ニワトリの全世界、タブレットPC1枚分

日本人は、ひとりあたり年間333個もの卵を食べるのだそうです。卵の消費量はなんと世界第2位!卵が大好きな国なのです。(2017年時点)
これだけ卵が好きなのですから、さぞかしニワトリにも優しくしているのだろうと思いきや、どうやらそうではないようです。
日本国内で飼育されている採卵鶏(卵を産むために育てられるニワトリ)の数は、人口よりも多い1億7千羽以上と言われていますが、そのうちの98%ものニワトリが「バタリーケージ飼育」で育てられていると言われているのです。
「バタリーケージ」とは、ワイヤーでできた小さなケージのこと。小さなケージの中に生きたニワトリを詰め込んで育てているのです。
多くの養鶏場では、ニワトリが入ったケージが何段にも積み重ねられ、狭い面積でたくさんのニワトリを育てられるように“工夫”されています。
1羽のニワトリに与えられるスペースはおよそ22cm✕22cm。タブレットPC1枚分ほどしかありませんが、この中でニワトリは一生を過ごすのです。(卵を産まないオスの命は、生まれた瞬間に消えていきます)
ニワトリは、ふ化してから150日ほどで産卵するようになり、1年間で300個ほどの卵を産みます。そして、1年経つころには卵を産むペースはゆっくりになっていきます。
そして、ケージの中で卵を生み続けたニワトリは、1年半ほどで新しいニワトリと“交替”させられます。卵をあまりうまなくなった採卵鶏は、と畜・解体され、捨てられてしまうか、ミンチにされてハンバーグなどの加工品になるのです。
近年、EU、アメリカの一部の州、オセアニアの国など、バタリーケージ飼育の廃止を宣言する国が増えています。多くの国でバタリーケージが禁止され、「ケージフリー」と言われる平飼いや放し飼いで育てる方法に移行しているのです。
動物の健康や幸せを大切にする「アニマルウェルフェア」という考え方が浸透している国の人々から、日本は家畜の飼育方法が残酷だとしばしば批判されています。
2018年には、東京オリンピック・パラリンピックに出場する海外選手から、「大会で使用される卵をケージフリーにしてほしい」という嘆願書がだされたこともありました。
多くの外国人が日本を訪れるであろう2020年。この年を境に、日本の卵のエグ(egg)い事情も改善されていくのでしょうか
過去の数字は?

この問題に取り組んでいる団体
畜産動物の福祉の改善や動物実験、毛皮の使用、また動物の殺処分の問題などに対し、啓発やロビー活動をしている。
アメリカのNGO「ザ・ヒューメイン・リーグ」の日本支部。動物愛護の観点から、食用に使われる動物の権利をグローバル企業に対して訴えている。
アメリカ本国のザ・ヒューメイン・リーグによって設立された。世界での採卵鶏のケージ飼育の根絶に向けて動物保護団体が協力するための世界的連合。(英語のみ)