみるとちゃんとした意見は持っている。みんなとても優秀で、かなりしっかりした意見を持っているのに、なんとも不思議ですね。
なるほど。私自身も発言して失敗したらどうしよう、恥をかいたらどうしよう、と思ってしまってあまり発言できないタイプです(笑)。
若いうち、特に大学生なんて失敗して恥かいても全然いいと思うんだけどなあ。だって恥をかいたって失うものは何もないじゃない。給料が減るとかそういうわけでもないし。
失敗して恥をかく。そしてこれが骨身に染みる経験になる。それを繰り返して色んなことを学んで、どんどん成長していくんじゃないですかね。
それと、若い人たち、特に大学生には、勉強でも部活でも、とにかく何かに打ち込んで欲しいとも思うな。何もしないでいると失敗もしないし、恥をかく機会も生まれない。せっかく、有り余る体力や豊かな感受性、それに柔軟な思考力もあって、時間までたっぷりあるんだから。とにかく何もしないのはもったいないよ。残念ながら、今の私には時間しかないけど(笑)。
私も前の大学生活をどちらかというと無気力に過ごして、とても勿体無いことをしたなあと後悔しているからね。
働いた経験があるからこそ見える、学問の世界
大学での授業はどうですか?
授業もとても面白い。色々な授業を取りまくって、刺激たっぷりの最高の毎日ですよ。
あと、経済学部でよかったなと思うのが、自分が銀行員として経験してきたことが理論として学べること。なんと言うか、自分がやってきた実学と理論が結びつくと言うか、それが本当に面白い。
それと、京都大学の先生方はとても熱心に私のことを指導してくれるんですよ。彼らは、私のどんな質問にも真正面から私にわかるように答えてくれる。
それに加えて、図書館に行けば文献は山ほどある。
こんな京都大学という恵まれた環境にもとても感謝しています。
「面白いに決まっている」学び直しを広めたい
話を聞いていると、学び直しというのはいいことばかりですね。
確かに年を重ねたあとに学び直すとなると、粘りがなくなったり、記憶力が悪くなっていたりと不利な点もある。だけど、それ以上にこれから研究者とか学者になって生計を立てていかなきゃ、というプレッシャーを感じることなく、研究テーマなんかも好きに学べるっていう強みがあるんだよね。
この歳になるともう子育てとかも一通り終わっているわけだし、ある種好き勝手できるんですよ。これほどの強みはないと思う。
もし学びたいっていう気持ちが少しでもあるなら、大学でもいいし、大学は厳しいっていう人でも通信制の学校だったり、選択肢はいくらでもあるから、自分に合った学び方を見つけてぜひ始めてみて欲しいと思うな。
ちなみに「学び直し」をご友人に勧めたりはしていますか?
勧める、というか「こういうことをしているぞ」 っていう風に話したりはするかな。 そうすると大体は「真似したい」といってくれるんだけど、実際に踏み出した人はほとんどいないと思う。 ただ最近友人の1人で「同じようなことを始めたぞ」って報告してくれたやつがいて、彼は「本当に面白い、真似してよかった」と言ってくれていますね。
まあそりゃあ面白いに決まってるでしょ、と私は思っちゃうんだけどね(笑)。
時間は有限、恐れずに一歩踏み出してみて欲しい
最後になりますが、村田さんと同じような挑戦をしようとしている人たちにエールをお願いします。
あまり周りの事を気にしすぎず、自分の興味関心の赴くままにぜひ一歩踏み出して欲しいとは思います。踏み出した先にはきっと素晴らしい世界が広がっているから。
もしやってみてつまらなかったら、やめちゃえばいいんですよ。きっとそんなことないと思うけど。
あと人生100年時代と言っても、まだまだ時間があるとは思わないほうがいいとも思うな。
平均寿命から考えると、私も自分の意思で好き勝手出来る時間はそんなに長く残っていないと思っていますし。
自分の人生なんだから、好きにやらないと。
取材を終えた感想〜
あとがき
年齢を全く感じさせない活き活きさと若さを持つ村田さん。むしろ私が元気をもらってしまいました。
「学び直し」もそうですが、「何かにチャレンジする」ということは、その人を活き活きとさせる。
村田さんが言うように、「まだまだ時間がある」と思わないことは人生を充実させる秘訣なのかもしれません。人生100年時代とは言いますが、本当にそれだけ生きられるかもわかりませんし、まだまだあると思っていたらあっという間に100年すぎていた、ということもあり得ます。やりたいと思った事はすぐに実行するのが吉かもしれません。躊躇している時間がもったいないですね。
私自身も学ぶことの多いまさに骨身にしみるインタビューとなりました。