1人目のお客さん / Docさん(アーティスト)
日々、制作活動をするチャーリーの家の住人のもとには、時たまお客さんが訪れます。
そんな素敵な出逢いを、インタビューにして記録する企画がこちら。
お客さんひとりひとりのエピソードに迫ります。
1人目のお客さん
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DOCさん
アメリカ合衆国シカゴ出身。6年前に日本に移住し、デザイナー兼アーティストとして活動している。2017年には自身のファッションブランド「CLOTH™」を立ち上げた。
片道切符を手に、日本を目指した23歳
ドックさんは、日本に来てどのくらい経つのですか?
日本には6年くらい住んでいるよ。今では自分のブランドも持っているよ。
デザイナーを始めたのは16歳の頃。音楽業界で、フライヤーなどの商業デザインから始めたんだ。
そこから徐々に、ストリートウエアのデザインを担当したり、仕事の幅が広がってきた。
ストリートウエアの仕事は好きだったなぁ。でもあるとき、自分が働いていたブランドが、ストリートウエアからメンズウエア中心にテイストを変えちゃった。
自分としては、もっとストリートウエアを作っていたかったから、そのブランドでの仕事は辞めたんだ。
そのあと日本に来てからは、アーティストのビデオの仕事に参加したり、ツアーグッズを作ったりという仕事をしたよ。
なるほど。日本でマルチに活動してらっしゃるんですね。ちなみになぜ日本に来ようと思ったのでしょうか。
ヒトコトで言うと、アメリカから抜け出して日本で絶対に成功するつもりで来日したんだ。
自分がアメリカでデザイナーとして働いていたとき、ストリートウェアのブランドがたくさんあって、似たようなブランドが溢れていたんだ。同じようなブランドやデザインの中で自分が埋もれていってしまうんじゃないかと不安な気持ちになったんだ。
自分のデザインには日本のアニメーションが大きく影響しているんだけど、自分のオリジナルなデザインを追求する為にも、大好きだった日本に行きたいという気持ちが強まったんだと思う。
そんなある日、車に乗っているときに交通事故にあって、保険金を手にした。その時自分自身に問いかけたんだ。
「この保険金を使って、また車を買って、これまでと同じ仕事に戻るのか?」
「それか、このお金で航空券を買って、日本に行くか」
ってね。
このまま、好きじゃない仕事を続けることは考えられなかった。日本行きのチケットを買って、住んでいたアパートを引き払って、バックパックとスーツケース、そしてポートフォリオだけをもって、東京に降り立ったんだ。
成功以外に道はない。自らを追い込んでつかんだ成功
なぜ行き先が日本だったのでしょう。それまで日本に来たことはあったのですか?
日本に来たことはなかったよ。もちろん日本語もわからないし、日本人の知り合いもいなかった。初めのころは泊まる場所もなかった。カフェで寝たこともあったよ。
その頃、アメリカでは多くのデザイナーが日本のブランドとコラボしていた。僕もさらに日本の文化に強く惹かれていったんだ。
日本に行った後は、もはや戻るという選択肢がなかった。保険金があるといっても微々たるもので、40万円くらいかな。すぐにどこかに消えてしまう金額だよね。
日本で成功する以外、自分の道はなかったんだ。だから最初は何でもやったよ。ポートフォリオをもって営業をして、ステッカーのデザイン、洋服のタグ、そしてアーティストのグッズ…。とにかく何でもやったんだ。
僕は片道切符で日本に降り立ったとき、「もう成功するまでアメリカには戻らない」って思った。あえて自分を追い込んだことで、成功することができたんだと思う。
もちろん、運もよかったと思うけどね。
「社会問題を覆い隠す」ように感じる日本
ものすごい決心で日本にきたのですね。まさに、JAPANESE DREAMをつかんだといえるドックさん。
最後にもうひとつ質問です。私たちチャリツモは“クリエイターが社会問題を伝える”メディアなのですが、DOCさんは日本の社会問題についてどう思いますか?
アメリカに比べると、それほどひどくないと思うよ。アメリカではマイノリティというだけで、その人権さえも揺るがされてしまうこともある。最悪の場合、差別感情が殺人につながったりね。
日本では、同性愛者だから、ハーフ・外国人だからって、発砲されたり殺されたりはしないだろう?
その点は比較的、さまざまな人が受け入れられていると言えるんじゃないかな。
でも日本には、社会問題を覆い隠すというか、社会的に見えないようにする傾向があると思うんだ。
在日外国人として感じるのは、日本にいる「外国人」は、何をするにしても『ガラスの天井』があるということ。
どんなに日本語が上手に話せても、成功の限界があるような気がする。
でも、自分の場合はクリエイティブ業界で生きているから、他の業界よりは「ガラスの天井」を割りやすいのかもしれない。
日本では「殺される!」っていうほど強烈な嫌悪感や目に見える分断があるわけじゃないけど、かと言って『平等』と言える状況ではないと思うな。
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