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2018.09.14.Fri

わたし、虐待サバイバーです!第7話〜妹の物語・心理的虐待の重さは外から見えづらい 〜

虐待サバイバー
こんにちは!たぬき先生です。このコラムは、子ども時代に児童虐待を受けていた私の経験を踏まえ、児童虐待をへらすためにはどうすればよいのかを一緒に考えていく読み物です。第4話までで、私の半生を綴って来ましたが、第5話からは、被虐待経験やその後大人になってから現れた後遺症・トラウマの体験を踏まえ、私なりに社会に提言をしています。

共依存や支配などの心理的虐待の重さは外から見えづらい

2018年8月に厚生労働省が公表したデータによると、2017年度中に全国の児童相談所が対応した児童虐待の中でも最も多かったのは、夫婦間の暴力を子どもが目撃してストレスを受けるなどの「心理的虐待」だったのだそうです。

私は、身体的虐待も心理的虐待も受けた当事者ですが、心理的虐待が、身体的虐待より軽いかと言えば、決してそうとも言えないと思っています。

この物語の第2話で出てくる下のイラストのとおり、身体的虐待は誰にでも虐待だと分かりやすく、酷い!!と理解してもらいやすいものです。

私は幼少期こそ親の言いなりでしたが、生まれ持っての性格からか、嫌なことは嫌だと言えるし、自分がこうしたいという希望もハッキリと親に言える自己主張の強いタイプでした。そのため、親にとって思い通りにならない私は、時に酷い身体的虐待を受けることとなるのです。

しかし、私のように自己主張ができない、性格がおとなしいタイプの子どもたちは、身体的虐待より、共依存や支配などの心理的虐待を受けやすいかもしれません。

自分の意思を何ひとつ受け入れてもらえず、嫌なことも嫌だ!と言えない子どもは、長期にわたって支配されていく怖さがあります。

そして、周囲に虐待である、と理解してもらいにくいのが、共依存や支配などの心理的虐待です。一見、仲のよい親子関係に見えても、親が完全に子に依存していたり、子どもに支配的だったりするような、親のパワーバランスがあまりに強すぎる関係性の場合、周囲から理解や発見がしづらい虐待として、実は、とても深刻なものなのです。私自身、身体的虐待より、支配関係を背景とした言葉の暴力などの心理的虐待の後遺症の方が大人になって、色濃く残っていたりします。

成人後に精神のバランスを崩して親子関係の悩みを吐露しても「大事に育ててもらった親の悪口を言うなんて」と無理解な批判に遭うことも多く、カウンセリングなどの適切な支援につながらない場合も多いのではないかと思います。

虐待問題は根が深く、身体的虐待や虐待死が起きれば社会的にも注目を集めます。しかしその陰で「心を殺されている」見えない虐待も多数存在していることも知ってもらいたいのです。

妹の物語

私には8歳年下の妹がいることはすでにこの物語でお話させてもらいました。虐待した母は私には暴言や暴力を振るいましたが、妹には、ネグレクトしていた時期はあっても、とても優しい母でした。しかしそれは優しさや愛情ばかりとは言えないものでした。母は、妹を自分の思い通りにできる依存先とし、長期にわたり共依存の関係に陥っていたのです。母と妹は、強固な支配関係になってました。

理由は、妹のおとなしい性格でした。私と違って妹は嫌なことを嫌と言えない、自分がしたいことをしたいと主張できないような、とてもおとなしい子どもだったのです。

妹も思春期以降、不登校になったり精神を酷く病んでしまいました。働きながら定時制高校を5年以上かけて卒業した後は、精神的にも安定し、きちんと正社員で就職、社会人として頑張っています。

今は自分の人生を歩むことができている彼女ですが、心理的虐待を長期にわたり受けた後遺症は軽いものでは決してなく、自分の人生をつかむまでの道のりはとても険しいものでした。

もしも、一つだけ願いが叶うなら…

この物語の第2話で語ったように、中学生時代に親に振り回され混乱状態だった私は、まだ幼い妹にそのストレスを当り散らすこともありました。このため、妹にとって姉の私は恐ろしい存在だったといいます。

子ども時代の私は、自分の苦しみで頭がいっぱいで妹を可愛がる精神的な余裕がありませんでした。おまけに当時の義父が、実子である妹と養女である私に差別的な扱いをしていたことから、私は妹に対しての愛情が持てなかったのです。子ども時代に妹を可愛がったり、姉妹で楽しく遊んだ思い出は一切ありません。

成人してから、私の心も落ち着き、妹への愛情が湧いてくるようになりました。しかし、子ども時代に辛く当たられていた妹は、姉である私になかなか心を開こうとはしてくれませんでした。妹に姉として愛情があることを示しても、なかなか信用してくれず、「お姉ちゃん!」と妹が慕ってくれるようになるまで、成人してから10年もの歳月がかかりました。それほど、妹の心に深い傷を負わせていたのです。

今、妹の小さい頃の写真を見ると、可愛くて可愛くて涙が溢れ出ます。もしも、一つだけ願いが叶うなら、小さい頃の妹に会いたい!会ってたくさん遊んであげて、可愛がって喜ばせてあげたいのです。それが、私の絶対に叶うことのない願いです。

第7話のポイント

2017年の児童虐待で、最も多いのが「心理的虐待」だと言われています。身体的虐待に比べ、心理的虐待は周囲から虐待だと気づかれにくいものですが、だからといって身体的虐待より軽いものであるとは言えません。

私の妹はとても大人しい性格ゆえに、私が受けた身体的虐待はなかったものの、共依存支配といった心理的虐待を長期にわたり受けたことで、とても苦しい思春期や成人期を乗り越えなければなりませんでした。

心理的虐待は身体的虐待と等しく深刻な影響を及ぼすという理解が必要です。

続きは次回「虐待は、増加しているのか?」で!

虐待サバイバーのたぬき先生が講演会でお話します

たぬき先生が、講演会でお話します!

『わたし、虐待サバイバーです!』を連載中のたぬき先生こと羽馬です。 連載、いつも読んで頂きたくさんの応援コメント、ありがとうございます!

さて、物語の最終話では、精神科で〈二次被害〉に遭ってきた体験を語ります。精神科での〈二次被害〉は実はかなり深刻なのですが、当事者が真実を訴えてこなかった歴史があります。 精神科での〈二次被害〉がなぜ起こるのか?どうしたらなくなるのか?を〈赤ずきんとオオカミ トラウマ・ケア〉の著書である白川精神科医と対談を交えながら講演会を実施することとなりました。

講演会、ぜひご参加ください。皆様にお会いできるのを楽しみにしてます

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ライター:
羽馬 千恵
北海道札幌市在住のフリーライター。虐待被害者の大人として「大人の未来(全国虐待被害当事者の会)」の代表を務める。興味分野は、「虐待サバイバー」「貧困」「奨学金自己破産」「生活保護」。専門は、野生動物や自然で、タヌキの研究が長く、自身もたぬき化していった通称「たぬき先生」。 http://haba-chie-564.com/index.html お仕事のご相談